お盆の帰省で見つけた優しい時間。50代・60代から始める、親子でお互いの安心をつむぐ「家計の整え方」とは?
今回は、親の尊厳と子の想いを両立させながら、親子でこれからの暮らしと家計を優しく調えるステップを解説します。
福本FP事務所 代表、広島県相続診断士 会長、寺院コンサルタント
外資系金融機関を退職後、ファイナンシャルプランナーへ転身。資産運用・ライフプラン・相続・終活と、お客さまの幅広いニーズにワンストップで対応。ミドル・シニア世代、寺院のお客さまのアドバイスを得意とする。人生は一度きり、「今も将来もどちらも楽しむライフプラン」を提案する。
目次
1. 帰省明けに、お互いの未来を語り合うきっかけを
帰省明け、50代・60代から「実家のお金や暮らしをどう一緒に考えていけばいいか」という相談が多く寄せられます。
70代・80代の親世代は「子どもに迷惑をかけたくない」という強い誇りを持っているケースが多く、子世代の「万が一に備えたい」という想いとすれ違いがちです。優しさが先走って「終活」の話を切り出すと、親は「年寄り扱いされた」と感じてしまいます。
片方が管理するのではない、お互いのこれからの生き方を共有し、応援し合う対話として家計を整えていくことが大切です。
2. 人生100年時代だからこそ知っておきたい社会の仕組み
親子でこれからの暮らしを調える上で、知っておきたいのが金融機関の仕組みです。将来的に親の判断能力が低下したと銀行などが判断した場合、資産を守る防衛策として本人名義の口座が一時的に「凍結」されることがあります。
口座凍結は財産を守るための制度ですが、入院や介護が必要になった際、医療費などをスムーズに引き出せなくなる不便さを生じさせます。結果として家族が費用を立て替えるなど、互いの暮らしに負担がかかります。だからこそ、親が元気なうちからの備えが重要なのです。
3. 親子の尊厳と想いが響き合った「2つの対話エピソード」
実家のお金の話は、お互いの生き方を敬い合うコミュニケーションです。安心を得られた2つの対話事例を紹介します。
■親の「資産を守りたい」意思に寄り添う(60代Aさん)
意志の強い親に対し、「最近の詐欺や口座凍結が心配。お父さんたちの財産を守るために、手続きを手伝いができるよう仕組みを一緒に確認しておかない?」とアプローチしたケースです。
「資産を守るパートナー」として接することで、親子で相続相談会に参加するなどの一歩を踏出すことができました。
■親の「子どもに苦労をかけたくない」優しさに甘える(50代Bさん)
お金の話を避けたがる親に対し、「もしものときに私が困らないよう、どこに何があるかノートに書き残してもらえると安心」と一歩甘える形をとりました。
頼れる親でありたいという責任感に寄り添ったことで、親は情報の置き場所をノートに書き残してくれるようになりました。
4. これからの暮らしに寄り添う、2つの安心の仕組み
お互いの想いの共有も必要ですが、実務の確認も重要です。ここでは取り組みやすい実務的な仕組みを2つご紹介します。
(1) 生命保険の「保険契約者代理制度」の確認
本人の意思表示が難しくなった場合、家族が解約などを代行できる「保険契約者代理制度」の有無を確認しましょう。
老後資金を投資口座だけで管理していると、口座凍結時や相場暴落時に介護資金を急に捻出するのが困難になります。この制度を組み込んだ貯蓄型の保険を一部手元に残しておくことで、資金の流動性を確保でき、投資口座の凍結リスクを補完できます。
(2) 金融機関の手続きの「現状」の事前確認
銀行の「代理人指名手続き」は、主に「窓口に行けない身体的な不自由」をサポートする仕組みです。認知症等で本人の意思確認自体が難しくなると、引き出しに対応できなくなるケースが少なくありません。
証券会社の「予約型代理人制度」なども導入している金融機関は一部に限られます。親が元気なうちに、利用中の金融機関に将来家族が手伝うための固有の制度があるかを事前に確認しておきましょう。
おわりに:それぞれの「これからの暮らし」を優しく調えていく
50代・60代にとって親のこれからを考えることは、自分自身の未来と向き合うことでもあります。子どもの独立や自身の定年が見えてくるこの時期は、家族全員のライフプランを統合するチャンスです。
親のサポートを心地よく行うためには、まず「自分たち自身の生活基盤」を整えておくことが大切です。生活の土台が安定してこそ、親への応援や、万が一のときに寄り添う心のゆとりが生まれるからです。
「親のための準備」と同時に、「自分自身のための準備(資産形成や固定費の見直し)」もスタートさせましょう。今回紹介したリスクへの備えは、自身の老後準備にもそのまま役立ちます。
親の尊厳ある選択を支えつつ、家族みんなが安心できる温かなプランを両立させるために、まずは信頼できる専門家に相談し、最適なライフプランをデザインしてみてはいかがでしょうか。
出典
厚生労働省 福祉・介護:主な認知症施策
執筆者 : 福本知輝
福本FP事務所 代表、広島県相続診断士 会長、寺院コンサルタント

