会社が「割増退職金600万円」上乗せの“早期退職”を募集中。「全額非課税だから2400万円入る」と思ったら、定年5年前に辞めたせいで「税金61万円」引かれることに!? 定年退職と手取りを比較
企業によっては、定年まで5年という時期に、割増退職金つきの早期退職が募集されることがあります。上乗せ額が600万円となれば、家族の気持ちが動くのも自然でしょう。
ただ、定年まで働く場合と比べて、税金の面で差があることには注意が必要です。本記事では、退職金1800万円に600万円が乗った場合の税金を計算式で示し、定年まで働いたときの手取りと比べます。
2級ファイナンシャルプランナー技能士
「退職金は全額非課税」は、どこまで正解か
退職金は、給与や年金と分けて計算される退職所得です。受け取った額がそのまま課税されるのではなく、勤続年数に応じた退職所得控除を差し引いた額の半分が課税対象となります。
国税庁によると、勤続20年超の退職所得控除は次の式で決まります。
・勤続33年の場合の控除額
800万円+70万円×(33年-20年)=1710万円
勤続33年の現時点で辞めた場合、受け取る退職金2400万円に当てはめると、課税される退職所得は345万円になります。
・2400万円-1710万円=690万円
・690万円÷2=345万円(課税される退職所得)
「退職金は全額非課税」というのは、正しくは「控除の枠に収まっていれば税金がかからない」です。
厚生労働省の調査では、45歳以上で勤続20年以上の定年退職者のうち、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の退職給付額は平均1896万円でした。事例の1800万円は平均的な水準であることが分かります。
2400万円にかかる税金は61万円になる
課税される退職所得345万円には、所得税と住民税がかかります。所得税は、速算表で税率20%・控除額42万7500円の区分にあたり、復興特別所得税を加えた102.1%を掛けます。
・345万円×20%-42万7500円=26万2500円
・26万2500円×102.1%=26万8012円(所得税および復興特別所得税)
住民税は、市町村民税6%と道府県民税4%の合計10%です。
・345万円×6%=20万7000円(市町村民税)
・345万円×4%=13万8000円(道府県民税)
・26万8012円+34万5000円=61万3012円(税金の合計)
「全額非課税だから2400万円まるまる入る」と思いきや、61万3012円が税金として差し引かれることが分かりました。
定年まで働いた場合と、手取りはどれだけ違うか
一方、早期退職せずに定年まで働けば勤続38年になり、控除は2060万円に増えます。
・800万円+70万円×(38年-20年)=2060万円(勤続38年の控除額)
退職金1800万円はこの枠に収まるため、課税される退職所得はゼロで、税金はかかりません。手取りは次のとおりです。
・2400万円-61万3012円=2338万6988円(いま辞めた場合)
・2338万6988円-1800万円=538万6988円(定年まで働いた場合との差)
退職金だけを見れば、いま辞めるほうが538万円ほど多く残る計算です。ただし、定年まで働けば5年分の給与が別に入ります。再就職の見通しなどによっても答えは変わりますが、退職金の額だけで早期退職を決めるのは早計と言えます。
なお、退職金を受け取る際に気を付けるポイントとして、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を出しておきましょう。出していないと控除を使わずに計算され、支払額の20.42%が源泉徴収されます。
・2400万円×20.42%=490万800円(申告書を出さなかった場合)
確定申告で精算はできますが、退職時の手取り額が大きく変わります。
まとめ
早期退職の割り増し分も、退職金と合わせて退職所得の扱いとなります。勤続33年で退職金2400万円なら、控除額1710万円を引いた345万円に税金がかかり、所得税と住民税で61万3012円が引かれます。
定年まで働けば勤続38年で控除額が2060万円になり、退職金1800万円に税金はかかりません。
手取りの差は538万円ほどですが、定年まで勤務した場合の5年分の給与をどう見るかで答えは変わるのではないでしょうか。早期退職の応募を決める前に、勤続年数と支給額を勤務先に確かめておくとよいでしょう。
出典
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
総務省 平成25年1月1日以降の退職所得に対する住民税の特別徴収について
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査 結果の概況
執筆者 : 高橋祐太
2級ファイナンシャルプランナー技能士
