父の死後「お義母さんもやってた」と“300万円”を引き出す母…「口座凍結前の引き出しは違法」だと思いますが、夫婦なら“大目に見てもらえる”のでしょうか? 意外と知らない「正式に引き出す方法」

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父の死後「お義母さんもやってた」と“300万円”を引き出す母…「口座凍結前の引き出しは違法」だと思いますが、夫婦なら“大目に見てもらえる”のでしょうか? 意外と知らない「正式に引き出す方法」
家族が亡くなった直後、葬儀費用や当面の生活費のために、故人の口座からお金を引き出したいと考える人は少なくないでしょう。SNSなどでは「凍結される前に引き出すべきだ」という意見も見かけます。
 
しかし、家族であっても勝手な引き出しには注意が必要です。本記事では、口座凍結の仕組みと凍結前の引き出しのリスク、正式にお金を引き出せる制度について解説します。
金子賢司

CFP

亡くなった人の口座はなぜ凍結されるのか

全国銀行協会の「預金相続の手続の流れ」によると、口座名義人が亡くなった場合は取引金融機関に連絡することとされています。連絡を受けた金融機関から、相続の手続について案内があると同時に、故人の口座での取引(預金の入出金など)は原則として制限されます。
 
これが、いわゆる「口座凍結」と呼ばれる状態です。凍結された後は、遺言書の有無などに応じた必要書類をそろえて相続の手続きを行い、払戻しなどを受ける流れになります。
 

凍結前でも勝手な引き出しにはリスクがある

凍結される前であれば、キャッシュカードなどで事実上お金を引き出せてしまう場合があります。しかし、「夫婦なら大目に見てもらえる」といった特別な決まりがあるわけではないのです。
 
全国銀行協会の「ご存知ですか?遺産分割前の相続預金の払戻し制度」にあるように、亡くなった人の預金(相続預金)が遺産分割の対象となる場合には、遺産分割が終了するまでの間、相続人単独では払戻しを受けられないことがあります。
 
つまり、預金は相続人全員で分け方を決めるべき財産であり、遺産分割が終わるまで配偶者であっても1人の判断で自由に使ってよいお金ではありません。
 

相続放棄ができなくなるおそれ

特に注意したいのが、故人に借金があるケースです。民法第921条では、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、原則として単純承認(プラスの財産も借金などのマイナスの財産もすべて相続すること)をしたものとみなすと定められています。
 
引き出したお金を生活費などに使ってしまうと、後から多額の借金が見つかっても、家庭裁判所での相続放棄が認められなくなるおそれがあるため注意が必要です。
 

ほかの相続人とのトラブルになるおそれ

今回の事例のように父親が亡くなった場合、配偶者である母親だけでなく、子どもも相続人にあたります。
 
相続法の改正により、遺産分割前に相続財産が処分された場合でも、ほかの共同相続人全員の同意により、処分された財産を遺産分割の対象に含めることができます。処分した相続人の同意は不要です。
 
つまり、先に引き出したからといって、そのお金が当然に自分のものになるわけではないのです。使い道を記録していなければ、使い込みを疑われて相続人同士の関係が悪化する原因にもなりかねません。
 

当面のお金は「払戻し制度」で正式に引き出せる

葬儀費用や当面の生活費など、遺産分割を待たずにお金が必要になる場面もあるでしょう。そこで2019年7月1日から、「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」が始まりました。
 
全国銀行協会の案内によると、各相続人は「相続開始時の預金額×3分の1×払戻しを行う相続人の法定相続分」で計算した額までは、家庭裁判所の判断を経ずに単独で払戻しを受けられます(同一の金融機関からは150万円が上限)。
 
例えば、夫の預金が1つの銀行に1800万円あり、妻の法定相続分が2分の1の場合、計算上は1800万円×3分の1×2分の1=300万円ですが、上限があるため実際に払い戻せるのは150万円までです。
 
今回の事例の300万円は、この制度で1つの銀行から払い戻せる上限額を超えています。なお、この制度には配偶者だけの特例はなく、払い戻された預金は、後日の遺産分割で払戻しを受けた相続人が取得するものとして調整が図られます。
 

まとめ

亡くなった人の預金は相続人全員に関わる財産であり、配偶者だからといって、凍結前の引き出しが特別に認められるわけではありません。
 
安易な引き出しは、相続放棄ができなくなったり、ほかの相続人とのトラブルを招いたりするおそれがあります。当面のお金が必要な場合は払戻し制度を利用し、やむを得ず引き出したときは、領収書などで使い道を残しておきましょう。
 

出典

一般社団法人全国銀行協会 預金相続の手続の流れ
一般社団法人全国銀行協会 ご存知ですか?遺産分割前の相続預金の払戻し制度
法務省 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)
e-Gov法令検索 民法
 
執筆者 : 金子賢司
CFP

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