退職金「1000万円」で引かれる税金はいくら? 退職金の代わりに自分で老後資金を準備する方法はある?
そこで今回は、退職金に関するそのような疑問に答えていきます。
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
退職金は意外と税金がかからない
意外に思われるかもしれませんが、退職金にかかる税金には、一定の税制上の優遇措置が講じられています。金額によっては所得税が全くかからないこともあります。
なぜなら、退職金には「退職所得控除」という控除が適用されるからです。この退職所得控除の額はかなり大きく、勤続年数が20年以下でも「40万円×勤続年数」の額が適用されます。
仮に、5年務めただけでも控除の額がなんと200万円にも達します。そして、20年超の場合、「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」となり、さらに大きくなります。
例えば、23年務めて退職金を受け取った場合、退職所得控除の額が1010万円となり、退職金が1000万円であれば所得税がかからなくなるのです。
また、具体的な所得税の額を計算する際は、退職金額から退職所得控除を差し引いた額に2分の1をかけた数字に税率をかけて算出します。勤続年数別に1000万円の退職金にかかる税金を計算すると、下記のようになります。
・10年勤続の場合
退職所得控除:40万円×10年=400万円
課税対象:(1000万円-400万円)×1/2=300万円
所得税:300万円(課税所得)×10%(所得税率)-9万7500円(控除額)=20万2500円
復興特別所得税:20万2500円×2.1%=約4252円
住民税:300万円×10%=30万円
合計税額:約50万6752円
・20年勤続の場合
退職所得控除:40万円×20年=800万円
課税対象:(1000万円-800万円)×1/2=100万円
所得税:100万円(課税所得)×5%(所得税率)=5万円
復興特別所得税:5万円×2.1%=1050円
住民税:100万円×10%=10万円
合計税額:15万1050円
退職金はもらえないケースもある
退職金は必ずもらえるとは限りません。例えば、東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」によれば、調査対象となった全産業について、退職金制度がある企業が全体で64.2%とされています。実に34.4%もの企業で退職金制度がないという現実があります。
ここだけ見れば、多くの企業に退職金が支給されているように感じるかもしれません。しかし、これはあくまでも東京都産業労働局の調査対象企業のうち、回答した企業での割合です。
また、制度自体が会社にあっても、1000万円近くもらえることはそう多くはないはずです。現に、東京都産業労働局の同調査のモデル退職金によれば、大学卒で30年間勤め、会社都合の退職をしても、支給される退職金は800万円足らずという水準になっています。
退職金を会社に代わり自分で用意できないの?
退職金を会社からもらえる部分に上乗せして、または会社に代わって自分で用意したいという方もいるかもしれません。退職金そのものを用意することは難しいですが、退職金のように退職後の資金を用意することは可能です。
例えば、そのひとつの方法にiDeCoがあります。iDeCoは受け取る際に一時金か年金かで受け取り方法を選択することができますが、一時金で受け取った部分については退職金と同様の控除が受けられます。
また、NISAを使えば一定の条件のもと非課税で資産運用できるため、長年にわたり資産運用して、退職時にそれを現金化することで退職金のようにお金を用意する方法もあります。
もしこれらの制度が気になるようであれば、ぜひiDeCoやNISAについて調べてみてください。
まとめ
退職金1000万円にかかる税金は、退職所得控除をはじめとした税制上の優遇措置から、思ったより軽くなることが多く、今回の概算では勤続10年で約51万円、勤続20年で約15万円、勤続30年なら非課税になることが想定されます。
一方で、1000万円もの退職金を得ることは簡単ではなく、長年勤めても実現できるか分からないケースもあります。退職金については、過度に期待するのではなく、自身でも老後の生活を見据えた資金準備を進めておくことが重要といえるでしょう。
出典
東京都産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版) 報告内容 II.調査結果の概要 7.退職金制度(31ページ)、8.モデル退職金(34ページ)
執筆者 : 柘植輝
行政書士