60歳「退職金550万円」で、金利1.0%の「住宅ローン500万円」を“一括返済”するか迷っています。退職金がほぼなくなりますが「貯金1000万円」なら大丈夫ですか? 見落としがちなリスクとは
手元には1000万円超の資金が残るため、一見すると安全に思うかもしれませんが、退職金の大半を返済に充てることには見落としがちなリスクもあります。本記事では、老後の資金繰りと、手元の現金を残すための選択肢を検証します。
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目次
退職金を一括返済に充てることによる「手元資金の枯渇リスク」
退職金550万円のうち、500万円を住宅ローンの返済に充てると、手元に残る現金は貯金1000万円と退職金の残り50万円となります。老後資金として1050万円あるなら十分だろう、と感じるかもしれませんが、60歳以降の生活には突発的な出費がつきものです。
車の買い替えや自宅のリフォームだけでなく、夫婦どちらかの病気や介護など、一度に数百万円単位の現金が必要になる可能性は高くなります。一括返済に使うと手元の現金が少なくなるため、これらの突発的な出費に対応する余力が小さくなるでしょう。
金利1.0%の利息負担と、年金生活におけるキャッシュフロー
金利1.0%の住宅ローンを残したまま返済を続けた場合、利息負担額はいくらになるのでしょうか。残債500万円で金利1.0%の住宅ローン、残りの返済期間が10年だった場合を想定します。
毎月返済額は約4万4000円となり、総利息額は約26万円、総支払額は約526万円です。総利息約26万円は、500万円に対しておよそ5%に相当します。金利1.0%という低金利を考えると、「この利息負担を許容してでも、手元資金を厚く残す価値があるか」が判断のポイントです。
一方、年金生活に入ると現役時代に比べて毎月の収入(キャッシュフロー)は減少します。手元に現金があっても、毎月の赤字を貯金から補てんしていく生活が続けば、資産は瞬く間に目減りしていくでしょう。
年金生活に重くのしかかる住宅ローンを完済して、毎月の支払いをゼロにすることの安心感は大きいものです。しかし、いざというときに手元に十分な現金がない状態は、かえって精神的な負担となる可能性もあります。
「一部繰り上げ返済」で現金を残しつつ負担を減らす方法
そこで検討したいのが、全額を一括で返済するのではなく、「一部繰り上げ返済」を活用するという選択肢です。例えば、退職金から200万円だけを繰り上げ返済に充て、残りの350万円は手元に残す、という方法を考えてみます。
借入残高が減ることで、毎月の返済負担を軽減でき、日々の家計の負担を軽くできます。このようにすれば、退職金のうち350万円を現金として確保でき、貯金1000万円と合わせて1350万円を手元に残すことが可能です。
また、その350万円をNISAなどで運用すれば、資産も増えていきます。仮に350万円を年利5%で10年間運用できた場合、福利計算では約570万円になるでしょう。このように、月々の負担を軽減しつつ、将来の医療費や修繕費に備えたお金を確保できる、バランスの取れた方法を検討してみてもよいかもしれません。
もっとも、年利5%はあくまで過去の実績などを基にした期待値であり、元本保証はありません。相場下落によって資産が減る可能性もあるため、「確実に200万円増える」と考えるのは避けてください。
「一括返済」に踏み切りやすい家計、慎重に考えたい家計
手元の現金を残すべきだと分かっていても、やはりローンの存在自体がストレスだという人もいます。一括返済に踏み切るかどうかの判断基準は、「公的年金だけで毎月の生活費が黒字になるかどうか」です。
もし、夫婦の年金収入だけで日々の食費や光熱費、住宅ローンの返済額まですべて賄えており、貯金を取り崩さずに生活できる状態であれば、退職金を使って一括返済しても家計が破綻するリスクは低いでしょう。
一方、現時点で「毎月の生活費が赤字で、貯金を取り崩す予定」であるなら、一括返済は避けたほうが無難です。年金生活における重要なポイントは、毎月の返済額の少なさではなく、自由に動かせる「手元現金の多さ」であるからです。
退職金での一括返済は慎重に、現金の確保を優先に考えよう
60歳で貯金1000万円、退職金550万円がある状況で、住宅ローン500万円を完済できるだけの資金力は十分にあります。ただし、老後は医療費や介護費など予想外の支出が発生する可能性もあるため、住宅ローンの完済だけを優先するのではなく、手元資金とのバランスを考えることが重要です。
全額返済による安心感を重視する方法もあれば、一部繰り上げ返済や資産運用を組み合わせて現金を厚めに残す方法もあります。年金収入と今後の生活費を見通したうえで、自分に合った資金計画を選ぶことが、安心できる老後につながるでしょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

