「親が要介護になった…」いくらかかる?知らないと困る介護のお金事情

配信日: 2025.03.01

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「親が要介護になった…」いくらかかる?知らないと困る介護のお金事情
筆者のもとには、「相続」のことが気になり「相続のことで(お金の)相談にのってほしい」という問い合わせが多いです。一方で、「介護」のことが気になり「介護のことで(お金の)相談にのってほしい」という問い合わせは意外と少ないという印象を受けます。
 
しかし、相続の前には必ずといっていいほど「介護」が存在します。介護が必要になってからお金のことを考えると、間に合わないこともあります。今回は「介護」にまつわるお金についてお伝えします。
秋口千佳

執筆者:秋口千佳(あきぐちちか)

CFP@・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員2種・相続診断士

親が介護になった

アラフィフ世代が集まると、よくでる話題が「親が介護になった」ということです。「介護になった」とは、どういう状態でしょうか。
 
こういったときの「介護になった」という意味は、多くが「要介護度の認定を受けた」という意味です。要介護度とは、介護保険制度を利用するためにどの程度の状態であるかを指標で表したものです。
 
その指標は以下の通りで、順番に介護の必要性が高くなっています。
 

●要支援1
●要支援2
●要介護1
●要介護2
●要介護3
●要介護4
●要介護5

 
要支援状態とは、身体上もしくは精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部もしくは一部について、継続して常時介護を要する状態の軽減もしくは悪化の防止に支援を要すると見込まれ、または身体上もしくは精神上の障害があるために継続して日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態で、その程度により2段階の区分が設けられています。
 
一方、要介護状態とは、身体上または精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部または一部について、継続して常時介護を要すると見込まれる状態で、その程度により5段階の区分が設けられています(※1)。
 
介護保険制度は、この要介護度の認定を受けないと、受けられない制度となっています。受けたい人は、まずはお住まいの地域包括支援センターに問い合わせる必要があります。
 

介護保険制度によるサービスを使ったらお金はいらないのか?

筆者のもとに相談に来る人のなかには、介護保険制度によるサービスを利用すれば介護にお金はかからない、と思っている人がいます。しかし、介護保険制度によるサービスを利用するために要介護度の認定を受けたとしても、お金は必要です。
 
介護保険制度は、サービスにかかる費用のすべてではなく、費用の一部を負担してくれるもので、残りについては利用者負担が発生します。サービスを受けた場合の利用者負担は、かかった費用の1割(一定の所得以上の人は2割または3割)です。ただし所得の低い人は一定の軽減措置もあります。
 
またこの介護サービスは、いくらでも受けられるわけではありません。要介護度によりどのようなサービスを受けるかによって、1ヶ月の限度額が決まります。詳しい金額などは、厚生労働省のホームページを確認してみてください(※2)。
 

介護のことを考えていくら準備すればよいのか?

相談者の多くは、「老後の生活(お金)が不安です」といいます。そのため、「介護のためにいくらお金を準備すればよいですか」と質問されるのですが、答えは分かりません。
 
なぜなら、どういった介護を受けるのか、どういった介護を必要とするのか、そのときにならないと誰にも分からないからです。この質問は、「私はいつ亡くなりますか」という質問と同じようなものでしょう。
 
もちろん、参考となる金額をお伝えすることはできます。
 
しかし、このように「参考」といっているにも関わらず、資産がその金額に到達している人は「では、私は大丈夫です」というのですが、ここで安心してはいけません。「介護費用がいくらかかるのか」の正解はなく、場合によっては相場より多くの介護費用がかかる可能性もあるということを忘れないでほしいです。
 
では、「参考額」はいくらぐらいなのかというと、ここでも「あくまで参考」ということをお伝えしたうえで、以下で紹介します。
 
公益財団法人生命保険文化センターが行った調査によると、2021年度において、過去3年間に介護経験がある人に、どのくらい介護費用がかかったのかを聞いたところ、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、住宅改造や介護用ベッドの購入費など一時的な費用の合計は平均74万円、月々の費用が平均8万3000円となっています。
 
なお、介護を行った場所別に介護費用(月額)を見ると、在宅では平均4万8000円、施設では平均12万2000円となっています(※3)。
 

相続の前に介護はやってくる

最終的に、人は亡くなります。そのため、「相続」も形式はさまざま(親→子、子→親、兄弟姉妹間、祖父母→孫、人→寄付など)ですが、必ず起こります。
 
では、「介護」はどうでしょうか。こちらも多かれ少なかれ、必ず起こるといってよいでしょう。そして、相続よりも前に必ず起こります。老後のことを考えるのであれば、相続のことを意識する前に介護のこともしっかり考えて、お金の準備を進めましょう。
 

出典

(※1)厚生労働省 要介護認定に係る法令
(※2)厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 介護保険の解説 サービスに係る利用料
(※3)公益財団法人生命保険文化センター 介護にはどれぐらいの費用・期間がかかる?
 
執筆者:秋口千佳
CFP@・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員2種・相続診断士

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