こっそり学ぶ遺族年金(2) 救済措置を活用しよう

配信日: 2020.07.13 更新日: 2020.07.21

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こっそり学ぶ遺族年金(2) 救済措置を活用しよう
一家の働き手が亡くなった後、配偶者や子供たちの生活を支えるのが遺族年金です。遺族年金についての知識は、誰もがあらかじめ持っておきたいものです。
 
「こっそり学ぶ遺族年金」の第2回のテーマは、「救済措置を活用しよう」です。
和田隆

執筆者:和田隆(わだ たかし)

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。

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保険料納付要件が問われる場合

前回、第1回の「基礎知識をざっくりと」の内容を思い起こしてください。亡くなった人が次の要件に当てはまる場合は、保険料納付要件が問われるということでした。
 
(1)国民年金または厚生年金保険の被保険者。
(2)国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の人。ただし、日本国内に住所を有していること。
(3)厚生年金保険の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に亡くなった人。
 
保険料納付要件は、次のどちらかに当てはまる必要がありました。
 
(1)亡くなった日の前日において、亡くなった日が含まれる月の前々月までの被保険者期間に、国民年金の保険料納付済期間および免除期間、厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間の合計が3分の2以上あること。
(2)2026年3月末日までに亡くなった場合は、亡くなった人が65歳未満であれば、亡くなった日の前日において、亡くなった日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと。
 

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「直近1年」の特例措置は敷居が低い

法律的には、上記の(1)が基本原則、(2)が特例措置となります。(2)の特例措置は時限立法ですが、実は、1986年に現行の基礎年金制度が発足して以来、ほぼ10年ごとに更新しながらずっと続けてきた措置です。(1)の基本原則にある「3分の2」の要件が人によっては厳しすぎる側面もあることに対応した、いわば救済措置です。
 
これを活用しない手はありません。いざというときのためにご本人の納付状況を調べ、遺族年金を受給できるように対策を採るのです。この場合は、(1)の「3分の2」要件ではなく、敷居の低い(2)の「直近1年」要件の達成を図ることになります。
 

納付または免除申請をする

幸い、現行の国民年金制度では、国民年金の保険料は納付期限から2年以内(厳密には、曜日や祝日の関係で数日ずれることがあります)であれば、納付または免除申請ができることになっています。亡くなる日の前日までに、まとめて納付または免除申請をし、「直近1年」要件を達成しておけば良いわけです。
 
仮に国民年金保険料を2年間分まとめて納付しても40万円弱です。これで、遺族年金が確保されます。もちろん、国民年金保険料の納付前に、遺族年金がいつまで、いくら受給できるのか、という点はしっかり把握しておかなければなりませんが……。
 

「前日において」という文言に注意

もう1点、注意しておかなければならないことがあります。それは、遺族年金の納付要件は、亡くなった前日で見るということです。上記の保険料納付要件に「前日において」という文言があるのはそういう意味です。ご本人が亡くなった後で対応しても、すでに手遅れです。
 
国民年金も厚生年金保険も保険制度の1つですから、死亡という、いわゆる保険事故が起きてから保険料を納付または免除申請をしても、年金の受給にはつながらないのです。
 

周囲の人がアドバイスを

ご本人が重い病気やけがで苦しんでいるときに、配偶者や子供たちがこうした対策を採るのは、人情的に難しい面もあります。このため、できればご本人が「直近1年」要件の活用に気づき、保険料をまとめて納付または免除申請をするように配偶者や子供たちに指示すれば、これに越したことはないと思います。
 
また、友人や遠戚の人がそっとアドバイスしてあげたいものです。
 
※2020/07/21 記事を一部修正いたしました。
 
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士


 

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