75歳の両親が、「貯金800万円」を全額使い自宅をリフォーム!「シルバー人材センターで働く」とのことですが、本当に大丈夫でしょうか? 年金「月20万円」のケースで試算

配信日: 2025.03.07

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75歳の両親が、「貯金800万円」を全額使い自宅をリフォーム!「シルバー人材センターで働く」とのことですが、本当に大丈夫でしょうか? 年金「月20万円」のケースで試算
老後に、自宅をリフォームしてバリアフリー化などを検討する人は多いのではないでしょうか。ただ、収入が限られることの多い老後、多額の費用がかかるリフォームは慎重に考える必要があります。
 
本記事では、貯蓄全額を使ってリフォームしようと検討している、年金月20万円の75歳以上の世帯が、シルバー人材センターで働きながら生活費を賄う際のリスクなどを解説します。さらにリフォームして自宅に住み続ける以外の、老後の住宅の選択肢なども紹介します。

75歳でシルバー人材センターでの就労は可能か

まず、シルバー人材センターで、75歳で就労することは可能なのでしょうか。
 
シルバー人材センターは、高齢者の社会参加による生きがいある生活の実現などを目的に、手軽な仕事を紹介する公益団体で、原則60歳以上なら誰でも利用できます。
 
月10日ほど働き、3万円から5万円の収入を得るのが平均的な就労形態で、健康維持なども兼ねて、無理なく働き収入を得たい人にはピッタリです。
 
また、公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会の令和4年度の統計によると、会員の平均年齢は74.4歳、75歳以上の会員構成比は約45%以上におよぶことから、75歳を過ぎてもシルバー人材センターで収入を得ることは十分可能でしょう。
 

年金が月20万円の世帯がシルバー人材センターで働くと

それでは、75歳の世帯がリフォームで貯蓄を使い果たしたあと、シルバー人材センターで収入を得ながら年金月20万円で生活できるのか試算してみましょう。もし、ご夫婦の1人だけでも就労し、平均的な報酬3~5万円を得ることができれば、世帯の収入は年金と合わせて23~25万円に増えます。
 
次に、必要な生活費を図表1の総務省統計局の家計調査報告の「2人以上の世帯のうち65歳以上の無職世帯の家計収支」で確かめてみましょう。この調査によれば、75歳以上世帯の平均的な消費支出は23万4521円で、非消費支出2万9846円を加えると26万4367円です。
 
図表1

図表1

総務省統計局 家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要
 
収入はやや不足しますが、支出との差は小さいため、場合によっては生活費を賄うことも可能でしょう。ただし、シルバー人材センターでの就労日数や報酬はあくまでも平均的なもので、保証されたものではありません。
 
また、日本人の健康寿命は2022年の推計で男性が72.57歳、女性は75.45歳であり、今は元気でも、今後どれくらい働けるのかという点に留意する必要があります。
 
一生涯働けるわけではなく、加齢とともに就労が制限されるリスクは少なくとも認識しなければなりません。そのため、シルバー人材センターなどでの就労による収入を生活費として当てにし続けるのはやはり不安です。
 

貯金を全てリフォームに使ってもいいのか

シルバー人材センターで就業しても、収入が高く安定しているわけではなく、健康寿命を考えるといつまで働けるのかも分かりません。そのため、800万円の貯蓄を全て使ってリフォームするかどうかは、慎重に検討したいものです。
 
貯蓄がないと何か急な出費があっても対応できず、気持ちの余裕も持てないでしょう。いざとなれば持ち家を売却することはできますが、売却には一定の期間が必要なことが多く、住み替えが簡単に進まないケースもあります。そのため、リフォームするにしても内容を見直し、800万円のうち何割かを貯蓄として残すなどの対策が必要かもしれません。
 

リフォーム以外の選択肢は

老後の住宅としては、リフォーム以外の選択肢も考えられます。例えば、家を売却して住み替える方法もあるでしょう。特に家が広すぎるようであれば、小さめのマンションを購入したり、賃貸に住んでみたりするのも1つの考え方です。
 
また、今後の衰えを意識して、住宅型の有料老人ホームや介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)など、シニア向けの住宅に入居するのも有力な選択肢になります。
 
初期費用やランニングコストはシニア住宅の種類によって大きく異なり、どの施設がいいのかは、その人の意向や健康状態、経済状況によります。しかし、持ち家のリフォームや売却と併せ、どの方法が自分たちに向いているのか検討するほうが望ましいでしょう。
 

まとめ

年金が月20万円の夫婦であれば、貯蓄が少なくても、シルバー人材センターなどでプラスアルファの収入を得て、平均的な老後生活を送ることは可能です。ただ、老後はいつまで就労による収入を得られるか分かりません。
 
リフォームなどで貯蓄を使い果たすと、その後の経済的リスクが大きくなってしまいます。また、リフォームして住み続ける以外にも、老後の住まいにはさまざまな選択肢があり、幅広く検討するほうが望ましいでしょう。
 
ただ、老後も就労を通して社会参加することは、健康維持にもつながり、生きがいを得て、より充実した人生を過ごせるかもしれません。両親の意向や就労意欲なども尊重しながら、リフォームの実施について話し合ってみてはいかがでしょうか。
 

出典

公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会
総務省統計局 家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要
 
執筆者:松尾知真
FP2級

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