更新日: 2019.06.18 セカンドライフ

シニア企業の壁 「小さな事務所」の初期投資と運営コスト

執筆者 : 藤木俊明

シニア企業の壁 「小さな事務所」の初期投資と運営コスト
「定年後も働きたい」という人は多く、中には「自分で事業を始めたい」と独立・起業にチャレンジする方もいるでしょう。そして、「小さくていいから自分の事務所を持ちたい」と。
 
以前は「一国一城の主」と呼んだように、起業したら自分の事務所を持つことが当たり前でありステイタスでした。しかし事務所を持つには、たとえどんなに小さな所帯でも一定の初期投資と運営コストがかかり、売上が安定しない起業初期には、そのコスト負担に苦しむことが常となります。
 
そこで今回は、「小さな事務所」の初期投資と運営コストについて考えてみます。
 
藤木俊明

執筆者:藤木俊明(ふじき としあき)

副業評論家

明治大学リバティアカデミー講師
ビジネスコンテンツ制作の有限会社ガーデンシティ・プランニングを28年間経営。その実績から明治大学リバティアカデミーでライティングの講師をつとめています。7年前から「ローリスク独立」の執筆活動をはじめ、副業・起業関連の記事を夕刊フジ、東洋経済などに寄稿しています。副業解禁時代を迎え、「収入の多角化」こそほんとうの働き方改革だと考えています。

東京都心に小さな事務所を持つためにかかる費用

たとえば、東京都心で小さな事務所を持ちたいと考えます。起業初期ですから、狭いところでいいと考え、賃貸事務所のサイトを当たってみると、千代田区などの都心であっても、古いビルやマンションタイプで、5~6畳のワンルーム程度の物件を7~10万円で借りることはできそうです。
 
しかし、事務所として機能させるためには、机や椅子、事務機器、パソコンなどの購入が必要でしょう。大まかに初期投資と月々の運営コストを計算してみます。
 

【1.東京都心の古いビルやマンションタイプに小さな事務所を持つ場合の一例】

(1)初期投資
・保証金または敷金・礼金(四ヶ月と仮定)+前家賃・仲介手数料 60万円
・パソコンなどIT機器(複合機はリースで・電話は携帯でまかなう) 30万円
・机や椅子など備品 10万円
…… (初期合計) 100万円
 
(2)運営コスト(月々)
・家賃・管理費 10万円
・通信費 3万円(携帯電話とネット接続)
・光熱費・水道費 1万円
・複合機リース代 1万円
・事務用品など 1万円
…… (月々合計) 16万円
 
かなり切りつめたつもりですが、都心に事務所を持つとなると、最低これぐらいはかかるのではないでしょうか?(実際はホームページ作成、印鑑や封筒、名刺などにも費用がかかると思います)
 
起業にどれだけ資金を準備するかは、事業のタイプにより違うでしょうし、使えるお金には個人差があると思いますが、事務所を開くのに初期投資の100万円は仕方ないとしても、毎月10数万円の費用がかかるのは、売上の不安定な時期には負担となりますよね。
 
もちろん事務所を持つメリットはあり、自分の自由に使えるスペースとしてお客さんを呼べますし、信用度が高まります。また、機密書類を扱ったり、スタッフを雇うときには自分の事務所が必要で、そのための必要コストという考え方もできます。
 
この例だと、一年間で約200万円の運営コストがかかり、初期費用とあわせて、300万円が消えていきます。その間を投資と考えて、何とか安定した売上を確保しなくてはなりません。
 

サブスクリプションで事務所を持つ費用

近ごろ注目されているのが、個室タイプのレンタルオフィスを利用する方法です。
 
さまざまなタイプがありますが、東京都心であっても月々5~7万円で利用できるようです。鍵もかかりますので、機密性には問題がありません。そういう「個室タイプ」のレンタルオフィスを利用するときのコストを試算してみます。
 
※個室でないタイプのレンタルオフィスを選べば家賃はもう少し下がります。
 

【2.東京都心の個室タイプレンタルオフィスで事務所を持つ場合の一例】

(1)初期投資
・前家賃 5万円
・パソコンなどIT機器 基本0円
・机や椅子など備品 基本0円
…… (初期合計) 5万円
 
(2)運営コスト(月々)
・家賃・管理費 6万円(法人登記や郵便取り次ぎなどの費用を1万円として)
・通信費 1万円(携帯電話のみとして・ネット接続費は0円)
・光熱費・水道費 基本0円
・複合機利用代 基本0円+使った分だけ支払う
・事務用品など 1万円
…… (月々合計) 8万円+複合機利用料
 
レンタルオフィスの場合、多くは無料または有料の会議室や応接室がついていますので、来客の場合はそれを利用することにします。そうすると、月々10万円以下となり、自力で事務所を持った場合よりローコストになりますし、なんといっても初期費用が抑えられます。
 
心配なのがスタッフを雇い入れるときですが、基本的にリモートで仕事をしてもらい、必要なときには出向いてきてもらうというスタイルを採る人が多いようです。
 
もうひとつ大切なことは、撤退するときや、うまくいって事務所を拡げるときにも、引っ越し費用や撤去のための手間があまりかからないことです。自治体等の準備するインキュベーションスペースを利用する手もありますが、審査など一定の手続きが必要となります。
 
しかしシニア起業のように、成長よりもゆるく継続していき、やめるときにはすばやく撤収したいという事業スタイルには、やはり制約の少ない民間のレンタルオフィスが向いています。
 

まとめ

今、サブスクリプションといって、月々定額の支払いでサービスを受けることが主流になっていますが、事務所も、月々の利用と考え、必要とあれば使うし、必要なくなればすぐやめられるといったサブスクリプションのレンタルオフィスが、シニア起業のようなスモールビジネス、マイクロビジネスには向いているのかもしれません。
 
執筆者:藤木俊明(ふじき としあき)
副業評論家