保険料を40年納めていないのに老齢基礎年金が満額受け取れる人もいるって本当?どうして?
配信日: 2020.02.26
しかし、「私は40年納めて満額を受け取れたのに、私より少ない納付期間で満額をもらっている人がいる」ということがあります。納付が40年より少なくて、満額の老齢基礎年金を受けている場合とはどういう場合でしょうか。
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
40年の納付が必要なのは1941年4月2日以降生まれの人
老齢基礎年金の計算式は【図表1】のとおりです。20歳から60歳までの40年間は原則として国民年金に加入義務があります。
20歳到達月から60歳到達月の前月までの40年(480月)間で、第1号被保険者となって国民年金保険料を納めた期間、第2号被保険者期間(厚生年金加入期間)、第2号被保険者の被扶養配偶者である第3号被保険者期間などは、(1)の保険料納付済期間です。
保険料納付済期間が合計480月あれば、計算式にある分数の分母も分子も480、つまり480分の480で1になり、満額(2019年度:78万100円)で老齢基礎年金を受け取ることができます。
国民年金保険料の免除期間や猶予期間、未納期間があると、分子は480でなくなるため、満額より少なくなる計算です。
しかし、480月の保険料納付済期間で満額を受け取れる人は、1941年4月2日以降生まれの人です。それより前の生年月日の人については計算方法が異なります。
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生年月日に応じた国民年金加入可能期間
1941年4月1日以前生まれの人の場合、【図表1】の計算式の分母は480月ではなく、【図表2】のとおり、生年月日に応じた加入可能月数です。そして、分子についても最大でそれぞれの加入可能月数までです。
このようになっているのは、1961年4月に国民年金制度が始まったことに関係します。1941年4月1日以前生まれの人は、1961年4月時点ですでに20歳に以上になっていますので、20歳から60歳になるまでの40年間国民年金に加入して、40年分の保険料納付済期間を作ることができません。
したがって、生年月日に応じて、国民年金に加入できる期間が設けられ、分母となる加入期間も480月とは異なった月数となっています。
1939年4月2日生まれの人であれば、【図表1】の計算式の分母は456月となり、また、分子も456月が最大となります。生年月日ごとに加入可能月数分の保険料納付済期間があれば、満額で老齢基礎年金が受けられます。
1941年4月2日以降生まれの人は78万100円の年金を、480月の納付で受給できますので、1月の納付済期間につき年間約1625円(78万100円×1/480)の年金が増える計算となります。
一方、1941年4月1日生まれの人は分数が異なるため、単価はその1625円より多くもなります。その結果、現在65歳の人と80歳の人では保険料納付済期間の合計月数がたとえまったく同じであったとしても、受け取る年金額は異なることにもなるでしょう。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー