60代で「貯蓄1200万円」は少ない? 同世代は平均「2000万円」は貯めてますか? 中央値はどのくらいでしょうか? 老後資金“800万円の差”が与える影響とは
「わが家の貯蓄は1200万円ほどだが、これで老後は足りるのだろうか」と不安を抱える人も多いでしょう。
目標とされる2000万円と、手元にある1200万円の「800万円の差」は、実際の老後生活にどのような影響を与えるのでしょうか。本記事では、平均的な会社員世帯の年金額と生活費のデータを基に、老後に必要な金額を検証します。
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60代の平均的な貯蓄額とは?
金融経済教育推進機構(J-FLEC)の家計の金融行動に関する世論調査(2025年)によると、60代の二人以上世帯の貯蓄平均額は約2683万円ですが、より実態に近い中央値は約1400万円にとどまります。
これは、一部の富裕層が平均を引き上げる一方で、半数以上の世帯が1400万円以下にとどまっていることを示しており、格差の大きさが浮き彫りになっています。つまり「貯蓄1200万円」は、平均値には届かず不安を感じる水準であるものの、中央値と比較すればやや下回る程度で世間一般では標準に近い位置です。
しかし、老後生活が20年、30年と長期化する現代で重要なのは、「世間との比較」ではなく、「自分の家計でいつ資金が尽きるか」という視点です。
実際の年金受給額と生活の赤字額
まずは、老後の収入の柱となる公的年金の受給額を確認してみましょう。日本年金機構が公表しているデータによると、2026年4月からの標準的な夫婦世帯の合計年金受給額は、月額23万7279円です。
次に、支出となる生活費を見ていきます。総務省の「家計調査報告(2025年)」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯における月の平均支出は以下のとおりです。
消費支出(食費、光熱費、娯楽費など):26万3979円
非消費支出(税金、社会保険料など):3万2850円
世帯の合計支出額:月額 29万6829円
この平均支出から、先ほどの年金収入を引くと、毎月約6万円の赤字が発生します。この不足分を貯蓄から取り崩す必要があるため、老後に向けた貯蓄が不可欠です。
もし毎月6万円の赤字が続いた場合、年間の取り崩し額は約72万円です。仮に65歳から90歳までの25年間、この生活水準を維持したとすると、生活費の補てんだけで総額約1800万円が必要となります。
「貯蓄1200万円」と「2000万円」の差がもたらす影響
上記の試算から、「貯蓄1200万円」という金額は、平均的な生活を送るための日々の赤字補てん額(約1800万円)に対して、大きく不足していることが分かります。一方、「2000万円」があれば、基本的な生活費の赤字を補てんしたうえで、一定の予備費を確保できる水準です。
老後生活では、日々の生活費に加えて、自宅の修繕やリフォーム費、車の買い替え、さらに夫婦どちらかに介護が必要になった際の初期費用など、まとまった支出が発生する可能性があります。
貯蓄1200万円の場合、平均的な赤字(月約6万円)を前提とすると、約17年で資金が尽きる計算です。65歳から取り崩しを始めると82歳で資金が尽きるため、人生100年時代といわれる現代では、工夫が必要です。
さらに、今後の物価上昇によって生活費が平均データ以上に増加した場合、想定よりも早く資金が尽きる可能性もあります。800万円の差は、単なる余剰資金ではなく、こうした不確実性に備えるための予備費となるでしょう。
したがって、貯蓄1200万円で安定した老後を送るには、早めの対策が重要です。例えば、固定費や日々の支出を見直し、毎月の赤字幅を現在の半分以下に抑えて資産寿命を延ばす「家計のダウンサイジング」が不可欠となります。
まずは、毎年誕生月に送られてくる年金記録を記載した「ねんきん定期便」などを確認し、どのくらいの年金額が見込めるのかを確認しておきましょう。
併せて、再雇用やパートタイムなどで可能な限り長く働き、就労収入によって貯蓄の取り崩し開始時期を遅らせることも有効な方法です。限られた資産を効率的に守り抜く工夫が求められます。
800万円の差は「予備費の有無」と「生活水準の調整幅」
「貯蓄1200万円」は、決して少ない金額ではありませんが、2000万円と比較した場合の「800万円の差」は、医療・介護や住宅維持といった突発的支出に対応できるかどうかという点で大きな意味を持ちます。
貯蓄1200万円で老後を安定させるためには、現在の生活費を見直して毎月の赤字額(約6万円)を2万~3万円程度まで圧縮する、あるいは健康なうちは長く働き続けて収入を確保し、貯蓄の目減りを抑えるなどの対策が現実的です。
平均データはあくまで目安として捉え、まずは「ねんきん定期便」で自身の正確な受給見込額を確認し、家計ごとの収支計画を立ててみてください。
出典
金融経済教育推進機構(J-FLEC) 家計の金融行動に関する世論調査2025年
日本年金機構 令和8年4月分からの年金額等について
総務省統計局 家計調査報告 [家計収支編] 2025年(令和7年)平均結果の概要
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
