退職金は「年金型」で受け取るつもりが、会社が「非対応」!全額を「一括」でもらうことになりますが、「年金型」と比較してどんなメリットがありますか?
配信日: 2025.07.06

しかし、会社の制度上、一括受け取りしか選べないと「損してしまうのでは?」と不安になる方もいるでしょう。今回は、退職金を一時金で受け取る場合のメリットについて解説します。

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目次
退職金の受け取り方は主に3つ
退職金は、会社によって受け取り方が異なりますが、主に次の3つの方法に分かれます。
・退職一時金として一括で受け取る
・年金型として分割で受け取る
・一時金と年金を併用して受け取る
どの方式を選べるかは、会社の退職金制度によって決まります。場合によっては、あらかじめ決められた受け取り方しか選べないこともあります。
多くの企業が採用する「退職一時金制度」
実際にどの受け取り方が多いのか、厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」の結果を見てみましょう。この調査によると、退職金制度がある企業のうち、「退職一時金制度のみ」が最も多く、全体の69.0%を占めています。
次いで「両制度併用」が21.4%、「退職年金制度のみ」はわずか9.6%にとどまっています。つまり、約7割の企業では一時金での受け取りしか選べず、年金形式を希望しても対応していないケースが多いのが現状です。
定年退職者の平均退職給付額
では、実際にどれくらいの金額が給付されているのかも確認しておきましょう。同調査によると、定年退職者の1人あたりの平均退職給付額は、学歴や職種によって異なります。
例えば、「大学・大学院卒(管理・事務・技術職)」で1896万円、「高校卒(管理・事務・技術職)」で1682万円、「高校卒(現業職)」では1183万円という結果となりました。これは一時金と年金を合計した平均額ですが、受け取る金額の参考となります。
なお、実際の退職金額は、勤務先の制度や勤続年数、役職などによって大きく異なります。そのため、必ずしもこの通りとは限らず、あくまで一例として捉えておくとよいでしょう。
メリット1:税制面での優遇措置
多くの企業では一時金での受け取りが一般的であり、実際にまとまった退職金を手にする人も少なくありません。では、その「退職一時金」にはどのような利点があるのでしょうか。
退職一時金の大きな特徴の一つが、税制面での優遇措置です。退職金は、長年の功労に報いるという意味合いから、他の所得と同じように課税されるわけではありません。
給与や賞与が「給与所得」となるのに対し、退職一時金は「退職所得」として扱われ、他の所得とは分けて税額が計算されます。これにより、所得税率が急に高くなることを防ぎます。
さらに、「退職所得控除」が適用されるため、課税対象となる金額を大幅に減らすことができます。この控除額は勤続年数が長いほど大きくなるため、長期間勤務した人ほど税金の負担は軽くなる傾向にあるでしょう。
メリット2:社会保険料への影響がない
税制上のメリットに加えて、もう一つ見逃せないのが「社会保険料」への影響です。退職金を一時金で受け取った場合、その金額は社会保険料の算定基準となる所得には含まれません。
一方で、年金形式で受け取ると、その多くは「雑所得」として扱われます。これにより年間の合計所得金額が増え、結果として翌年度以降の社会保険料が上がる可能性があります。一時金での受け取りは、こうした将来の負担増を避けられるという利点があります。
メリット3:まとまった資金を自由に活用できる
税金や社会保険料の負担を抑えられるだけでなく、退職一時金には「使い道の自由度が高い」という魅力もあります。一括でまとまった資金を手にできるため、ライフプランに合わせた柔軟な使い方が可能でしょう。
例えば、住宅ローンの繰り上げ返済に充てて老後の住居費の負担をなくしたり、自宅のリフォーム費用にしたりすることができます。
また、新たな趣味や学び、あるいは起業などの資金として活用することも可能です。一度に大きな金額を手にすることで、計画的に資産運用を始めやすいという側面もあるでしょう。
とはいえ、「急にまとまったお金を手にすると、つい使いすぎてしまう……」というケースもあるようです。活用の計画は、できれば退職前から立てておくと安心です。
一時金受け取りのメリットを理解し、計画的な活用を
会社の制度により退職金の受け取り方が一時金に限定されている場合でも、多くのメリットが存在します。退職一時金は、「退職所得控除」や「分離課税」といった税制上の手厚い優遇措置を受けられる点が大きな特徴です。また、年金形式とは異なり、社会保険料の負担が増えないという利点も見逃せないでしょう。
まとまった資金は、住宅ローンの返済や資産運用など、ライフプランに合わせて自由に活用できます。状況に合わせて、受け取った大切な資金をどのように活かしていくか、あらかじめ計画を立てておくとよいでしょう。
出典
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査の概況
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー