年金の〈繰り上げ〉と〈繰り下げ〉選択すべきはどちら?

配信日: 2021.04.28

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年金の〈繰り上げ〉と〈繰り下げ〉選択すべきはどちら?
現在、公的年金の受給開始年齢は65歳となっていますが、選択することでそれよりも早く受給したり、65歳以降に受給したりすることも可能です。
 
65歳よりも早く受給することと、65歳以降に受給することのメリット、そしてデメリットとはどのようなものなのでしょうか。それぞれの注意点も併せて解説します。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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公的年金の繰り上げとは?

本来であれば65歳から受給開始となる老齢年金を、60歳から65歳までの間で受給を開始することです。繰り上げて受給を開始すると、その繰り上げた月数分受け取る年金額が減額されます。
 
■繰り上げを選ぶメリット
65歳を待たずに年金の受給が開始できることがメリットです。多少減額されても構わないから、早めに受給を開始したいという方に向いています。
 
■繰り上げを選んだ際のデメリット
繰り上げ受給を選択すると、その分もらえる年金額は減額されます。減額率は月あたり0.5%となっています。そして、繰り上げ受給を選択し開始すると、その金額は変わることはありません。
 
したがって、本来もらえる年金額よりも低い金額が一生涯続くということがデメリットです。また、2020年の年金改正法により、減額率が2022年4月1日から現在の0.5%ではなく0.4%に緩和されることも覚えておきましょう。
 

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公的年金の繰り下げとは?

公的年金の受け取り開始を65歳以降70歳までにすることです。繰り下げ受給を選択した場合、繰り下げた月数分受け取る年金額が増額されます。
 
■繰り下げを選ぶメリット
受け取る年金額が、繰り下げた月数分の割合に応じて増額されることがメリットです。そして、増額された額は変わることはありませんので、その額を一生涯受け取ることとなります。増額率は月あたり0.7%です。
 
■2020年の年金改正法による影響
2020年の年金改正法により、2022年4月以降に70歳を迎える人からは、繰り下げ受給ができる年齢が75歳まで延長されます。したがって、繰り下げできる期間も5年から10年に延びるということになります。
 
繰り上げ受給の場合は減額率が2022年4月1日から変更されますが、繰り下げ受給の場合の増額率に変更はありません。
 
■繰り下げを選んだ際のデメリット
公的年金の受給開始である65歳から、繰り下げ受給までの間の収入を確保する必要があります。企業に勤めており、退職後も雇用してもらえるのであればよいのですが、自営業者などであれば、その間の収入を確保する必要があります。
 

繰り下げを行う際の注意点

繰り下げできる期間が延長されることが決まり、増額率については変更がないものの、月あたり0.7%の増額となることから、75歳で受給を開始した場合の増額率は84%となります。
 
10年間置いておくだけで84%資産が増えるということはかなりの魅力ではありますが、繰り下げを行う際には以下の点に注意することを忘れないようにしましょう。
 
■繰り下げ受給直後に亡くなった場合
繰り下げ受給開始直後に亡くなったとしても、65歳以降の年金をさかのぼって受け取れるわけではありません。年金額が増額されることはよいのですが、このようなデメリットも考えておく必要があります。
 
■在職老齢年金を受け取っている場合
在職老齢年金では、受け取っている老齢厚生年金と収入の合計額によって年金額が少なくなります。そして、65歳以降に在職老齢年金によって受け取れる年金額が少なくなる人が繰り下げ受給を行った場合、その少なくなった金額に増額率を掛けた額が受け取る年金額です。
 
■振替加算は増額の対象外となる
老齢基礎年金に振替加算が加算される人が繰り下げ受給を選ぶと、年金を受け取らない期間の振替加算額は加算されません。また、振替加算も増額の対象外です。
 
■公的年金は1人1年金
公的年金には「1人1年金」という原則があるため、遺族年金や障害年金を受け取っている人は繰り下げ受給できません。ただし、障害基礎年金のみを受け取っている人は、老齢厚生年金を繰り下げることができます。
 

繰り上げおよび繰り下げを行った際の他の年金は?

繰り上げ受給および繰り下げ受給を行った際に、他の年金には影響があるのでしょうか。
 
■加給年金
繰り上げ受給を選択した場合、加給年金は繰り上げの対象外です。したがって、65歳になってからの受給になります。また、繰り下げ受給を選択した場合は、老齢厚生年金を繰り下げている間は加給年金を受け取ることはできません。
 
■障害年金
繰り上げ受給を選択した場合、受給後に初診日が訪れた場合であっても、障害基礎年金を受け取ることはできません。さらに、繰り上げ受給を請求する前の病気やけがで障害がある場合も、障害基礎年金を請求できなくなることがあります。
 
また、繰り下げ受給を請求している間に、障害年金を受け取る理由が発生した時には、繰り下げ受給はその時点で停止されます。
 
■遺族年金
繰り上げ受給を選択し、65歳になる前に遺族年金の受給権が発生した場合は、老齢基礎年金と遺族年金のどちらかを選ぶことになります。その際に遺族年金を選択すると、65歳まで減額した老齢基礎年金が支給停止になり、さらに停止解除後も減額された額のままで支給されることになります。
 

Q&A

 

  • Q1.繰り上げ受給を請求した後の取り消しは可能でしょうか?
  • A1.繰り上げ受給の請求は取り消しはできません。繰り上げ受給を選択すると、その後もずっと減額された金額を受け取り続けることになることから、繰り上げ受給を請求する場合は慎重に考えるようにしてください。

 

  • Q2.老齢基礎年金と老齢厚生年金どちらかを、繰り上げもしくは繰り下げ受給できますか?
  • A2.繰り上げ受給および繰り下げ受給は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせて行う必要があります。
     
    したがって、どちらかを繰り上げもしくは繰り下げることはできません。

 

まとめ

繰り上げ受給を選択すると、年6%(2022年4月からは年4.8%)が減額され、減額された年金額が一生涯続きます。そして、繰り上げ受給の損益分岐点は77歳といわれています。つまり、60歳から受給開始した場合、77歳よりも長生きをすると損してしまうということです。
 
また、繰り上げ受給を選択すると、障害年金や寡婦年金を受け取ることができなくなるというデメリットもあることから、将来の長生きリスクを考えると、よほどのことがない限り繰り上げ受給を選ばないほうがよいといえるでしょう。
 
繰り下げ受給については、2020年の改正により最大84%多く受け取ることが可能です。また、繰り下げ受給の損益分岐点は11年11ヶ月といわれていることから、75歳から受給を開始した場合であれば、86歳以上生きれば損はしないということになります。
 
2020年7月現在の日本人の平均寿命は男性81.41歳、女性は女性87.45歳であり、年々更新されて延びています。繰り下げ受給を選ぶ際に何歳まで繰り下げるかについては、自分の老後資金と健康状態を考慮して決めるとよいでしょう。
 
(参考・引用)
生命保険文化センター「老齢年金の繰上げ・繰下げ受給について知りたい」
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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