更新日: 2019.06.21 介護
介護離職を選択する前に知っておきたいこと
その時、介護について何の準備もしていなければ、避けられたはずの介護離職を選択してしまうかもしれません。仕事と介護の両立を図るには、早目の情報収集とお金の準備、そして職場の協力が必要です。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
介護離職すると「経済的」「肉体的」「精神的」負担が増す。
介護をしながら仕事をしている社員に対する支援体制が十分でない会社では、その社員は職場の上司や同僚にも相談できず、肉体的にも精神的にも疲弊してしまいます。仕事と介護の両立には職場の協力が欠かせません。
介護離職をすれば、経済的には厳しくなるかもしれないことはわかっていても、このストレスから解放されたくて介護離職を選択する方もいるようです。
しかし、この選択は正しいでしょうか。三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が行った「介護と仕事の両立に関する労働者アンケート調査」(平成24年度厚生労働省委託調査)で、介護離職による「精神面」「肉体面」「経済面」の負担について質問したところ、「非常に負担が増した」「負担が増した」の割合は、「精神面」64.9%、「肉体面」56.6%、「経済面」74.9%となっています。
介護離職すると社会から孤立しがちですし、介護がいつ終わるか予測できず将来の生活の不安も高まることから精神的負担は増すでしょうし、長期化する介護に備えて、公的介護保険サービスの利用を控え自分で介護をやろうとすると、肉体的に負担が増します。
また、素人が介護することで、要介護者の介護度も進み、却って、介護費用がかかるといった面もあります。
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介護はいつか終わる。その後の人生は?
介護者の人生設計を考えた時に、介護離職がどのような意味を持つか、考えてみましょう。
生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」によると、介護を始めてからの期間(介護中の場合は経過期間)をみると、平均54.5ヵ月(4年7ヵ月)となっています。10年以上も14.5%あります。
しかし、介護が終わる日は必ず来ます。
40代、50代の働き盛りの方が介護離職した場合、介護が終わった後の再就職は厳しいのが現実です。再就職できたとしても正社員として就職できる人は半数にも満たないという調査結果もあります。収入が激減します。また、4人に1人は無職状態です。
親の資産もなく、再就職もできなければ、経済的に非常に厳しい状況になります。介護離職した人の人生設計そのものが大きく狂ってしまいます。したがって、介護離職を選択する前に、介護が終わった後の生活を思い描くこと、特に、お金の面のシミュレーションをしておくことが大切です。
早目の情報収集とお金の準備が大切
介護は突然起こります。厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」によると、介護が必要となった原因は、第1位:認知症(18.0%)、第2位:脳血管疾患(16.6%)、第3位:高齢による衰弱(13.3%)、第4位:骨折・転倒(12.1%)、第5位:関節疾患(10.2%)となっています。
脳血管疾患や骨折・転倒で介護が始まるのは突然、介護が起こるケースです。事前に相談窓口(地域包括支援センターなど)、公的介護保険の利用方法、どのような介護サービスを受けることができるのか、職場の介護支援制度などについて知っておけば、いざ介護に直面した時に慌てずに済みます。
これら介護の支援制度を活用できれば、介護離職をせずに仕事と介護の両立を続けることが可能です。
親が年金生活であれば、年金などの収入、資産状況なども聞いておくことが必要です。もし、親の収入や資産が少ない場合、子どもが保険料を払い、親に民間の介護保険に加入してもらうことで介護費用を準備するという方法もあります。
いざ、介護が始まった時には、良いケアマネジャーを見つけるということも重要です。実際、良いケアマネジャーに巡り会うのは難しいかもしれませんが、仕事と介護の両立を継続するにはケアマネジャーの存在は大きいです。
介護は長期戦です。介護と仕事の両立といった場合、自分の時間を持つことも大切だと思います。介護の部分はなるべくプロに任せ、訪問介護やデイサービス、ショートステイなどを有効に活用し自分の時間を持つようにしましょう。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。