父が退職金2000万円をそのまま投資信託に回したと聞き、家族みんなで驚きました。老後資金として、その運用方法は大丈夫なのでしょうか?
しかし、生活費まで含めて全額を一度に投資するのはリスクが高い場合があります。まずは、生活資金、運用資金、緊急資金に分けて考えることが大切です。
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退職金を投資信託で運用すること自体は間違いではない
退職後の生活は長く続きます。金融庁は、長寿化が進み、退職後も資産寿命を延ばす考え方が重要になっていると説明しています。家計金融資産の約3分の2を高齢世帯が保有している一方で、その金融純資産は過去20年間横ばいであることが背景として挙げれています。
また、金融審議会の報告書では、日本人の平均寿命は大きく延びており、現在60歳の人の約4人に1人が95歳まで生きると試算されるなど、「人生100年時代」を迎えつつあるとされています。
そのため、預金だけでなく、投資信託などを使って資産を運用することには一定の意味があります。
特に、物価が上がると、預金のままではお金の実質的な価値が目減りすることがあります。生活費の一部を将来に備えて運用する考え方は、老後資金を長持ちさせる手段の一つです。
ただし、投資信託は元本保証ではありません。株式や債券などに投資するため、相場が下がれば評価額も下がります。退職金2000万円を投資して、数か月後に1500万円台まで下がる可能性もゼロではありません。
問題は、投資信託を買ったことではなく、「退職金をそのまま全額回したこと」です。老後の生活費として近いうちに使うお金まで値動きのある商品に入れてしまうと、必要なときに損を抱えて売ることになりかねません。
まずは生活費と緊急資金を投資から分ける
退職金を受け取ったら、最初に分けたいのは生活費です。年金だけで生活費が足りない場合、その不足分を退職金から取り崩すことになります。
たとえば、年金収入より生活費が毎月5万円多いなら、年間60万円が不足します。5年分なら300万円、10年分なら600万円です。このように、近い将来に使う予定があるお金は、預金など安全性の高い形で持っておくのが基本です。
さらに、医療費、介護費、住宅修繕費、家電の買い替えなどに備える緊急資金も必要です。退職後は収入を大きく増やしにくいため、急な出費に対応できる現金がないと不安が大きくなります。
投資に回すのは、当面使わないお金に限るのが安全です。2000万円すべてを投資信託に入れているなら、まずは一部を売却して、数年分の生活費と緊急資金を預金に戻すことを検討してもよいでしょう。
商品内容と手数料を家族で確認する
投資信託といっても、中身はさまざまです。世界中の株式に分散する低コストのインデックス投信もあれば、特定の国やテーマに集中する商品、毎月分配型の商品、手数料が高い商品もあります。
老後資金で特に注意したいのは、値動きが大きすぎる商品や、仕組みがよく分からない商品です。購入時手数料、信託報酬、信託財産留保額などの費用も確認しましょう。手数料が高いと、運用がうまくいっても利益を削ります。
また、販売員にすすめられるまま買った場合は、父本人がリスクを理解しているかも大切です。国民生活センターは、高齢者の消費者被害について、年金や貯蓄など大切な財産が狙われることがあると注意を呼びかけています。もちろん、すべての金融機関が悪いわけではありませんが、本人が理解しないまま契約しているなら見直しが必要です。
家族で確認するときは、父を責めないことが大切です。「なぜそんなことをしたのか」と詰めると、本人が話しにくくなります。購入した商品名、金額、手数料、リスク、売却時の条件を一緒に確認しましょう。
まとめ
退職金2000万円を投資信託で運用すること自体は、必ずしも悪い選択ではありません。長い老後に備えて資産寿命を延ばす考え方は重要です。
しかし、生活費や緊急資金まで含めて全額を一度に投資するのはリスクがあります。相場が下がったときに必要なお金を取り崩すと、損失が確定してしまうからです。
まずは、年金で足りない生活費、医療・介護などの緊急資金、当面使わない運用資金に分けましょう。そのうえで、投資信託の中身と手数料を確認し、必要なら一部を預金に戻すことも検討してください。家族で冷静に話し合い、父本人が安心して老後を過ごせる形に整えることが大切です。
出典
金融庁 高齢社会における金融サービスのあり方の検討
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」令和元年6月3日
国民生活センター 高齢者の消費者被害(テーマ別特集)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

