50代から年金を増やす方法はある? FPが徹底解説!
配信日: 2021.04.16
60代で定年退職を迎えた後のセカンドライフは意外と長く、「老後の生活資金は足りるだろうか」と不安を感じている方は多いと思います。
この記事では、老後が迫った50代の方でも実行可能な年金を増やす方法を解説します。
執筆者:遠藤功二(えんどう こうじ)
1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券とオーストラリア・ニュージーランド銀行の勤務経験を生かし、お金の教室「FP君」を運営。
「お金のルールは学校では学べない」ということを危惧し、家庭で学べる金融教育サービスを展開。お金が理由で不幸になる人をなくすことを目指している。
目次
年金のルールを把握する
年金は、公的年金と私的年金に分けられます。公的年金は、国民年金と厚生年金のことです。一方、私的年金は、主に確定給付企業年金(DB)、確定拠出年金(DC)、国民年金基金、小規模企業共済が挙げられます。
それでは公的年金と私的年金について順に見ていきます。
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国民年金を増やすためには
国民年金、いわゆる老齢基礎年金を増やすためには、主に3つの方法があります。下記の(1)と(2)は主に国民年金第1号被保険者の方が行う方法で、(3)は1号から3号被保険者の方が共通で行える方法です。
(1)保険料を追納する
(2)付加年金に加入する(第1号被保険者のみ)
(3)年金の支給時期を遅らせる
保険料を追納する
国民年金の受給額は下記の計算式で計算します。
満額の年金額(約78万円)×保険料納付済月数÷480ヶ月
国民年金保険料は、20歳から60歳になるまでの40年間(480ヶ月)をかけて納付します。受給資格期間である10年以上の納付期間があれば、年金は受け取れます。
しかし、経済的な理由などで保険料納付の免除または納付猶予を受けていたり、もしくは単に保険料の納付をしていない「未納」の期間があるなど、保険料納付済月数が480ヶ月に満たない場合、受給できる年金額は満額より少なくなります。保険料納付の免除または納付猶予の期間については、納付期間上、下記のように扱われます。
●全額免除:当該免除期間の2分の1の期間が納付済月数になる
●4分の3免除:当該免除期間の8分の5の期間が納付済月数になる
●半額免除:当該免除期間の4分の3の期間が納付済月数になる
●4分の1免除:当該免除期間の8分の7の期間が納付済月数になる
●納付猶予:受給資格期間にはなるが支給額の納付期間にはならない
●学生納付特例制度:受給資格期間にはなるが支給額の納付期間にはならない
●合算対象期間(過去に国民年金が任意加入だったときに加入していなかった。もしくは国民年金の被保険者の対象外だった期間がある方の未加入期間):受給資格期間にはなるが支給額の納付期間にはならない
●未納:納付済月数にならない
上記に該当する期間がある方は国民年金を満額受け取れませんが、納付済月数を満額支給の480ヶ月に近づけるためには「追納」をするという手があります。追納とは年金保険料の免除および納付猶予期間がある方が、免除・猶予されていた保険料をさかのぼって納付することです。過去10年以内の保険料まで追納することができますが、未納の場合は保険料をさかのぼって納付できるのは2年だけです。
「学生納付特例制度を受けたのはもう30年前」という50代の方は、追納ができません。そのような場合は60歳以降も国民年金保険料を納める「任意加入制度」を利用し、加入月数を480ヶ月に近づけることができます。
また、60歳以降も会社員として働いて厚生年金に加入していると、厚生年金に「経過的加算」が加算されます。厚生年金保険料には国民年金保険料も含まれているので、60歳以降に納付した国民年金保険料分が厚生年金に加算されるという理解をすると良いと思います。
20歳から60歳の国民年金保険料の納付期間:456ヶ月(学生納付特例制度を2年間利用)
23歳から64歳の厚生年金保険加入期間:516ヶ月
国民年金保険料は実質、上限の480ヶ月納付しているので、480ヶ月で計算した国民年金と、456ヶ月で計算した国民年金のおおよその差額が経過的加算として受け取れます。
付加年金に加入する(第1号被保険者のみ)
国民年金保険料を納めている方は付加保険料(月400円)も合わせて納めると、老齢基礎年金に「200円×納付月数」が上乗せされて受け取れます。付加保険料は、年金を2年以上受け取ると回収できていることになります。
付加保険料納付額:400円×480ヶ月=19万2000円
