再雇用はうれしいけれど…給与が6〜7割減ってガッカリ! それでも再雇用で働き続けるべき「5つ」の金銭的メリットって?
本記事では、給与減少後でも働き続けるメリットを、収入面だけでなく幅広い視点から解説します。
CFP(日本FP協会認定会員)
1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ
人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。
「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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目次
手取りが減る理由は「見えない支出」があるため
再雇用後は、一般的に給与が現役時代の6~7割程度になるケースが多く見られます。そこに加えて以下のような支出も発生する可能性があります。
・通勤費(会社負担が減る場合もある)
・昼食代
・仕事用の衣服
・仕事上の交際費
・体調管理費(外出増による)
例えば、給与が月10万円減り、さらに通勤費・昼食代などで月2万円かかると、実質的な可処分所得は12万円減ることになります。こうした数字だけを見ると、「働かないほうがよいのでは」と感じるのも無理はありません。
しかし、再雇用のメリットは単純な手取り額だけでは判断できません。
「手取り」だけじゃない!働き続けることで得られる5つの金銭的メリット
給与明細の数字だけを見るとモチベーションが下がりがちですが、再雇用には見えないキャッシュフローの改善効果があります。
厚生年金の加入期間延長で「一生涯の年金額」が増える
再雇用で厚生年金に加入し続ける最大のメリットは、将来受け取る老齢厚生年金の額が増えることです。現在の制度では、70歳に達するまで厚生年金に加入できます。給与が下がったとしても、加入期間が延びることで、受給開始後の年金額は一生涯にわたって底上げされます。
なお、在職老齢年金の基準額が2026年4月から月65万円へ引き上げられ、従来よりも「働くと年金が減りやすい」という不利が和らぐ見直しが行われました。
在職老齢年金とは、厚生年金に加入して働きながら老齢厚生年金を受け取る際、給与などと年金額の合計に応じて年金額が調整される仕組みです。働きながら年金を受け取りやすい環境が整いつつある点も、見逃せないメリットです。
健康保険料の負担を抑えられる
退職して国民健康保険に加入する場合、前年の所得をベースに計算されるため、初年度の保険料が非常に高額になるケースがあります。再雇用で会社の健康保険(協会けんぽなど)に加入し続ければ、保険料は労使折半となり、標準報酬月額(給与)に基づいた金額になるため、支出を大幅に抑えられる可能性があります。
また、傷病手当金などの保障が受けられる場合もあります。傷病手当金は、健康保険の被保険者が業務外の病気やけがで仕事を休み、給与が支払われない場合に、生活を保障するために支給される給付金です。
高年齢雇用継続給付を利用できる場合がある
60歳以上65歳未満の一般被保険者で、雇用保険の被保険者であった期間が5年以上あり、60歳時点と比較して賃金が75%未満に低下した場合など、一定の条件を満たすと雇用保険から「高年齢雇用継続給付」が支給されるケースがあります。そのため、再雇用で給与減になったとしても、給付を含めれば実質的な収入を補える場合があります。
資産寿命を延ばすことができる
再雇用で得た収入は、たとえ少額でも生活費の補てんになります。例えば月8万円の収入があれば、年間96万円です。これは老後資金の取り崩しをその分減らせることを意味します。老後は資産を長く持たせることが重要です。働いている期間が長いほど、資産寿命は延びます。これは精神的な安心にもつながります。
年金の「繰下げ受給」という選択肢が広がる
老齢基礎(厚生)年金は、65歳で受け取らずに66歳以後75歳までの間で繰り下げて増額した年金を受け取ることができます。繰り下げると、年金額は最大で84%増加します。
働き続けることで、この年金受給開始を遅らせる「繰下げ受給」も検討しやすくなります。再雇用の収入があることで生活費をまかなえる場合、この選択肢は非常に有効です。
お金以外にも働き続けることで得られるメリット
お金以外で見落とせないのが、精神的・身体的なメリットです。
社会的つながりで得られる精神的なメリット
定年退職後に急に社会との接点がなくなると、心身の活力を失うリスクが高まります。働き続けることで、「誰かの役に立っている・必要とされている」という実感は、お金には換えがたい精神的な安定剤となります。
規則正しい生活で得られる身体的なメリット
「決まった時間に起き、移動し、人と話す」というルーティンが生まれることで生活リズムも整い、適度な運動にもなることが健康維持にもつながります。このことは、将来的な医療費や介護費の抑制につながる可能性があります。結果的に家計面でのメリットにもなり得ます。
通勤費・昼食代に対する考え方
「通勤費や昼食代がかかる」という懸念について、家計管理の視点から対策を考えてみます。
通勤費は「実費支給」か「定額支給」かを確認
多くの企業では再雇用後も通勤費は実費で支給されますが、もし自己負担が発生する場合は、改めて「働き方」を見直すタイミングかもしれません。週3日勤務にする、あるいは近場での再就職を検討するなど、支出を最適化する工夫が可能です。
昼食代は「健康投資」ととらえ直す
昼食代を「単なるコスト」ととらえると負担に感じますが、外で働くことで規則正しい食事習慣が維持される側面もあります。お弁当を持参するといった「節約」と、時には同僚とランチを楽しむことで得られる「情報交換・交流の時間への支出」といったバランスを取ることで、単なる出費以上のリターンが得られます。
働くメリットが小さいケースもある
一方で、以下のような場合は、働き続けることに対して慎重な判断が必要になってきます。
・通勤時間が長く体力的負担が大きい
・交通費が自己負担で高額
・医療費が増えるほど体調に負担がある
・家族の介護が必要
このような場合は、短時間勤務や別の働き方を検討するのも1つの方法です。
まとめ
再雇用後に給与が減ることにより、「働いてもあまり意味がないのでは」と感じることもあります。しかし、手元に残るお金が少なくなったとしても、厚生年金の増額や健康維持、そして何より「社会的な役割」を持ち続けられることは、長い老後を豊かに過ごすためのメリットとなります。
通勤費や昼食代などの支出も含めて家計を見直しつつ、「将来の安心」と「生活の質」の両面から判断することが大切です。収入だけでなく、働くことによる総合的な価値を考えて判断するとよいでしょう。
出典
政府広報オンライン「もっと働きたい!に応えて、在職老齢年金制度の基準額が2026年4月から引上げに」
厚生労働省「Q&A~高年齢雇用継続給付~」
日本年金機構「年金の繰下げ受給」
執筆者 : 小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

