更新日: 2021.03.23 その他年金

独身の方の遺族年金。いざとなったら親や兄弟姉妹は受け取れる?

執筆者 : 辻章嗣

独身の方の遺族年金。いざとなったら親や兄弟姉妹は受け取れる?
遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が亡くなったときに、遺族が受け取ることができる年金です。今回は、独身の方の遺族年金を親や兄弟姉妹が受け取ることができるのか解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

2種類の遺族年金と支給要件

遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類の年金があります。そして、遺族年金が支給されるためには、遺族年金の対象となる被保険者などが、それぞれの年金で定める支給要件と保険料納付要件を満たしていることが必要です(※1)。
 

1.遺族基礎年金の支給要件

遺族基礎年金は、被保険者などが以下のいずれかに該当したときに支給されます(※2)。
 

(1)国民年金の被保険者が死亡したとき
(2)老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき

 

2.遺族厚生年金の支給要件

遺族厚生年金は、被保険者などが以下のいずれかに該当したときに支給されます(※3)。
 

(1)厚生年金の被保険者が死亡したとき、または被保険者期間中の傷病がもとで初診の日から5年以内に死亡したとき
(2)老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき
(3)1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けられる者が死亡したとき

 

3.保険料納付要件

遺族年金が支給されるためには、死亡した被保険者が以下のいずれかの保険料納付要件を満たしている必要があります(※2、3)。
 

(1)死亡日の前日において保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上あること
(2)2026年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がないこと

 

遺族基礎年金を受け取るには

1.遺族基礎年金を受給できる遺族とは

遺族基礎年金を受給できるのは、死亡した者によって生計を維持されていた以下の遺族に限られます(※2)。従って、子どものいない独身者の遺族基礎年金を受給できる遺族はありません。
 

(1)子(注1)のある配偶者
(2)子(注1)
注1:子とは、18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子(障害等級1級または2級の子は20歳未満)が対象となります。

 

2.死亡一時金とは

国民年金の第1号被保険者として、保険料を納めた月(注2)が36月以上ある方が老齢基礎年金や障害基礎年金を受けることなく亡くなった場合は、その方によって生計を同じくしていた以下の遺族の中で優先順位の高い方に死亡一時金が支給されます(※4)。
 

(1)配偶者
(2)子
(3)父母
(4)孫
(5)祖父母
(6)兄弟姉妹

 
従って、独身者の父母、祖父母、兄弟姉妹が死亡一時金を受け取ることができる場合があります。
 
なお、遺族が、遺族基礎年金を受給できる場合は、死亡一時金は支給されません。
注2:4分の3納付月数は4分の3月,半額納付月数は2分の1月,4分の1納付月数は4分の1月として計算
 

遺族厚生年金を受け取るには

1.遺族厚生年金を受給できる遺族とは

遺族厚生年金を受給できるのは、死亡した者によって生計を維持されていた以下の遺族になります(※3)。
 

(1)妻
(2)子、孫(注1)
(3)55歳以上の夫、父母、祖父母(注3)
注3:遺族厚生年金の支給開始は60歳から

 

2.遺族厚生年金の受給要件とは

従って、死亡した独身者の父母や祖父母は、遺族厚生年金の受給対象者となりますが、以下の要件を満たす必要があります(※3)。
 

(1)死亡した独身者に生計を維持されていたこと
(2)独身者が死亡した当時、55歳以上であること

 
なお、遺族厚生年金の支給は、対象となる父母や祖父母が60歳から開始されます。
 

まとめ

独身者の遺族年金を受給できるのは、会社員や公務員であった被保険者が死亡したときに、その被保険者に生計を維持されていた55歳以上の父母と祖父母に支払われる遺族厚生年金に限られます。従って、自営業など国民年金の第1号被保険者であった独身者が死亡したときには、遺族が遺族基礎年金を受け取ることはできませんが、死亡一時金を受け取ることができる場合があります。
 
出典
(※1)日本年金機構 遺族年金
(※2)日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)
(※3)日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)
(※4)日本年金機構 死亡一時金
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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