70歳代の単身シニアの平均貯蓄額は「約1000万円」と聞きました。私の貯金「500万円」は少ないのでしょうか?

配信日: 2025.07.06

この記事は約 4 分で読めます。
70歳代の単身シニアの平均貯蓄額は「約1000万円」と聞きました。私の貯金「500万円」は少ないのでしょうか?
高齢期に入ると、自分の貯金額が老後の生活に足りるのか、不安に感じる方も多いでしょう。特に、「70歳代の単身シニアの平均貯蓄額は約1000万円」という情報を目にすると、「自分はもっと少ないけど大丈夫なのだろうか……」と心配になるかもしれません。
 
そこで本記事では、70代の平均貯蓄額や年金とのバランス、将来に備えた資金管理の方法などについて解説していきます。
FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

平均貯蓄額の数字をどう見るべきか

「70歳代の単身シニアの平均貯蓄額1000万円」といった情報には、注意が必要です。
 
実際には、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯](令和5年)」によると、70代の単身世帯における預貯金額の平均は約676万円です(金融資産を保有していない世帯を含む)。この金額は現金や普通預金、定期預金など、流動性の高い資産が中心となっています。
 
この平均値を見ると、貯金500万円はそれよりもやや少ないように思えますが、平均はあくまで「全体の単純な平均値」であり、一部の高額な資産を持つ人が数値を押し上げている可能性があります。実際には、多くの人が平均以下の水準で生活していることも多く、500万円の貯金額が際立って少ないとはいえません。
 
また、年金などの公的収入がある場合は、貯蓄だけに頼らずに生活を成り立たせることも十分可能です。重要なのは、自分の生活スタイルや支出に合った資金管理を行うことです。
 

年金と生活費の関係を見直してみよう

貯蓄額の妥当性を考えるには、毎月の生活費と年金受給額のバランスも重要です。
 
厚生労働省の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、70歳代の厚生年金受給者の平均年金額はおよそ月14万4773円、国民年金受給者では月5万8956円とされています。一方、総務省の「家計調査年報(家計収支編)2023年」によると、65歳以上の単身無職世帯の生活費(消費支出)は月に14万5430円が平均です。
 
厚生年金を受給している方であれば、ある程度生活費をカバーできる可能性がありますが、国民年金のみの場合は生活費に対して大きく不足することになります。この不足分を補うのが、まさに貯金の役割です。
 
仮に月3万円の不足があるとして、年間では36万円、10年で360万円です。つまり、500万円の貯金があれば10年以上、年金を補う形で生活が成り立つ可能性もあります。
 

医療費や介護費用の備えも忘れずに

老後に予想される支出として忘れてはならないのが、医療費や介護費用です。
 
厚生労働省の「医療保険に関する基礎資料 ~令和4年度の医療費等の状況~」によると、日本人の生涯医療費のうち70歳以降にかかる分は1361万円とされていますが、これはあくまで総額です。実際には健康保険が適用されるため自己負担は1~3割となり、136~408万円程度が目安となるでしょう。
 
また、介護が必要になった場合も一定の負担が発生しますが、こちらも介護保険により費用は軽減されます。例えば、特別養護老人ホームに入居する場合、月10万円前後の費用がかかることもありますが、介護度や所得に応じて支援が受けられます。
 
このように、公的制度をうまく活用することで、500万円の貯金でも平均的な医療費や介護費用の自己負担分をカバーできる可能性があります。
 

500万円の貯金を生かす工夫

貯蓄は多ければ安心ですが、大切なのは「どう使うか」です。500万円の貯金があれば、必要に応じて段階的に取り崩していくことも可能です。
 
例えば、1年間に取り崩す額を30万円(月2万5000円)に抑えれば、単純計算で15年以上持たせることができます。ただし、取り崩し額が大きい場合は早期に底をつく可能性があるため、計画的な運用や支出の見直しが重要です。
 
また、支出を見直すことも大切です。例えば、保険の見直しや通信費・光熱費の節約、小さな買い物の積み重ねを抑えることで、支出の削減が可能です。食事は自炊を中心にし、移動には車ではなく公共交通機関や自転車を活用するなどを心掛けることで、月々の出費は大きく変わります。
 
さらに、元気なうちは短時間のアルバイトなどで収入を得ることも一つの選択肢です。近年では、地域のシルバー人材センターや在宅の軽作業など、年齢に応じた働き方を選べる環境も整ってきています。
 

平均にとらわれず、安心できる生活設計を

「貯金が500万円では足りないのでは?」と不安に思う気持ちは自然ですが、平均貯蓄額の数字を信じ込むのは危険です。大切なのは、自分の生活に合った収支バランスを見つけ、今ある資金をどのように活用していくかです。
 
年金と生活費の差を理解し、支出を見直し、必要に応じて少しずつ貯蓄を活用することで、安心した生活は十分に可能です。加えて、公的な支援制度や地域のサポートも視野に入れながら、これからの生活を前向きに設計していくことが何よりも重要です。
 

出典

金融広報中央委員会 知るぽると 家計の金融行動に関する世論調査
厚生労働省 令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)結果の概要
厚生労働省 医療保険に関する基礎資料 ~令和4年度の医療費等の状況~
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

  • line
  • hatebu
【PR】
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集