70代の父は「車がないと不便」という理由で免許返納を考えていません。自主返納したら特典があるなどのメリットはないのでしょうか?
配信日: 2025.04.07

しかし今回のケースのように、免許返納することで生活の足がなくなってしまう場合、親が返納することに二の足を踏むケースもあるでしょう。
本記事では、自主返納することのメリット・デメリットを踏まえつつ、返納を検討するために役立つ情報をご紹介します。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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自主返納をめぐる状況
運転免許を自発的に取り消している人は少なくありません。警察庁の運転免許統計(令和5年版)によると、申請による運転免許取消件数は表1の通りです。
表1
年別 | 申請取消件数の総数 | 70歳以上の取消件数 | 70歳以上の取消件数が 占める割合 |
---|---|---|---|
令和3年 | 51万7040件 | 44万3815件 | 85.8% |
令和4年 | 44万8476件 | 39万4576件 | 88.0% |
令和5年 | 38万2957件 | 34万5621件 | 90.3% |
※出典:警察庁「運転免許統計」を基に筆者作成
令和3~5年のデータを見ると、免許の自主返納者の大多数が70歳以上のドライバーでした。令和5年では10人中9人が70歳以上です。
なお同データによると、80歳以上の自主返納者が占める割合は、令和5年において44.6%でした。自主返納したドライバーのうち半数近くの人は、70代では免許を手放さなかったことになります。
自主返納した場合に利用できる特典
今回のケースのように、免許の自主返納をためらう人が一定数いる理由として、以下のようなことが考えられます。
・車がないと買い物や通院がしにくくなり不便になる
・車の運転自体を楽しみたい
・車を必要とする家族や知り合いがいる
・運転免許証を身分証明書として使えなくなる
このような当事者の不安をふまえ、自治体やさまざまな事業者による自主返納者への支援が行われています。
運転経歴証明書が交付される
自主返納後に申請すると、過去5年間の運転経歴を証明する「運転経歴証明書」を交付してもらえます。この証明書は本人確認書類として使えるもので、更新の必要もありません。
自主返納後5年以内に申請する必要があります。申請方法は各都道府県警察の運転免許センターに問い合わせましょう。
申請費用は1100円です。必要書類は自主返納と同時であれば「運転免許証のみ」で、返納後5年以内は「身分証明書」と「写真」「申請による運転免許証取消通知書」です。
なお免許が失効していても、失効後5年以内であれば交付申請が可能です。免許返納により身分証明書がなくなることを気にしているのであれば、運転経歴証明書が代わりになるかもしれません。
さまざまな特典が受けられる
自主返納者に対しては、各自治体や事業者などによる支援の取り組みが行われており、さまざまな特典を受けられます。
一例として群馬県では、2025年2月現在、33市町村が支援の取り組みをしています。具体的には以下のような支援があります。
・一部の市町村:運転経歴証明書交付手数料(1100円)の助成
・前橋市:タクシー運賃補助(運賃の半額を最大1000円まで補助)
・高崎市:ぐるりん(市内循環バス)回数券6000円分の交付など
・館林市:免許返納タクシー券(1万2000円分)の交付
・草津町:町内で使用できる商品券と町内巡回バス回数券を合算して1万1000円まで交付
このような支援の取り組みは全国各地でおこなわれています。タクシーや巡回バスなど交通機関の利用料金を助成してもらえるなら、日常の足として利用しやすいかもしれません。
自主返納に関する注意点
自主返納はだれでもできるわけではありません。警察庁によると「運転免許の停止・取消しの行政処分中の方や、停止・取消処分の基準等に該当する方等」は、自主返納ができません。自主返納を望む場合、行政処分などの対象になっていないか確認しておくとよいでしょう。
自主返納者は自治体・事業者からの特典を受けられる
運転免許の自主返納者は自治体や事業者からさまざまな特典を受けられます。本人確認書類や交通機関に関する支援も行われています。
免許を手放すことでさまざまな不便が生まれるかもしれないと不安な方は、事故のリスクや住んでいる地域での支援を考慮して、返納すべきかどうか判断するとよいかもしれません。
出典
警察庁 運転免許統計 令和5年版 18ページ
警察庁 運転免許証の自主返納について
埼玉県警察 運転経歴証明書の交付申請手続
群馬県 高齢者の運転免許証自主返納サポート
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー