2018.11.20 年金

「5年前に離婚したんですが、元夫の年金を半分もらえるんですよね?」熟年離婚で多い思い込みとは

相談者-「元夫の年金分割の手続きをしたいのですけど」
 
「離婚協議書は作成されましたか?」
 
相談者-「子供も社会人で養育費などないので、協議書は作っていません。話し合いで財産を分けました。そろそろ、元夫の年金支給が始まりそうなので手続きが必要ですよね」
 
「離婚されたのは、いつですか?」
 
相談者-「5年前です」
 
「えっ…残念ですが…もう年金分割の手続きはできません」
 

【年金分割制度の概要】

以前は離婚した場合、妻は自分の年金しか受け取れませんでした。専業主婦の場合は老齢基礎年金のみとなり、経済的に厳しい老後を迎えることになりました。
 
年金分割は、この問題を解消するための制度です。
 

(1)合意分割-婚姻期間中の厚生年金の保険料の納付記録を、夫婦の合意または裁判により分割。

夫が納付してきた厚生年金保険料の一部(上限1/2)を妻が納付したものとする。
      

(2)3号分割-平成20年4月1日以後の婚姻期間中、妻が第3号被保険者(専業主婦など)の夫が納付してきた厚生年金の保険料納付記録を、強制的に1/2に分割する。

2つとも、納付した年金保険料を「夫婦が共同して負担したものとみなす」という考え方の制度です。
 
夫の年金保険の受給権を分割するのではなく、納付記録を分割するので、元妻は自分の年金として亡くなるまで受給できるようになります。
 
「合意分割」は、妻が会社に勤めていて第2号被保険者であっても、夫の納付記録の方が多い場合は請求できます。「3号分割」は、専業主婦など第3号被保険者のみが請求できます。
 
熟年離婚では、「合意分割」と「3号分割」両方が含まれることも多いですが、その場合は、「3号分割」の期間を含む婚姻期間全体について、合意分割するのが通常です。
 

 

【いくら年金が増えるのか】

年金事務所に請求すれば、「年金分割のための情報通知書」を交付してくれますので、離婚協議の前に確認しましょう。請求時に50歳以上で受給資格期間を満たしていると、分割後の老齢厚生年金の見込み額まで教えてもらえます。
 
例)
婚姻期間25年で平均月収36万円(ボーナス年3ヶ月)の夫の年金を、専業主婦だった妻に1/2で分割した場合、年額約38万円が元妻の年金に加算されます。
年金を25年間受け取った場合、トータル950万円(38万円×25年)の加算となります。
 

【分割までの手順】

(1)年金分割のための情報通知書の請求

 

(2)夫婦での話し合い(合意)

 *合意できない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立て、分割割合が決定されます。
 *3号分割のみならば合意不要なので、離婚から2年以内に妻の一方的な請求が可能です。
 

(3)分割合意の書面を「公正証書」または「公証人の認証を受けた私署証書」で作成

 *家庭裁判所で案分割合を決定した場合は、調停証書、審判書などが作成される。
 

(4)離婚から2年以内に、年金事務所に(3)の書類を添えて年金分割請求

 

(5)「標準報酬改定通知書」の交付

 

【熟年離婚の注意点】

熟年離婚の場合、子供に嫌な思いをさせたくないなどの理由で、離婚時期を「子供が成人してから」「就職してから」とすることが多くなります。この場合、養育費などはありませんので、財産額が多くない家庭などでは、正式な離婚協議書を作成しないケースがあります。
 
専門家に相談すれば、年金分割のアドバイスも受けられますが、よく調べないまま夫婦の話し合いで財産分割してしまうと、冒頭の相談者のような状況になってしまいます。
 
ちなみに、財産分与と年金分割の請求権は2年、慰謝料は3年間で消滅します。年金分割は公正証書の作成など、手続きも面倒です。長引きそうなら、専門家を頼ることをためらってはいけません。
 
Text:宿輪 德幸(しゅくわ のりゆき)
AFP認定者、行政書士

宿輪 德幸

Text:宿輪 德幸(しゅくわ のりゆき)

AFP認定者、行政書士

宅地建物取引士試験合格者、損害保険代理店特級資格、自動車整備士3級
相続専門の行政書士、FP事務所です。書類の作成だけでなく、FPの知識を生かしトータルなアドバイスをご提供。特に資産活用、相続トラブル予防のため積極的に「民事信託(家族信託)」を取り扱い、長崎県では先駆的存在となっている。
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