更新日: 2021.05.14 その他年金

年金生活者支援給付金をもらえる人の条件とは?

執筆者 : 菊原浩司

年金生活者支援給付金をもらえる人の条件とは?
公的年金制度にはさまざまな給付金の加算があり、自身で申請をしないと利用できないものもあるため、加算制度を活用できているか調べる必要があります。今回は「年金生活者支援給付金」の仕組みについて確認していきます。特に「年金生活者支援給付金請求書」が届いている方は必見です。
 
菊原浩司

執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)

FPオフィス Conserve&Investment代表

2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。

http://conserve-investment.livedoor.biz/

年金生活者支援給付金とは

年金生活者支援給付金は、消費税の引き上げ分を財源とし、公的年金等の収入金額やその他の所得が一定基準額以下の方に、生活の支援を図ることを目的として支給されています。
 
年金生活者支援給付金は、厚生年金や国民年金など加入している公的年金によって種類が異なります。今回は、老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金の支給条件を解説していきます。
 

年金生活者支援給付金はいつ支給されるのか?

年金生活者支援給付金の支給を受けるには、公的年金制度を受給していることに加え、収入・所得が一定以下である必要があります。
 
老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金における年金生活者支援給付金の支給要件と支給額についてそれぞれ確認しておきましょう。(以下令和3年4月時点で計算)
 

【老齢基礎年金を受給している場合】

65歳以上に達し老齢基礎年金を受給している場合、年金生活者支援給付金を満額受け取るには、世帯構成員全員が市町村民税非課税となっていることに加え、受給者本人の所得要件が設定されています。
 
老齢基礎年金における年金生活者支援給付金の所得要件は、前年の公的年金の収入額(非課税収入となる遺族年金・障害年金は除く)と、給与所得や事業所得などのその他の所得との合計額が77万9900円以下である必要があります。
 
しかし、77万9900円を超えてしまってもいきなり全額が支給停止となるわけではなく、合計額が87万9900円になるまでは一定の減額処理が成された「補足的老齢年金生活者支援給付金」の対象となります。
 
令和3年度(2021年度)の老齢基礎年金における年金生活者支援給付金の額は、満額で月額5030円となっていますが、令和2年度の老齢基礎年金を満額で受給した場合、その収入額は約78万2000円となるため、補足的老齢年金生活者支援給付金による減額処理の対象となります。
 
試算として、保険料納付期間が480ヶ月あり老齢基礎年金を満額の約78万2000円受け取った方の場合、給付額5030円×(補足的老齢年金生活者支援給付金87万9900円-前年の所得合計額78万2000円)÷(補足的老齢年金生活者支援給付金87万9900円-老齢年金生活者支援給付金77万9900円)=4924円となります。
 

【障害基礎年金を受給している場合】

障害等級が1級または2級に該当し障害年金を受給している方は、受給者本人の所得要件のみが設定されており、前年の障害基礎年金の収入以外の所得が462万1000円以下(扶養親族の人数によって増額)と、老齢基礎年金の場合よりも大きく緩和されています。
 
障害基礎年金における年金生活者支援給付金の額は、障害等級が1級の場合は月額6288円、2級の場合は5030円となります。
 

【遺族基礎年金を受給している場合】

国民年金に加入者などが死亡した場合、その方が扶養していた18歳未満の子(障害等級1級または2級に該当する場合は20歳未満の子)またはその配偶者で遺族基礎年金を受給しており、前年の所得が462万1000円以下(扶養親族の人数によって増額)の場合も年金生活者支援給付金を受けることができます。
 
給付額は月額5030円となっていますが、子の人数によって増額されることはなく5030円を子の人数で割った金額がそれぞれ支給されることとなります。
 

年金生活者支援給付金の注意点は?

年金生活者支援給付金は年金を受給しつつも一定の所得水準以下での生活を営む方を支援する制度のため、支給の前提となる公的年金の種類や世帯構成員の収入、扶養親族の人数などにより所得制限が設定されています。
 
世帯構成員の年金受給の開始や就労、独立などによる扶養親族の減少などによって所得制限に抵触し、年金生活者支援給付金の支給要件を満たさなくなってしまう場合がありますので年金受給者自身の収入だけでなく、世帯構成員などの環境の変化にも注意を払い、予期せぬ支給停止に陥ることのないようにしておきましょう。
 

年金生活者支援給付金の手続き方法

現在基礎年金を受給しているかどうかにより、手続きが異なります。なお、すでに年金生活者支援給付金を受給している方は新たな手続きは不要です。
 

既に老齢・障害・遺族基礎年金を受給している方

給付対象者には年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届くので、必要事項を記入し、切手を貼った上で、郵便ポストに投函(とうかん)すれば手続き完了です。

 

これから老齢・障害・遺族基礎年金の受給を始める方

年金の請求手続きを行う際に、あわせて年金生活者支援給付金の認定請求の手続きを行うことができます。原則、添付書類は不要となります。

 

まとめ

公的年金制度にはさまざまな給付金の加算があり、自身で申請をしないと利用できないものもあります。今回解説した年金生活者支援給付金も給付を受けるのに必要な手続きがあります。
 
現役世代の方は少額に感じられるかもしれませんが、収入を稼ぎ出す力が減少する年金給付世帯には軽視できない金額です。自分や家族の生活を守るためにも各種通知などを見逃さないように気を付けましょう。
 
[出典]
厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
日本年金機構「令和2年4月分からの年金額等について」
 
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表
 

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