更新日: 2019.01.10 その他年金
年金の「繰下げ請求」、遅く受け取るほど金額が増える!!
ただ時期を早めて60歳から受け取ることもできますし、逆に65歳では受け取らずに、70歳から受け取ることもできます。
早期退職などによりすぐに年金が必要となり、60歳から受け取る人もいますが、平均寿命も伸び、90歳を超える長寿社会が現実になろうとしている今日、受給時期を遅らせることも、大きな選択肢になりつつあります。
監修:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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繰下げ受給も繰上げ受給も可能
年金を通常より早く受け取ることを「繰上げ受給」といいます。65歳から受け取る年金額に比べ減額されます。減額された受給額が生涯続きます。
逆に65歳では受け取らずに70歳近くになってから受け取ることを「繰下げ受給」といいます。65歳時点の受取額より増額されます。
65歳時点で受け取る金額を100とすると、60歳から受け取る繰上げ受給をすると70となり、30%減になります。逆に70歳から受け取ると142となり、42%増になります。例えば、65歳で100万円の年金を受け取れる人が、60歳から受け取ると年金額は70万円に減額、70歳から受け取ると142万円に増額されます。
どちらも受給額は1ヵ月刻みで細かく増減率が決められています。とくに60歳から受給するなどの繰上げ受給を選択する際は、通常の受給より低い金額が生涯続きます。
さらに障害年金や寡婦年金が受給できない、国民年金への任意加入ができない、などのデメリットがありますので、慎重な判断が求められます。一度繰上げ受給を選択すると、途中で変更することはできません。
ただし受給開始の時期は、満60歳から満70歳までの10年間です。60歳より前に繰り上げて受け取ることはできません。
繰下げ受給の場合は、70歳を過ぎてからも手続きはできますが、70歳時点と受け取る金額はかわりません。70歳から申請までの期間が全くムダになります。決められた70歳までの期間に受給の手続きをお勧めします。
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繰下げ受給には金額増のメリット
年金の受給開始時期が以前に比べ遅くなっているため、企業の定年退職の年齢や、契約社員・嘱託などでの再雇用制度もかなり整備されてきました。
また独立をして個人事業主となり、これまでの仕事を請け負って継続できる環境も出来つつあります。こうした制度を可能なかぎり活用すれば、実質的な退職年齢を遅らせることも可能です。
これにより年金の受給開始時期も遅らせることができます。会社経営者など65歳時点ですでに高収入を得ている人も、当然ここに含まれます。
実際に、65歳からを超えて年金を受け取るようにすれば、65歳からの通常受給に比べ年金額が大きく増えるため、老後の生活にゆとりが生まれます。
年金額は1年遅らせた66歳受給で8・4%、5年遅らせた70歳受給では42%増額されます。
とくに最近では、平均寿命も大きく伸びており、医療や介護など老後の必要経費も増大傾向にあります。年金額の増加による恩恵は大きいはずです。
受取総額でみても、70歳受給を選択した場合、通常の65歳受給と比較すると、81歳10ヵ月で受取総額が同額となります。この年齢以上生きていれば、受取総額でも上回る計算になります。
老齢年金の繰下げを希望する場合は、年金事務所などへ申し出る必要があります。繰下げの申し出をする前に、老齢年金の手続きをしてしまうと、繰下げではなく通常の65歳からの年金受給が開始されます。一度受給の手続きをすると、後から申し出ても変更は出来ませんので注意しましょう。
繰下げ受給の申請方法は
65歳になる前に、ハガキによる年金請求書が届く人と、書類による年金請求書が届く人がいます。前者は「特別支給の厚生年金」をすでに受け取っている人が対象で、後者は65歳から初めて老齢年金を受け取る人です。
ハガキによる年金請求書(正式には「国民年金・厚生年金保険給付裁定請求書」という)が届いた場合、提出の仕方に注意が必要です。65歳からの通常受給を希望する場合は、繰下げ部分のところは何も記入せずに返送します。
すると65歳受給が、そのまま開始されます。老齢基礎年金だけを繰り下げたい場合は「老齢基礎年金のみ繰下げ希望」にマルと付けて返送します。老齢厚生年金だけを繰り下げたい場合は「老齢厚生年金のみ繰下げ希望」にマルをつけて返送します。
指定した年金だけが、繰下げ受給の対象になります。原則65歳の誕生日の月末までに返送します。返信用のハガキに、必ず切手を貼ることも忘れずにしましょう。
老齢基礎年金、老齢厚生年金双方とも繰下げを希望する場合には、このハガキは返送しません。このハガキを提出しないことで、繰下げ請求の意志表示となり、年金の支払いが停止されます。
もしハガキを返送してしまうと、年金受給が開始の手続きをしたとみなされますので注意が必要です。70歳までの受け取り始めたい時期に、年金事務所に出向き手続きをして年金の受給が開始になります。
必ず70歳までに手続きをすることをお勧めします。
ハガキではなく書類が届いた人は、65歳になる前後に年金の受給手続きが必要な人です。受給のために必要な添付書類を揃え、年金事務所または市区町村の役場へ出向き、手続きをしてください。繰下げ受給を希望する場合の手続きもここで行います。
Text:黒木 達也(くろき たつや)
経済ジャーナリスト。大手新聞社出版局勤務を経て現職