介護、イニシャルコストよりランニングコスト
配信日: 2017.10.05 更新日: 2021.06.19
冷たい言い方をすれば、親の状況は(健康面での)上昇曲線は描きません。どこかのタイミングで施設入所になりますが…
執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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最初の思い入れは海よりも深いが
このように書いてしまうと身も蓋もありませんが、大きな買い物をするときの心構えは大なり小なり同じようなもので、最初に思い立ったときが一番の気合いがはいっているものです。住宅や自動車の購入も然り、子どもの入学金然りで、契約締結や最初の手続き時には、これからの夢や希望もミックスされて、あれもこれもと、思いはふくらみます。
しかし、介護に関していえば親がいったん施設に入ってしまえば、それは死亡するまで基本的には続きます。しかも終わりはいつなのかわかりません。
介護度が重くなっていくにつれて必要なものは増える
何度も書きますが、高齢者の介護は年を追うごとに、月日を追うごとに経済的にも時間的にも負担感は重くなっていきます。例えばこれまでは普通にできていた寝返りができなくなった、誤飲の危険性が出てきた、それを寝具や機械で解決することができますが買い替えるときにはかなりの高額になり、メンテナンスコストもかさむようになります。
床ずれになりにくい新型ベッドを提示されればそちらに目が移りますが、当然タイプが新しくなれば大きくなり手狭にもなっていきます。他方、介護度が重くなるにつれて、かつての自分の父親や母親が弱々しくなっていくのを目にするにつれ、感情が勝ってしまい自分の家計の状況や今後の見通しを客観的にたてられなくなってしまいがちです。
家計収支で線引きの基準を引いたら、ときにはドライに
もちろん、経済的に余裕があればこのような問題は発生しないのですが、ベッド、マット、吸引器とそれぞれが順次より精度のいいものに更新していくと、気が付けば驚くほどの金額が施設料に上乗せされているということになります。さりとて一度更新したら、またもとに戻すことは実質的には不可能です。
基本施設料は毎月どのくらいで、それにどのくらいのオプションがついていて、どのくらいまで付加できるのかを把握し限界ラインに到達したら提示された新型の装置については断るドライさ、客観的な判断力も必要です。
執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者