リバースモーゲージを行う際の注意点とは? デメリットや危険性について解説
配信日: 2020.08.02
メリットだけを見て利用すると、後悔することにもなりかねません。そうならないように、利用する前にはリバースモーゲージの落とし穴や危険性についてしっかり理解しておきましょう。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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目次
リバースモーゲージってなに?
リバースモーゲージとは、自宅を担保にして老後資金などの生活資金を融資してもらい、自分が死んだ後、担保としていた不動産を処分して借入金を返済するという、主に老後の生活資金の調達手段の1つです。
各都道府県(自治体)の社会福祉協議会や金融機関などが取り扱っていますが、取り扱い社会福祉協議会や金融機関によって、資金使途や借入額のほか、対象となる担保物件が異なりますので、利用する際にはどの取扱機関を利用するか、比較して検討することが大切です。
民間のリバースモーゲージについては、資金使途に制限はありません。例えば、老人ホームへの入居資金に充てたり、介護のためのリフォーム資金に充てたりと、ご自身が考えているライフプランに沿った使い方ができます。
また、融資金額の受け取りについても、一括で受け取ることもできれば、毎月定額の年金形式で受け取ることも可能です。このように柔軟性の面で使い勝手が良いことが、リバースモーゲージの特徴といえるでしょう。
リバースモーゲージの特徴
リバースモーゲージの特徴をまとめると以下のようになります。
1.不動産を担保とした借入契約で、返済のタイミングは契約者の死亡後
2.毎月の返済額は利息のみ
3.契約者の年齢が高齢である(おおむね50歳以上)
■住宅金融支援機構の【リ・バース60】の活用
金融機関が取り扱うリバースモーゲージの商品には、金融機関独自のものと合わせて、住宅金融支援機構の【リ・バース60】を取り扱っているところもあります。
この【リ・バース60】は満60歳上の方が利用できる住宅ローンで、返済方法はリバースモーゲージと同様、生きている間に支払うのは利息のみ。元金については、亡くなった際に相続人が一括で支払うか、自宅を売却して返済に充てることになっています。
リバースモーゲージとの大きな違いは、死亡時に担保物件を売却した後に債務が残った場合のその債務の取り扱いです。通常のリバースモーゲージであれば、保証会社が金融機関に支払い、保証会社は契約者(本人)の相続人へその金額を請求します。
しかし【リ・バース60】には、債務を相続人に請求しないノンリコース型が用意されており、相続人に対して迷惑をかけたくないという方に向いている商品です。
また、通常のリバースモーゲージであれば、利用できるエリアが首都圏などに限定されていますが、【リ・バース60】の場合は自宅のある地域エリアに制限がないばかりか、マンションでも利用できます。
リバースモーゲージはなぜ注意しないといけないの?
ここでリバースモーゲージのデメリット、および利用する際のリスクについて説明します。
■毎月の返済額が変わったり、借入可能額が減少したりすることがある
リバースモーゲージの場合、適用される金利は変動金利となっています。したがって金利が大幅に上昇する局面においては、毎月の返済額が増加したり、借入可能額が減少したりする可能性があります。
■担保となる不動産の評価額が下がることがある
担保となる不動産の評価は、定期的に見直されます。その際に評価額が下がった場合、融資金額が減額される危険性があります。
■同居の配偶者に契約が引き継げないことがある
もちろんすべてのリバースモーゲージの契約がそうであるわけではありませんが、配偶者と同居している場合において、契約者本人が亡くなり、配偶者に契約が引き継げない場合、配偶者は家を出ていかなければなりません。
リバースモーゲージはどんな人に向いている?
<家を売ったお金で生活したいが自宅に住み続けたい人>
最終的に自宅を売却することになりますが、死ぬまでは自分の家に住むことができますし、その条件のもとで資金を借りることができます。
<将来自宅に住んでくれる人がいない、または相続人に迷惑をかけたくない人>
子供がいない場合、所有している不動産を自分の死後どうするかについては悩みの種です。また、子供がいたとしてもすでに自分たちで家を建てている場合などは、戻ってくる可能性は薄いでしょう。
そのような場合、自分の死後に自宅を処分する手間をかけたくないと思っていらっしゃる方は多いと思います。そのような方はリバースモーゲージを検討してみてもいいでしょう。
<資産価値の高い家に住んでおり、年金以外の老後資金を必要としている人>
資産価値が高ければ、担保となる不動産の評価額も高くなります。評価額が高いということは融資限度額も多くなるということですので、リバースモーゲージの仕組みを利用し、年金以外の資金を得ることも可能です。
ただし、自分の死後その自宅に住む人がいない、もしくは死後に自宅を売却することが可能な人に限られますので注意してください。
リバースモーゲージを利用する際の注意点とは?
■長生きリスクを考慮する必要がある
リバースモーゲージでは、契約者本人が亡くなった後に担保となっている自宅を売却することで借入額を返済する契約です。
しかし、最近は平均寿命が延びていることから、金融機関の融資総額が物件の評価額を超えてしまう可能性があります。したがって、最近ではリバースモーゲージの契約において契約期間を定める金融機関も増えてきました。
ということは、契約期間を超えて借入を行うことはできませんので、契約期間が終了した場合、契約者本人がまだ生きていたとしても、自宅を明け渡す必要があります。
■リバースモーゲージにおける不動産の評価額は売買価格よりも低く設定される
リバースモーゲージによる融資限度額については、金融機関によっても異なりますが、だいたい対象物件の評価額の40~70%となっています。ほとんどの金融機関が50%前後の金額を掲示しているようです。となると、普通に売却したほうがより多くのお金を得ることができます。
もちろん、売却することによって自宅を失いたくないからこそ、リバースモーゲージを利用するという考えであればいいのですが、実際の売却額と金融機関が掲示した融資限度額を比較して最終的に決めることをおすすめします。
あまりに差がある場合は、自分にとって本当にリバースモーゲージを利用することが正しいのか、じっくり考えてみましょう。
■法定相続人(子供)の事前承諾が必要
リバースモーゲージを利用することで、契約者の死亡後は自宅を売却することになります。
つまり、自宅を子供が相続することができなくなることから、契約においては法定相続人(子供)の事前承諾が必要となっています。リバースモーゲージを利用する際は、必ず事前に相続人(子供)に相談しておくようにしてください。
他にもリバースモーゲージは対象となるエリアが限られており、マンションなどは基本的に利用できないことになっています。また、子供と同居している場合も利用できません。
まとめ
リバースモーゲージには、メリットもあればデメリットもあります。特に長生きリスクについては今後深刻な問題となっていくことが考えられますので、契約の際には契約期間についてもきちんと確認しておくことが大切です。
また、担保となる不動産の評価については、金融機関で異なります。実際に利用するのであれば複数の金融機関の評価額を比較し、最終的に決めるようにしましょう。
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員