父が「有料老人ホーム」に入所後“持病の悪化”で1ヶ月で退所…「入居一時金500万円のうち300万円しか返せない」と言われましたが、たった1ヶ月で“200万円”は納得できません。本当に返ってこないのですか?
その際、契約時に支払った「入居一時金」500万円のうち300万円しか返還されないと言われたら、納得がいかない人は多いのではないでしょうか。
ある程度の金額であれば、入居にあたって部屋の準備や手続きの費用として理解できるものの、1ヶ月未満の滞在で200万円もの費用が引かれるのは妥当なのでしょうか。
本記事では、有料老人ホームの入居一時金と返還金の仕組みについて解説します。
ファイナンシャルプランナー2級
有料老人ホームの「入居一時金」とは?
有料老人ホームなど民間の高齢者施設では、月額利用料とは別に「入居一時金」を支払うことが一般的です。入居一時金とは、将来の家賃や施設利用料の一部を前払いする、初期費用のようなものです。
この一時金は、施設の条件によって異なりますが、一時金を支払うことで、月々の支払いが軽減されたり、施設によっては月額が不要になったりすることがあります。
また、一時金には「償却期間」という契約期間が設定されており、もしもこの期間内で退去した場合は、利用しなかった期間に相当する金額が返還されることになっています。
しかし、単純に5年間の償却期間で500万円の一時金を支払い、実際には3年で退去したから残りの200万円が返還されるのかというとそうではありません。
施設側には、「初期償却」といって、入居した時点で一時金の一部を施設が受け取ることができるためです。例えば、「入居一時金500万円、初期償却40%」という契約内容であれば、契約時点で200万円が償却され、残り300万円が返還対象となる場合があります。
90日以内の退去なら初期償却は認められない
有料老人ホーム等の一時金返還ルールは、老人福祉法と厚生労働省の指針によって定められており、「短期解約特例(短期解約特約)」という制度が設けられています。
これは利用者が入居後すぐに退去した場合には、施設が初期償却分を差し引くことはできないというものです。対象となるのは、
・入居日から90日以内に契約を解除した場合
・入居者が亡くなった場合
などです。この場合、施設は受け取った入居一時金から、
・実際に入居していた期間の利用料
・居室の原状回復費用など合理的な実費
を差し引いた残額を返還しなければなりません。つまり、今回のように1ヶ月で退所した場合に「初期償却だから200万円返せません」という主張は、法律上問題になる可能性があります。
思ったよりも返還額が少ないこともある?
短期の退所の場合、施設側は「初期償却」の費用を原則として差し引くことはできませんが、施設の利用条件によっては、月額利用料が高額であったり、介護サービス費用、食費や医療関連費用が発生していたりすることがあります。
このような場合は、一時金から引かれることがあることを覚えておきましょう。
また、施設の契約形態が異なるケースではルールが変わることもあるので、入居の前に契約書や重要事項説明書を確認し、入居一時金の金額、償却方法、90日以内退去時の返還規定といった内容を把握することも大切です。
退去時に施設の説明に疑問を感じた場合は、契約書や重要事項説明書、返還金の計算書の提示を求め、自分だけでは解決できない場合は、各都道府県の高齢者福祉担当部署や消費生活センターへ相談することも検討しましょう。
まとめ
有料老人ホームへ支払う入居一時金は、高額になることが少なくありません。
契約期間よりも大幅に短い期間で退所することになった場合、払った一時金が戻ってこないのではと心配する人もいるかもしれませんが、入居から90日以内に退去した場合、原則として初期償却分を差し引くことは認められていません。
そのため、今回のように「1ヶ月で退所したのに、500万円支払ったうちの300万円しか返せない」と説明された場合は、契約内容や計算根拠を確認することが大切です。
返還額は施設や契約によって異なりますが、「短期間しか利用していないのに大きく差し引かれている」と感じたときは、一度契約内容を見直してみるとよいでしょう。
出典
e-Gov法令検索 老人福祉法
厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針について
執筆者 : 渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級
