更新日: 2019.12.01 定年・退職
定年後も働かないとやっぱり厳しいの?60歳以降も働く家計と働かない家計をシミュレーションしてみた
今回は、実際に60歳の定年後に働かなかった場合と、65歳もしくは70歳まで働いた場合で、どれくらい家計が変わってくるのかを試算することで、定年後の生活資金について考えてみたいと思います。
※家計を試算する対象の世帯は、夫(会社員)が平均的収入(平均標準報酬[賞与含む月額換算]42.8 万円)で 40 年間就業し、妻がその期間すべて専業主婦であった世帯とします。また、60歳時の預貯金額が1000万円、受給年金額の月額は、世帯が年金を受け取り始める場合の夫婦2人分の厚生年金(老齢基礎年金を含む)の標準的な年金額(22万1504円)とします。
執筆者:中田真(なかだ まこと)
CFP(R)認定者、終活アドバイザー
中田FP事務所 代表
NPO法人ら・し・さ 正会員
株式会社ユーキャン ファイナンシャルプランナー(FP)講座 講師
給与明細は「手取り額しか見ない」普通のサラリーマンだったが、お金の知識のなさに漠然とした不安を感じたことから、CFP(R)資格を取得。
現在、終活・介護・高齢期の生活資金の準備や使い方のテーマを中心に、個別相談、セミナー講師、執筆などで活動中。
https://nakada-fp.com/
60歳の定年後に働かなかった場合
60歳の定年後に働かなかった場合の主な収入源は「年金」となりますが、60歳から年金を受給した場合、年金受給額が30%減額されることになります。
【収入】
受給年金額の月額: 22万1504円×(100% - 30%)= 15万5053円 ※小数第1位を四捨五入
【支出】
支出の月額は、60歳から64歳の2人以上の世帯で30万4601円となっています。
(総務省統計局 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表より)
上記より、収支は、毎月約15万円、毎年180万円の赤字となりますので、60歳から6年弱が経過したところで、預貯金1000万円を使ってしまう計算となり、以降もマイナス収支となります。
65歳まで月額20万円の手取り収入で働いた場合
65歳まで月額20万円の手取り収入で働き、65歳から年金を受給するケースを考えてみます。
【収入】
65歳まで: 20万円(手取り収入)
65歳から: 受給年金額の月額: 22万1504円(増減額なし)
【支出】
支出の月額:
60歳から64歳の2人以上の世帯で30万4601円
65歳から69歳の2人以上の世帯で28万1053円
(総務省統計局 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表より)
上記より、収支は、60歳から64歳では、毎月約10万円、毎年120万円の赤字、65歳から69歳では、毎月約6万円、毎年72万円の赤字となりますので、60歳から11年弱が経過したところで、預貯金1000万円を使ってしまう計算となり、以降もマイナス収支となります。
70歳まで月額20万円の手取り収入で働いた場合
70歳まで月額20万円の手取り収入で働き、70歳から年金を受給するケースを考えてみます。
【収入】
70歳まで: 20万円(手取り収入)
70歳から: 受給年金額の月額: 31万4536円(42%増額)※小数第1位を四捨五入
【支出】
支出の月額:
60歳から64歳の2人以上の世帯で30万4601円
65歳から69歳の2人以上の世帯で28万1053円
70歳から74歳の2人以上の世帯で25万8425円
(総務省統計局 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表より)
上記より、収支は、65歳まで月額20万円の手取り収入で働いた場合と同様に、69歳までは赤字となりますが、70歳の年金受給開始以降は、毎月約5.6万円の黒字となるため、預貯金1000万円をすべて使わないで済む計算になります。
まとめ
試算では、70歳まで月額20万円の手取り収入で働いた場合、60歳の時点で老後資金が1000万円あれば問題ないという結果になりました。
ただし、国民年金のみ受給の世帯や、60歳以降も働き続け、厚生年金保険に加入した場合、夫婦から単身になった場合など、さまざまな要因で家計の試算結果は異なります。
家計の試算結果をふまえ、支出金額を低くおさえることができれば、結果的に必要な老後の生活資金も少なくなりますので、60歳以降の収入を確保するだけではなく、計画的に家計や支出の見直し・合理化を進めることも合わせて考えたいですね。
参照・出典
総務省統計局 「家計調査2018年 世帯主の年齢階級別 1世帯当たり1か月間の収入と支出(二人以上の世帯)」
厚生労働省 報道発表資料「平成31年度の年金額改定について」
執筆者:中田真
CFP(R)認定者、終活アドバイザー