更新日: 2021.03.26 その他老後

知っておきたいリタイア後の資産活用の注意点

知っておきたいリタイア後の資産活用の注意点
若い世代において資産形成の必要を感じている方が増えてきているところですが、重要なことは『リタイア後、それまでに蓄えた資産をどのように活用していくか』ということです。資産形成時よりも活用していくときの方が手間もかかりますし、老齢化が進むことで懸念される問題も出てきています。
 
今回はリタイア後の資産を活用する際、今問題視されている課題について述べていきたいと思います。
 
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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資産形成は活用することを前提に計画する

最近は「老後にいくら必要?」というテーマでもちきりです。人生100年時代を生き抜くにはリタイア時点でいくら必要かという視点での話ですが、ここで注意しないといけないことがあります。それは老後に必要な額をリタイア時点で用意しておかなければいけないと思い込んでしまうことです。
 
例えばリタイア後に4,000万円は必要だと思った場合、リタイア時が60歳であれば、その時に用意しなければならないと思う方がほとんどではないでしょうか。
 
しかしこれはあくまで「リタイア後に資産運用をしなかった場合の考え方」です。リタイア後も運用を続けることを前提とするならば、リタイア時に用意すべきお金の額はもっと少なくてもよいわけです。
 
例えば、60歳でリタイアし、その後75歳まではそれまで貯めた資産を3%で運用しながら、毎年、残高の4%を引き出すとしましょう。
 
この場合、計算すると上述のようにリタイア後の生活に4,000万円必要なのであれば、リタイア時に必要な金額は2,800万円となります。リタイアするまでに4,000万円用意するのと2,800万円用意するのとでは、現役時の資産形成の方法にかなりの違いが出てくるのがお分かりいただけると思います。
 

資産活用には思った以上に手間がかかる

資産運用(形成)の手間については、それが現役期間であろうとリタイア後であろうと変わることはありません。しかし、リタイア後の資産活用には『引き出す』という行為が発生します。これが意外と手間がかかる作業になるのです。
 
「①いつ、②どれだけの額を、③どうやって引き出すか」、「公的年金控除や、もし働くならば勤労所得などの課税所得とのバランスをどうするか」など、自分で考えなければならないことが多くなってきます。もちろん、金融機関のサービスを活用することもできますが、全てをカバーすることは難しい状況です。
 

本人にかかる負担と高齢化社会における問題

いくら金融機関のサポートを受けるとしても、それには限界があります。最終的に判断し、行動するのは本人ですが、自分で出来ることが加齢により少なくなっていく現状を見逃してはいけません。
 
つまり、本人の判断能力の低下、そして認知能力の低下です。2017年度の高齢者白書によると、2012年は認知症患者数が約460万人、高齢者人口の15%という割合だったものが2025年には5人に1人、20%が認知症になるという推計もあります。
 
つまり、資産形成で築いた財産を自分で使おうにも、判断力が低下してしまうため困難になってしまうのです。きちんと自分の思いを託せる家族がいればいいのですが、それが出来ない場合は成年後見人制度を利用するなど、自分自身を過信することなくリタイア後の資産活用について考えておくこと必要があるといえます。
 
現在、個人の保有する金融資産は1,800兆円と言われていますが、その6割以上を占めているのが60歳以上の高齢者です。現役世代の方がこれから資産形成をしていくことの必要性についてはもちろん、これからの重要な課題ですが、それ以上に現在の高齢者の資産をどう守っていくかということが、これから迎える超高齢化社会および少子化社会における最大の課題といえます。
 
出典 内閣府「平成29年版高齢社会白書」
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

 

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