60歳以降も働き続けて厚生年金に加入していれば、もらえる年金は増えるの?
配信日: 2018.12.13 更新日: 2024.09.26
執筆者:蟹山淳子(かにやま・じゅんこ)
CFP(R)認定者
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。
老齢厚生年金の受給額はどう変わる?
結論から言うと、年金保険料を納めれば、貰える年金額に反映されます。老齢厚生年金の受給額は、平均標準報酬額と被保険者月数をもとに計算しますが、厚生年金の加入年数に上限はないので、働き方によって差はあるものの、60歳以降も保険料を納めれば受給額が増えることになります。
既に年金を受け取りながら、仕事をしている人にとっては、いつ受給額の再計算が行われるのかが気になるところですね。残念ながら、毎月、再計算されるわけではありません。受給額の再計算が行われて受給額が変わるのは、仕事を辞めた後です。
ただし、働き続けていても65歳、または70歳になったときには、再計算が行われます。
気を付けたいのは、遺族厚生年金を受け取っている人です。自分の厚生年金の受給額が遺族年金の受給額を超えていないのであれば、残念ながら、加入月数が増えることで厚生年金受給額が増えても、実際に貰える年金額が増えることはありません。
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老齢基礎年金の受給額も増える?
さて、老齢基礎年金の受給額が増えるかどうかは少々複雑です。そもそも、60歳までは、厚生年金に加入すれば、自動的に国民年金に加入することになっていましたが、国民年金に加入できるのは20歳以上60才未満なので、60歳以降は国民年金に加入することはできません。
60歳になったとき、20歳から40年間(480か月)ずっと年金保険料を納付し続けてきた人は、老齢基礎年金の満額である年77万9300円(平成30年度)を、65歳から受け取ることができます。そして、国民年金の加入月数は480月で打ち止めとなり、それ以降に増えることはありません。
しかし、例えば大学生だったときには年金保険料を納めていなかった人や、転職の際に加入しなかった期間のある人など、60歳時点で加入期間が40年に達していない人も多く存在します。
保険料を納付していない期間があっても、保険料納付済機関や免除期間に応じて年金の受給額が計算されますが、満額より少なくなります。受給額を満額に近づけるためには、任意で60歳以降も国民年金に加入し続ける任意加入制度がありますが、厚生年金に加入している人は対象となりません。
では、国民年金の加入期間が40年に達していない人が、厚生年金保険料を納め続けていても、老齢基礎年金の受給額は増やすことはできないのでしょうか。
実際は、60歳以降に厚生年金に加入していれば、老齢基礎年金の受給額を満額まで近づけることができます。厚生年金の加入期間のうち、20歳前の期間と60歳以降の期間は、国民年金の加入期間ではありませんが、実際には、この期間も加えて計算した年金額と、老齢基礎年金の受給額の差額を、経過的加算額として受け取ることができます。
つまり、60歳以降に厚生年金に加入していれば、国民年金に任意加入するのと同じ効果が得られます。
ただし、任意加入の制度と同じように、加入期間が40年を達したら、加入月数を増やすことはできません。
なお、遺族年金を受け取っている人も、基礎年金は自分の年金です。加入年数が40年に達するまでは、厚生年金保険料を納めることで受け取れる年金額が増えていきます。
まとめ
「人生100年時代」と言われるようになりました。
年金保険料を払っても、元が取れないかもしれないと心配する人もいますが、100歳まで長生きする可能性を考えると、生きている限り受け取ることができる公的年金は、リタイア後のマネープランの強い味方です。元気で働ける間は働きながら、老後のマネープランを充実させたいものです。
※2019/10/31 内容を一部修正させていただきました。
Text:蟹山 淳子(かにやま・じゅんこ)
CFP(R)認定者