SNS「若者の生活苦は高齢者の社会保障のせい」投稿に「清掃員も警備のバイトも高齢者ばかり」の反論が―“年金・福祉の給付”が高齢層に偏っても、なぜ「働く高齢者」は増え続けるのか…データを確認
清掃員や警備員として働く高齢者の姿を街で見かけるたびに、自分の手取りの少なさと重ね合わせて、もやもやした気持ちを抱えている人も多いのではないでしょうか。
本記事では、SNSで交わされた主張と反論をたどりながら、社会保障給付の内訳、年金や資産の平均額、そして働く高齢者の割合などを解説します。
FP1級、CFP、DCプランナー2級
目次
若者の生活苦は老人のせい? 投稿内容と反論内容は?
今回の議論は、「若者の手取りの少なさを高齢者への社会保障に求める投稿」と、「原因を高齢者だけに帰するのは短絡的だとする反論」がぶつかった構図になっています。
きっかけの投稿は、現役世代の手取りの少なさを高齢者向けの社会保障と結びつける内容でした。実際、社会保険料の高騰が現役世代の可処分所得を圧迫している面はデータでも裏づけられており、若年層の負担は再分配後の所得で見ると高齢者より厳しい環境になっているとの分析もあります。
一方の反論は、清掃員や警備員として働く高齢者が多い街の光景に触れながら、世代という大きなくくりだけで対立構造を作ると、それぞれの世代内にある格差や多様性が見えなくなると指摘しています。若者にも正規と非正規で大きな処遇差があり、高齢者も一様に恵まれているわけではないという視点です。
どちらの主張にも一理あるからこそ、感情だけで語るのではなく、数字で実態を確かめる姿勢が求められるといえるでしょう。
実際、高齢者は社会保障の恩恵を受けられているの?
高齢者が社会保障給付の中心的な受け手になっているのは、データを見るかぎり事実だといえます。
2026年度予算ベースの社会保障給付費は144兆1000億円にのぼり、その内訳は年金が63兆7000億円で全体の44.2%、医療が44兆6000億円で30.9%、福祉その他が35兆8000億円で24.8%を占めています。給付の柱である年金は高齢者向けであり、医療や介護についても給付の中心は高齢層に偏っています。
日本の社会保障は、現役世代が高齢世代を「仕送り」のように支える構造が基本になっており、少子高齢化が進むほど現役1人あたりの負担は重くなる仕組みです。40年前は現役およそ10人で高齢者1人を支えていたのが、いまは約2人で1人を支える計算になっています。
構造として、給付が高齢者に手厚く、負担が現役世代に偏っているのは、否定しづらい現実だといえるでしょう。
年金額の平均や資産額の平均は? 社会保険の恩恵はある?
平均額だけを見ると余裕がありそうに映りますが、実態は世帯によって大きくばらつくのが年金と資産の特徴です。
厚生労働省の令和6年度の集計では、会社員だった人などが受け取る厚生年金の平均月額はおよそ15万1000円、自営業者や専業主婦などの国民年金の平均月額はおよそ5万9000円となっています。
資産面では、2025年の二人以上世帯の貯蓄現在高は平均2059万円ですが、その平均を下回る世帯が全体のおよそ3分の2を占め、中央値は1264万円まで下がります。
平均を押し上げているのは一部の富裕層であり、多くの世帯の実感は中央値に近いとみられます。国民年金だけで暮らす女性の約12%は受給額が月4万円未満というデータもあり、高齢層の内部にも深刻な貧困が広がっているのが実情です。
働く高齢者の割合はどのくらい?
冒頭の投稿にあった「清掃も警備も高齢者ばかり」という感覚は、統計のうえでも裏づけのある傾向です。
2024年の65歳以上の就業者数は930万人で過去最多となり、就業者全体のおよそ7人に1人を高齢者が占めるまでになっています。65歳以上の就業率は25.7%で、年齢別に就業率を見ると65~69歳は53.6%と半数を超えています。
働き方の中身を見ると、役員を除く雇用者563万人のうち、8割近い433万人がパートや契約社員などの非正規で働いています。就業先は卸売・小売業に続き、清掃や警備を含むサービス業、医療・福祉などが多くを占めています。
生活のために働かざるを得ない高齢者も多く、就労する高齢者の増加は、必ずしも「元気で豊かな老後」だけを意味しないのだといえるでしょう。
まとめ
SNSで話題になった「若者の生活苦は老人のせい」という主張は、データで追うと単純な善悪では割り切れない実態が見えてきます。
問題の本質は、世代間の対立ではなく、世代を超えて負担と給付のバランスをどう設計し直すかにあります。手取りへの不満を高齢者たたきに向けるより、制度そのものを見つめ直す視点を持つと、次の一歩が見えてくるのではないでしょうか。
出典
厚生労働省 給付と負担について
厚生労働省 令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
総務省 家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果-(二人以上の世帯)
執筆者 : 高柳政道
FP1級、CFP、DCプランナー2級
