「退職金2000万円」を資産運用できず困っています…。焦って株を買って“老後破産”するのは絶対に避けたいのですが、初心者でも失敗しない安全な運用方法はありますか?
今回は、失敗しないための老後資金の管理方法について詳しく解説します。
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/
金融商品の性質と老後資金の3分類
1. 金融商品の性質
金融商品には、流動性、安全性、収益性といった3つの性質があります(※1)。
流動性:必要なときにいつでも現金に替えられること
安全性:元本が守られ、利子の支払いが確実であること
収益性:収益が期待できること
しかしながら、3つの性質をすべて兼ね備えた金融商品は一つもありません。
また、一般的に「安全性」の高い商品は「収益性」が低く、「収益性」の高い商品は「安全性」が低いという関係にあります。
例えば、流動性の高い商品は普通預金、安全性の高い商品は定期預金や国債など、収益性の高い商品は株や投資信託といったものになります。
2. 老後資金の3分類
老後資金は、生活費や医療費などの「日常の生活に必要な資金」、リフォーム費用など使途と時期が明らかな「使途が明確な資金」、趣味に使う資金や子どもや孫に残す「ゆとりや残す資金」の3つに分類して管理するとよいでしょう。
そして、3分類に応じた金融商品を選択します。例えば、「日常の生活に必要な資金」は「流動性」を確保できる普通預金、「使途が明確な資金」は「安全性」を重視して定期預金や個人向け国債、「ゆとりや残す資金」は「収益性」を追求することができることから株式や投資信託の利用を検討するとよいでしょう。
3. 老後資金の使途と金額の確認
退職金を含めた金融資産の使途を、前述した3分類に割り当てて考えてみましょう。
「日常の生活に必要な資金」が年金やその他の収入で賄えない場合は、その不足額を「使途が明確な資金」として確保しておかねばなりません。また、リフォーム代など将来必要となる資金を「使途が明確な資金」として積算します。
そして、退職金を含めた金融資産の合計から「日常の生活に必要な資金」と「使途が明確な資金」の額を差し引いた残りの資金が、「ゆとりや残す資金」の額になります。
投資の基本
「ゆとりや残す資金」の金額を把握したところで、次に資産の投資と運用を考えます。投資の基本は、「分散投資」と「長期運用」といわれています(※1)。
1. 分散投資
「分散投資」とは、投資の対象や購入時期などを分散することです。
投資対象を分散するとは、1社の株に全額を投資したとするとその会社の業績に株価が大きく左右されます。しかし、業種の異なる数社や数十社の株式に分散して投資すれば、特定の会社の業績に左右されにくくなります。この点で、多くの株式や債券を組み込んだ投資信託を選択することは、分散投資の効果があります。
購入時期の分散とは、一度に多額の資金を投入して価格が変動する金融商品を購入する場合、買う時期を誤ると大きな損失を被る可能性があります。
そこで、購入時期を分散して、時期による価格変動のリスクを減らす方法として、定期的に一定額で同じ金融商品を購入し続ける「定額購入(ドルコスト平均法)」することで、価格変動のリスクを軽減することができます。
2. 長期運用
「長期運用」とは、金融商品を短期間で売買することなく、景気動向に左右されることなく、購入した金融商品を長期にわたり運用することです。長期で運用することにより、複利効果が得られることや、景気後退時に売却して損失を被ることを避けることができるなどの利点があります。
NISAを活用した分散投資
NISA(少額投資非課税制度)は、株式や投資信託などの金融商品に投資した場合、その金融商品を売却して得た利益や受け取った配当に対して課税される約20%の税額が非課税となる制度です(※2)。したがって、投資を始める場合は、NISA口座を利用しない手はありません。
ただし、NISAを利用するためには下表の制約があります。なお、NISAは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」に区分されています(図表1)。
図表1
| つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
|---|---|---|
| 年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
| 非課税限度額 | 1800万円 | |
| 1800万円 | 1200万円(内数) | |
| 投資対象商品 | 金融庁の基準を満たした投資信託 | 上場株式・投資信託(注) 注:一定の投資信託等を除く |
(※2を基に筆者作成)
また、NISA口座は1人につき1口座に限られ、複数の金融機関で同時に開設することはできません。
NISAの「つみたて投資枠」で購入することができる金融商品は、長期の積立・分散投資に適しているものとして金融庁が認めた投資信託です。
そこで、NISA口座を利用して、つみたて投資枠で購入できる投資信託を選定し、つみたて投資枠で月額10万円、成長投資枠で月額20万円を投資して5年間積み立てると、元本がNISAの上限である1800万円に到達します。この方法により、ドルコスト平均法の効果を発揮し、分散投資を行うことができます。
まとめ
退職金としてまとまった資金を手にしても、決して焦って投資に回すことなく、まず老後資金の棚卸しを実施し、「ゆとりや残す資金」にいくら割り当てることができるのか確認しましょう。
そして、多額の資金を一度に投じて金融商品を購入することは避け、NISA口座を利用して投資信託を積立購入することにより、投資対象と購入時期の分散を図ることができるとともに、節税することができます。
出典
(※1)金融経済教育推進機構 大人のためのお金と生活の知恵
(※2)金融庁 NISA特設サイト
執筆者 : 辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

