父は小さいアパートのオーナーです。最近父に認知症の兆候が見られるのですが、アパートの経営はどうしたらいいですか?
本記事では、もし親がオーナーで認知症の兆候が見られた場合、家族が取るべき行動を解説します。
お金と不動産相続のコンシェルジュ
宅地建物取引士・AFP・住宅ローンアドバイザー・相続診断士
目次
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判断能力の低下が招く「賃貸経営のまひ」
親が、長年大切にしてきたアパート。オーナーである親の物忘れが目立つようになるなど、判断能力に不安が見え始めたとき、その経営は大きなリスクに直面します。
賃貸経営で特に注意が必要なのが、銀行口座の取り扱いです。「認知症になると、即座に口座が凍結される」と思われがちですが、実際は銀行窓口で「本人の意思確認が十分にできない」と判断された際に、口座が制限される可能性があります。
口座が凍結されると、管理費の支払いや固定資産税の納税、修繕費の支払いが難しくなります。家族が暗証番号を知っていても、大規模な修繕契約や融資の相談、賃貸借契約の更新などは、オーナー本人の意思表示が不可欠です。判断能力の低下は、経営の行き止まり(デッドロック)を招く深刻なリスクとなります。
入居者の「安全」を守るのは誰か? (社会的責任の視点)
不動産業界に20年以上携わってきた立場から、一つの大切な視点をお伝えさせてください。賃貸経営とは単なる投資ではなく、入居者の「暮らし」を預かる社会的責任を伴う仕事です。
共用部の設備故障や災害時に、「オーナーの意思確認ができず費用が出せない」という理由で修理が滞れば、入居者は安心して暮らせず、物件の資産価値も下落します。
親御さんが長年築いてきた入居者さまとの信頼関係を守り、地域に管理不全の物件を出さないためにも、大家としての「誠実さ」を維持するには、本人の判断能力が十分なうちに、次世代へ経営のバトンをつなぐ準備が重要です。
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「成年後見」と「家族信託」 -それぞれの特徴
経営継続のための法的な備えとして、主に2つの選択肢があります。
・成年後見制度
家庭裁判所が後見人を選任し、本人の財産を保護する制度です。本人保護が最優先されるため、積極的な資産運用や大規模修繕には制約が生じる場合があります。
・家族信託
本人の判断能力が十分なうちに、管理・処分の権限を家族に託す仕組みです。将来的に判断能力が低下しても、受託者の判断で柔軟に経営継続が可能です。
ただし、家族信託は「信じて託せる家族」がいることが前提です。頼れる親族がいない場合や意見が分かれる場合は、成年後見制度や第三者機関の活用も検討できます。どの仕組みが適しているかは状況により異なるため、必ず司法書士や弁護士に相談してください。
納得のバトンタッチを導く「伴走者」の見つけ方
「親に将来の管理の話をするのは気が引ける」と感じる方は多いでしょう。しかし、親子だけの話し合いは感情的になりやすく、先送りになりがちです。
まず今日からできることとして、契約書類や入居者情報を整理しておくことをお勧めします。賃貸借契約書をファイルにまとめ、入居者の連絡先や修繕履歴を一覧化する。オーナーさまの判断能力が低下した際、ご家族が「誰と、どんな契約をしているか」をすぐ把握できれば、緊急時の対応が格段にスムーズになります。
一方で、法的な備えも欠かせません。アパート経営の継承には法務・税務・不動産実務の知識が必要です。各専門家を横断的につなぎ、客観的に交通整理してくれる「伴走者(コーディネーター)」を見つけることが解決への近道です。
答えは一つではありませんが、柔軟に対策を立てられるのは、本人の判断能力がしっかりしている「今」だけです。お父さまが大切にしてきた資産と入居者さまの暮らしを守るために、まずは信頼できる専門家に胸の内を話してみましょう。それだけで、止まっていた時間が動き始めることもあります。一歩、踏み出してみませんか?
出典
法務省 成年後見制度・ 成年後見登記制度 成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A
一般社団法人家族信託普及協会 家族信託とは?
執筆者 : 稲場晃美
お金と不動産相続のコンシェルジュ
宅地建物取引士・AFP・住宅ローンアドバイザー・相続診断士
