賃貸住宅で独り暮らしの50代。持ち家でないと「年金15万円」では生活は成り立たない?
配信日: 2025.02.27

特に「賃貸で独り暮らしをしているけれど、年金だけで生活できるのか」といったように、住まいに関わるお金は悩みの種となりがちです。人生100年時代といわれ、退職後の期間は、現役時代よりも長くなる可能性もあります。
しかし、先のことは分かりませんが、予測することは可能です。不安を安心に変えるため、具体的な数字でライフプランを考えてみましょう。

執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)
CFP®認定者・相続診断士
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/
退職後のライフプランを考える
漠然とした不安を感じる要因は、「退職後の生活についてイメージできないこと」だと考えられます。ただ、退職が視野に入る年代であれば、家族構成や働き方に変化が生じる可能性は、20代・30代・40代と比較すると低くなるため、ある程度の予測は立てられるのではないでしょうか。
まず、給与収入に代わる年金について具体的な金額を把握しているでしょうか。毎年誕生月に郵送される「ねんきん定期便」に記載される年金額はおおむね信用できる金額です。また、「ねんきんネット」は、日本年金機構のホームページもしくはマイナポータルから利用登録することで、いつでも自分の年金額を確認することができます。
お勤め先に退職金制度がある場合には、金額や受け取り方について確認するようにしましょう。多くの場合、60代・70代のアクティブシニアといわれる世代では、趣味やおつきあいなど何かと支出も多く、公的年金だけでは足りないのが現状のようです。
すでに十分な資産がある場合は別として、「継続雇用」「再就職」等により収入を得ることも選択肢です。いずれにしても、退職金は、退職後の生活の資金源となります。受け取れる金額を知ったうえで、計画的に有意義に「使う」計画を立てたいものです。
そのうえで、現在の生活費を維持するのか、若干縮小するのか考えましょう。おそらく、ネット情報や統計データの平均値の金額よりも、自分自身の現在の生活費をもとに予算を検討したほうが現実的で妥当な金額となるかと思われます。
その際、生活費として「使う」お金、病気や介護、また慶弔や突発的な家電の買い替えなど緊急予備資金として「備える」お金、家族や次世代に「残す(遺す)」お金などに分類することがおすすめです。目的や数字を「見える化」することで、今後の生活についての漠然とした不安が少しずつ解消されてくるはずです。
「持ち家」と「賃貸」では支出額に差があり、賃貸では生活が成り立たない?
なかには、「見える化」したことで、課題が浮き彫りになるケースもあります。
これまで賃貸で暮らしてきた方が、退職後も家賃を払い続けることに対して、その累計額に驚いたという話も聞きますし、また年金収入のなかから賃料を払うと赤字になるという話も聞きます。
例えば、家賃10万円とすると年間120万円、60歳から100歳まで40年間支払うとすると4800万円にもなります。収入が年金15万円とした場合、10万円の家賃を払うと残り5万円で食費や日用品、光熱費や通信費を捻出する必要があります。「これでは豊かな老後生活は見込めない」「そもそも生活が成り立たない」と落胆する方も見られます。
退職後の生活は、長期的目線で全体像を把握することがポイントといえるでしょう。年金収入だけで見れば家計収入はマイナス(赤字)かもしれません。だからこそ、前述の退職金やこれまで積み上げてきた資産をふまえて考えてみてください。
そのうえで、住むエリアや間取り、築年数などをふまえて物件購入や別の賃貸住宅への転居も選択肢となります。
退職金を原資に自宅購入の選択肢
現役時代は、転勤の可能性や通勤時間を考え、身軽でいられるよう住宅購入を控えていたという人も少なくないでしょう。
しかし、「退職後は好きなエリアでのんびり過ごしたい」「趣味の時間を楽しみたい」「いつまで生きるかわからないこそ、初期投資で、その後のお金の心配はしたくない」という方には、退職金を原資として物件購入をするという選択肢も有効です。
見守りや高齢者施設も視野に賃貸継続の選択肢
2024年6月より住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)が改正され、高齢であることを理由に入居を断らない市場環境の整備が進められています。
また、同法では、居住サポート住宅の認定制度が創設され、安否確認や見守り、適切な福祉サービスへのつなぎを行うサービスなど、独り暮らしでも安心の環境が構築されつつあります。
身体的状況をふまえつつ、そのときどきの適切な住まいを選べるのは、賃貸住まいのメリットかもしれません。
まとめ
支出のなかでも、「住まい」に関わる費用は大きな割合を占めます。「賃貸派」か「持ち家派」かといった議論は、現役時代に意見の分かれるところですが、高齢期になると、住宅ローンを完済した持ち家派が、一見有利なように感じます。
とはいえ、いずれの世代でも、正解はなく、それぞれの生活スタイルや価値観で選ぶことが大切です。現役時代は賃貸派であった人が、定年を機に持ち家派となるケースも増えています。
移住や地元に戻るといった選択肢もあり、助成や優遇のある自治体もあるようです。また、賃貸暮らしをするにしても、生活環境や経済的事情にあわせて臨機応変に住み替えるのも選択肢です。
「生活が成り立たないのでは……」と漠然とした不安に思い悩むよりも、具体的な数字で予測を立て、どうしたら成り立たせることができるのか、どのような選択肢があるのか探るといった行動が、より充実した日々を送ることへの一歩となるでしょう。
出典
国土交通省 住宅セーフティネット制度
執筆者:大竹麻佐子
CFP®認定者・相続診断士