年金記録に漏れや誤りがあった場合、どうすればよい?
配信日: 2021.05.31
今回は、年金記録に漏れや誤りがあった場合の対応方法について解説します。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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年金記録に漏れや誤りの事例
日本年金機構や厚生労働省の公式サイトには、自身の年金記録に漏れや誤りがあった場合の訂正請求や、その方法について記載されていますが、この年金記録の漏れや誤りはなぜ発生するのでしょうか? 原因について、以下にまとめてみました。
■転職のたびに年金手帳が発行された
1997年に共済年金を含むすべての公的年金制度に共通する番号として「基礎年金番号」が導入され、転職や退職などで加入する年金制度が変わった場合でも、生涯にわたる年金記録を1つの番号でまとめて管理することになりました。
それにより、1998年12月以前に国民年金と厚生年金保険など、2つ以上の年金制度に加入されていた方については、年金制度ごとに記号・番号(オレンジ色の年金手帳に記載)が付番されていたため、それを基礎年金番号に一本化し、過去の年金記録を1つに統合する作業が行われました。
しかし、1997年以降であっても、勤務先の会社に基礎年金番号を届け出しなかったことなどが原因で、転職のたびに年金手帳(青色)が発行され、基礎年金番号が重複して発行されているケースがあります。
■勤務先の会社が倒産した
倒産によってリストラされた場合、リストラ直後の期間に「未納」期間があるケースが見られます。また、事業所によってさかのぼって「適用事業所全喪届」の届け出処理が行われた場合、国民年金保険料が「未納」となっている場合があります。
■関連会社での度重なる出向や、試用期間中の退職
加入期間の短い年金記録については、加入期間の長い年金記録に比べ、漏れや誤りが多く見られます。したがって、関連会社で短期間に出向を繰り返したり、試用期間中に退職したりと、加入期間が短い場合においては、自身の年金記録に漏れがないかどうか確認するようにしましょう。
■退職後、結婚して姓が変わった
基礎年金番号に統合した年金記録の中には、「旧氏名」が登録された年金記録が多く見つかっています。退職した後、名前が変わったなどの際には、その後のねんきん定期便などで氏名をきちんと確認しておくことが大切です。
また、漢字は正しくても、登録されたカナが異なる年金記録は、基礎年金番号とリンクしていない可能性がありますので、いろいろな名前の読み方のある名前の方も注意が必要です。
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訂正請求とは?
年金に加入していた期間や保険料の納付状況などの年金記録が事実と異なる場合、将来受け取る年金額が少なくなってしまうことがあります。そのため、年金記録に漏れや誤りが見つかった場合は、年金記録の訂正を国に請求することができます。これを年金記録の「訂正請求」といいます。
■訂正請求ができる人
●年金に加入している(過去に加入していた)本人
●本人が亡くなっている場合はその人の遺族
■訂正請求の対象期間
●国民年金および厚生年金保険の被保険者であった期間
●厚生年金保険に統合された旧船員保険の被保険者期間、旧農林共済組合、旧三公社(JR、JT、NTT)共済組合の組合員期間
■訂正請求の対象となる例
●A社で働いた期間、厚生年金保険の記録がない
●B社で働いた期間、厚生年金保険に加入した日が就職日より後になっている
●C社で働いた期間、厚生年金保険の資格を喪失した日が退職日より前になっている
●D社で働いた期間、標準報酬月額が相違している
●E社から支払われた賞与のうち、○年○月○日支払い分の記録がない
●○年○月から△年△月までの期間、国民年金保険料を納付したはずなのに「未納」となっている
■訂正請求の期限
訂正請求に期限はありません。年金記録に漏れや誤りが見つかった場合は、過去のいつの時点での記録であっても請求を行うことができます。
(引用・一部抜粋:厚生労働省「年金記録の訂正請求手続」(※))
訂正請求の手続き
訂正請求は厚生労働省に対して行います。その手続きの流れや詳細は以下のとおりです。
■訂正手続きの流れ
- 1.年金事務所に「訂正請求書」を提出する。
- 2.年金事務所で確認調査を実施し、確認できたものについては速やかに訂正を行う。
- 3.年金事務所にて確認できないものについては、「訂正請求書」が地方厚生局に送付される。
- 4.地方厚生局にて関連資料や周辺事情の収集および調査を行う。
- 5.地方年金記録訂正審議会において審議を行う。
- 6.審議結果に基づき、訂正の可否を決定する。
訂正が認められたものについては、速やかに訂正が行われます。また、訂正が認められなかった場合、厚生労働大臣もしくは裁判所に対して審査請求もしくは訴訟を提起できます。
■訂正請求に必要な書類
訂正請求を行う際には、以下の書類が必要です。
●年金記録訂正請求書
●同意書
●請求の概要
●請求内容に関する状況がわかる資料(年金手帳など)
訂正請求の注意点
地方厚生局は、請求内容についてさまざまな関連資料や周辺事情に基づき、訂正するかどうかを総合的に判断します。調査審議しても、年金への加入や保険料の納付(厚生年金保険は、給与・賞与からの保険料控除)などについて、記録訂正につながる関連資料や周辺事情が乏しい場合には、記録訂正が認められない場合があります。
したがって、訂正請求を行う際には、以下のような資料をできるだけ集めておくようにしましょう。
給与明細書、源泉徴収票、預貯金通帳、勤務先の辞令、賃金台帳、雇用保険の記録、厚生年金基金の記録など。
その他、事業主・総務担当・同僚の証言や、本人・配偶者の保険料納付状況や納付方法がわかるもの。
(引用・一部抜粋:厚生労働省「年金記録の訂正請求手続」(※))
Q&A
訂正手続きには、どのくらいの日数がかかりますか?
A.訂正を求める内容により調査・審議にかかる日数が異なりますが、訂正請求書を年金事務所に提出されてから、地方厚生局が決定を行うまで5ヶ月程度かかります。
年金記録の訂正が決定された後はどうなりますか?
A.決定に基づき、日本年金機構で年金記録の訂正を行い、将来受け取る年金額に反映されます。すでに年金を受け取っている方の場合は、訂正後の記録に基づいて年金額を変更し、さかのぼって年金が支払われます。
まとめ
2020年12月時点で、基礎年金番号が統合されていない件数は3000万件ほど存在し、年金記録が修正された人の数は、のべ1027万人となっています。また、2021年1月の年金記録に関わる訂正請求の受付件数および処理件数は300件を超えているなど、現在でもかなりの数の訂正が行われています。
ねんきん定期便を、これまであまり確認することがなかったという方もいらっしゃると思いますが、将来受け取れる年金額が減少する可能性があることや、さかのぼって請求することで受け取れる年金が増える可能性もありますので、しっかり確認することをお勧めします。
自分が納付した額や状況に応じた正確な年金額を受け取るためにも、漏れや誤りがあった場合には、必ず訂正請求を行うようにしてください。
【出典】
(※)
厚生労働省「年金記録の訂正請求手続」
日本年金機構「年金記録問題についてのこれまでの取組状況 (主要データ)2021年4月報告」
厚生労働省「年金記録に係る訂正請求の受付・処理状況(2021年2月26日)」
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員