退職金の受け取りは〈一括〉と〈分割〉どちらがお得? 課税の仕組みについて解説

配信日: 2020.04.16

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退職金の受け取りは〈一括〉と〈分割〉どちらがお得? 課税の仕組みについて解説
人生100年となり、老後2000万円が不足するといわれると、老後の生活資金がどうしても気にかかります。
 
老後の生活資金を支えるものとしては、公的年金と退職金が主になります。公的年金も退職金も額面どおりに受け取ることはできません。これらには税金がかかるのです。
 
課税の仕組みを知り、ご自身の状況を加味して受け取れば、より安心できる老後生活が送れるのではないでしょうか。
 
手塚英雄

執筆者:手塚英雄(てづか ひでお)

有限会社テヅカプラニング 代表
CFP(R)認定者 1級ファイナンシャルプランニング技能士 証券外務員

CFP(R)認定者 1級ファイナンシャルプランニング技能士
お金に振り回されない生活設計を目指している
可処分所得の最大化に拘れば人生に満足がない
人生を明るく豊かに過ごすためにお金を用いたい
他のFPとは一味異なる論点を持つ
http://www.fp-tezuka.com/

退職金の性格

そもそも、定年退職時に受け取る退職金とはどんなものでしょうか。これまで勤めていた会社を辞めると、まとまったお金がもらえるのはなぜでしょうか。これには大きく2つの性格があります。
 
1つは「功労報奨」としての報酬です。長く会社で頑張ってくれたので、そのお礼の意味を込めた報酬です。よって円満退職にはそれなりの報酬が期待できますが、自己都合での退職は減額される可能性があります。
 
長年真面目に勤めていても、仮に大きなトラブルを起こして辞めることになった場合、退職金の金額に影響があるかもしれません。このようなことは、主に中小企業に見られます。
 
もう1つは「賃金後払い」としての報酬です。本来給与や賞与で払うべき賃金をその時点で払わず、社員を会社にとどめる意味と社員の退職後の生活資金のために、会社が預かっておく意味があります。
 
このような場合は、一般に退職金規定に明記され、勤続年数や役職により金額が異なります。このようなことは、比較的大企業に見られます。
 
退職金制度を設けるか否かは、会社の判断に委ねられます。優秀な人材を集めるために設けた制度です。一般に大企業に人材が集まるのはブランド力、安定性、手厚い福利厚生制度ともいわれています。退職金制度はその福利厚生制度の1つです。

退職金は一括か分割か

一般に定年退職金は、一括か分割で受け取ります。一部を一括で、残りを分割で受け取ることができる場合もあります。受け取り方によって課税方法が異なりますので、確認しておきましょう。
 
一括で受け取れば退職所得になりますので、
退職所得(所得税が課税される金額) = (退職収入 - 退職所得控除額)×1/2
 
退職所得控除額
・勤続年数20年以下 40万円×勤続年数(80万円未満は80万円)
・勤続年数20年超  800万円+(勤続年数-20年)×70万円
 
仮に勤続年数が37年の場合、
800万円+(37年-20年)×70万円=1990万円
となりますので、一括で受け取れば1990万円までは無税です。
 
分割で受け取る場合は雑所得になります。公的年金等の控除額が適用されますが、他の所得と合わせて課税されます。よって、退職所得控除額までは一括で受け取るほうが課税上は有利です。
 
しかし、例えば一括で2000万円程のお金を手にすると、長年辛抱を重ね頑張って得た大金を自由に使いたい、と考えてしまう人もいるかもしれません。
 
もし、自動車購入資金に500万円充てれば、高級車が買えるでしょう。ただしその後、高級車は維持管理費が発生しますので、それらを含めて購入を検討する必要があります。
 
住宅リフォームや夫婦旅行など、「自由にお金を使いたい」という思いが先行してどんどん消費してしまうと、あっという間になくなってしまいます。また、金融機関にすすめられるままに無理な投資を始めて、元本が減少してしまうという可能性も考えられます。
 
このような心配のある方は、多少税金が発生したとしても、退職金を分割で受け取ることでこれまでのライフスタイルを大きく乱すことはないかもしれません。
 
退職金は大切な老後資金ですから、ご自身の性格や状況を理解し、生きがい・趣味・生活費等の支出計画を立てておくことが重要です。ご自身にはどのような受け取り方が良いのか、ライフプランを立てつつ検討することをおすすめします。
 
執筆者:手塚英雄
有限会社テヅカプラニング 代表
CFP(R)認定者 1級ファイナンシャルプランニング技能士 証券外務員


 

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