実際「年金」だけでは生活できない?「老後2000万円問題」の真相を解説
本記事では老後2000万円問題の概要および算出の根拠や、年金のみで老後の生活費が賄えるかどうかの試算について解説します。
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「老後2000万円問題」とは?
「老後2000万円問題」とは、金融庁金融審議会の市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」にて提起された問題です。
この報告書では「夫65歳以上妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、20~30年の人生がある場合、不足額の総額は単純計算で1300万円~2000万円になる」との見解が示されました。この金額を基に、老後の貯蓄額の目安として広まった言説が「老後2000万円問題」です。
2024年における夫婦高齢者無職世帯の消費支出は「月平均25万6521円」
「老後○○円問題」の金額部分は総務省統計局の家計調査の結果とともに年々変化しており、例えば2019年の「家計調査年報(家計収支編)2019年(令和元年)結果の概要」では、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の家計収支は3万3269円の赤字とされていましたが、翌2020年には65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支は1111円の黒字に転じています。
そのため、より実情に近い予測を立てるには、より新しいデータを参照する必要があるでしょう。
総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支において、可処分所得22万2462円に対し消費支出は25万6521円で、毎月3万4058円不足する計算となります。
このことから、直近の調査結果で「老後2000万円問題」を見直す場合、2024年時点では「老後1200万円問題」になるといえそうです。
令和7年度のモデル世帯の標準的な年金受給額は「月額23万2784円」
上記は可処分所得の平均に対してどれだけ不足しそうかという試算結果ですので、今度は標準的な年金受給額に対して不足が発生するかどうかを見てみましょう。
日本年金機構によれば、モデル世帯における夫婦2人分の老齢基礎年金を含む厚生年金の金額は「月額23万2784円」です。なお、ここでの厚生年金の算出基準は「平均的な収入(平均標準報酬45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金」となっています。
老齢基礎年金を含む厚生年金の月額23万2784円を先ほどの1ヶ月の消費支出25万6521円と照らし合わせると、年金だけでは月額にして約2万円、老後20~30年に置き換えると480万円~720万円程度不足する計算となります。
さらにここに社会保険料や税金などの非消費支出も加わるため、よほど出費を切り詰めない限り、夫婦2人の年金だけで生活するのは難しいと言わざるを得ないでしょう。
まとめ
「老後2000万円問題」が過大な見積もりかどうかは意見の分かれるところですが、老齢基礎年金と厚生年金の2階建てでもなお、老後の生活において貯金が目減りしていく可能性は高いようです。
モデルケースを参考にするだけでなく、最も身近なデータである現在の生活水準と支出額を基準に、将来のライフスタイルに合わせた資金計画を立てるのがよいかもしれません。
出典
金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」 2.基本的な視点及び考え方 (1)長寿化に伴い、資産寿命を延ばすことが必要(21ページ)
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2019年(令和元年)結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支 <参考4> 高齢無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯)図1 高齢夫婦無職世帯の家計収支 -2019年-(18ページ)
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支 <参考4> 65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯) 図1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支 -2020年-(18ページ)
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支 <参考4> 65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯) 図1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支 -2024年-(18ページ)
日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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