就職・結婚・転職・退職など…。ライフイベントの際に知っておきたい年金のこと
配信日: 2021.06.18
執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/
2階建ての年金制度と被保険者区分
わが国の年金制度は、日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の方が加入する国民年金と、70歳未満の会社員や公務員などが加入する厚生年金の2階建ての構造になっています(※1)。
そして、国民年金の被保険者は、自営業やフリーターなどの第1号被保険者、会社員や公務員などの第2号被保険者、第2号被保険者の被扶養配偶者である第3号被保険者に区分されています(※1)。
被保険者 | 対象者 | 保険料の納付方法 |
---|---|---|
第1号被保険者 | 日本国内に住む20歳以上60歳未満の学生、フリーター、無職の人など | 国民年金保険料を自分で直接納付 |
第2号被保険者 | 70歳未満の厚生年金保険の適用を受ける事業所に勤務する人など | ・厚生年金保険料を事業主と折半して納付 ・国民年金保険料は加入する年金制度から拠出 |
第3号被保険者 | 第2号被保険者の配偶者で20歳以上60歳未満の人 (年間収入が130万円以上の人を除く) |
国民年金保険料は配偶者が加入する年金制度が一括負担 |
(※1を基に筆者作成)
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会社に就職すると厚生年金の被保険者となる
会社など厚生年金が適用される事業所に就職すると、厚生年金の被保険者となり、国民年金の第2号被保険者として国民年金と厚生年金の両方の制度から保障を受けることができるようになります。
また、給与や賞与から厚生年金保険料が徴収されるようになりますが、国民年金保険料を納める必要はありません。なお、厚生年金の加入手続きは事業主が行いますので、本人は手続きをする必要はありません(※2)。
国民年金の学生納付特例制度を利用していた方は、猶予された保険料をさかのぼって納めること(追納)により、老齢基礎年金を満額に近づけることができます。
追納は、10年以内であればできますが、学生納付特例の承認を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合には、承認を受けた当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされますので、早めに追納されることをお勧めします(※3)。
会社員と結婚すると被扶養配偶者となることができる
自営業者など国民年金の第1号被保険者であった方が、厚生年金の被保険者である会社員などと結婚した場合は、国民年金の第3号被保険者となり、今まで第1号被保険者として納付してきた国民年金保険料を納付する必要がなくなります。なお、被扶養配偶者となるための手続きは、世帯主が勤務する会社を通じて行う必要があります(※4)。
会社員など国民年金の第2号被保険者であった方が結婚しても仕事を続ける場合は、被扶養配偶者となることはできません。また、被扶養配偶者が、パートタイマーなどで年収が130万円以上になると被扶養配偶者を外れ、国民年金の第1号被保険者として国民年金保険料を納付する義務が生じます。この際の手続きは、市区町村役場に届け出る必要があります(※4)。
なお、勤務時間が週20時間以上など一定の要件を満たすパートタイマーは、厚生年金の被保険者となる場合があります(※2)。
転職や退職したときは国民年金の種別変更が必要
第2号被保険者である世帯主と第3号被保険者である年下の配偶者の世帯をモデルに、世帯主が転職や退職した場合の手続きについて解説します。
1.会社員から自営業に転職
会社員から自営業に転職した場合は、世帯主、配偶者ともに第1号被保険者となりますので、退職日の翌日から14日以内に住所地の市区町村役場で加入手続きを行ってください(※5、6)。
2.会社員から会社員に転職
会社員から別の事業所の会社員に転職した場合は、世帯主は第2号被保険者、配偶者は第3号被保険者を継続しますので、特に手続きをする必要はありません。ただし、会社員から公務員など共済組合の事業所に転職した場合は、国民年金第3号被保険者の種別確認が必要となります(※6)。
なお、会社を辞めてから次の会社に就職するまで間が空く場合は、第1号被保険者の資格取得手続きが必要となりますので注意してください(※7)。
3.会社を定年退職
世帯主が60歳以上で勤めていた会社を退職した場合、配偶者が60歳未満であれば第1号被保険者となりますので、退職日の翌日から14日以内に住所地の市区町村役場で加入手続きを行ってください(※5、6)。
なお、世帯主が20歳以上60歳未満までの保険料納付月数が480月(40年)に満たない場合は、65歳になるまで国民年金に任意加入することで老齢基礎年金額を増やすことができますので、住居地の市区町村役場か年金事務所で手続きをすると良いでしょう(※8)。
まとめ
20歳以上60歳未満の方は、国民年金の被保険者となり、この間国民年金保険料を納付する義務があります。しかし、会社員など厚生年金の被保険者である期間は第2号被保険者として、第2号被保険者の被扶養配偶者は第3号被保険者として国民年金保険料を直接納付する必要はありません。
なお、転職や退職した際、被保険者区分の変更に関する手続きを怠ると、保険料未納期間が生じて老齢基礎年金額が減るばかりでなく、万が一のときに障害年金や遺族年金を受給できなくなる恐れがありますので、忘れずに手続きするようにしましょう。
出典
(※1)日本年金機構 公的年金の種類と加入する制度
(※2)日本年金機構 適用事業所と被保険者
(※3)日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
(※4)日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き
(※5)日本年金機構 国民年金に加入するための手続き
(※6)日本年金機構 配偶者が転職・退職したときの手続き
(※7)日本年金機構 会社を退職した時の国民年金の手続き
(※8)日本年金機構 任意加入制度
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士