年金加算額:200円×480ヶ月=9万6000円(2年分で保険料納付額を回収)
なお、付加保険料は社会保険料控除の対象になります。
年金の支給時期を遅らせる
公的年金は、受け取りの開始年齢を1ヶ月遅らせるごとに0.7%増額されます。本来の受給開始年齢の65歳から上限の70歳まで遅らせると、年金額は42%増加します。逆に受給開始を早めると1ヶ月ごとに0.5%減額になります。
なお、年金制度改正法により、2022年4月1日から公的年金の受給開始年齢は60歳から75歳に拡大されます。もし受給開始を75歳まで10年間遅らせた場合、年金額は84%増額します。
厚生年金を増額するためには
厚生年金の加入年齢は原則70歳までとなっており、保険料は加入期間中の標準報酬月額(1等級8万8000円~32等級65万円)と標準賞与額(最高150万円、年3回以下で支給される賞与が計算対象)に保険料率(18.3%、労使折半)をかけて、給与天引きで徴収されます。納めた保険料に対し、定められた計算式に当てはめた年金が支給されます。
つまり、標準報酬月額と標準賞与額が高くなるように仕事に励み、できるだけ長く勤務して保険料を納付し続けることが受給額を上げるポイントの1つです。また、先述の年金の受給開始時期の繰り下げも同時に行うことで、年金の受給金額は増加します。
確定給付企業年金(DB)、確定拠出年金(DC)に加入する
DBは、企業ごとに創設されている年金制度です。DBは勤め先に制度があれば、自然に加入にしているはずです。一方で勤め先に制度自体がない場合は個人で加入できる制度はありません。
DCは、国民年金第1号~第3号被保険者まで全ての方が加入できる私的年金制度です。加入者が自分で金融商品(預金、保険、投資信託)を選び、拠出した資産を運用します。DCは企業が掛け金を拠出する企業型(401k)と、個人が自分で掛け金を拠出する個人型(iDeCo)に分けられます。
勤め先に401kがある方で、マッチング拠出(自分でも掛け金を拠出する制度)が導入されている場合、運用結果次第ではありますが、やっておけば資産額が増加する可能性もあります。401kがない方、または401kはあるがiDeCoにも加入できる制度の企業にお勤めの方は、iDeCoに同時に加入することで自分でも年金資産を作れます。
iDeCoの掛け金の上限額は、職業と勤め先の企業年金制度(DB、401k の有無)で下記のとおりに決められています。また、401kのマッチング拠出の掛け金とiDeCoの掛け金は、小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象になります。
●自営業者(第1号被保険者):6万8000円
●会社員(DBあり)または公務員:1万2000円
●会社員(DBなし、401kあり):2万円(401k との合計5万5000円)
●会社員(DB・401k なし):2万3000円
●扶養の妻(第3号被保険者):2万3000円
国民年金基金や小規模企業共済という選択肢もある
自営業者(第1号被保険者)の方は、国民年金基金に加入する方法もあります。国民年金基金は、自営業者が厚生年金の代わりに入るものと考えると良いでしょう。掛け金を毎月支払うことで、65歳から加入した口数に応じて終身年金を受け取れます(2口目以降は確定年金も選べます)。
国民年金基金は早く加入するほど、将来の毎月の年金額は大きくなります。ただし、掛け金の上限はiDeCoと合わせて月額6万8000円となっているので、どちらに比重を置くか検討する必要があります。
また、国民年金基金は加入者が亡くなった際に、遺族が受け取る一時金が掛け金の合計額を下回ることがあるほか、国民年金の付加保険料を納めている方は加入できません。なお、国民年金基金の掛け金は社会保険料控除として所得控除の対象になります。
小規模企業共済は、個人事業主や小規模法人の役員が加入できる退職金制度です。運用利回りは高くはありませんが、掛け金が小規模企業共済等掛金控除になるという点で加入するメリットは高いといえます。
自身の職業ごとにできる手段を考えて行動する
ここまで見てきたとおり、将来の年金を増やすためのアプローチは、公的年金と私的年金の両方で考える必要があります。選べる手段は個人が置かれた状況によって異なりますので、制度をよく理解するようにしましょう。
出典
厚生労働省 令和元年簡易生命表の概況
日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
厚生労働省 私的年金制度の概要(企業年金、個人年金)
執筆者:遠藤功二
1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)