更新日: 2021.07.08 その他年金

働きながら年金を受給する場合、「収入制限」に注意!

執筆者 : 馬場愛梨

働きながら年金を受給する場合、「収入制限」に注意!
年金が受給できる年齢以降も、再雇用などで働き続けることを選択する方が増えています。
 
働きながら年金を受け取るときに注意したいのが、収入によっては年金の一部、もしくは全部が支給停止になる可能性があるということです。どんな仕組みで、いくら以上で支給停止になるのか解説します。

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馬場愛梨

執筆者:馬場愛梨(ばばえり)

ばばえりFP事務所 代表

自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強。銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。

過去の自分のような、お金や仕事で悩みを抱えつつ毎日がんばる人の良き相談相手となれるよう日々邁進中。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。平成元年生まれの大阪人。

https://babaeri.com/

働きながら年金を受け取るときのルールとは

「在職老齢年金」という制度をご存じでしょうか。勤務先の賃金と年金の合計額が一定以上になった場合に、老齢厚生年金がカットされる仕組みのことです。
 
この制度は、60歳以上で老齢厚生年金を受け取っている人が対象で、会社員や公務員など「厚生年金」に加入して働き続ける場合に適用されます。雇用契約ではなく自営業やフリーランスなど「国民年金」のみに加入する働き方を選んだ場合は関係ありません。
 
(参考・引用:厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」、日本年金機構「在職中の年金(在職老齢年金制度)」(※1))
 

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いくら稼いだら年金が「支給停止」になる?

在職老齢年金では「賃金+年金」がいくらになるのかがポイントです。
 

<年金の支給停止が始まる基準>(2021年時点)

●60~64歳……月28万円(2022年4月以降は月47万円)
●65歳以上……月47万円

 
基本月額(加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額)と総報酬月額相当額((その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12)の合計額が上記の金額以下なら、年金を全額受け取ることができます。
 
ここでいう賃金とは、総報酬月額相当額【その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額の合計÷12】のことです。手当などを含んだ給与と、賞与を1ヶ月あたりにならしたものを合計すると、おおよその金額がわかります。
 
年金は、基本月額を指します。老齢厚生年金の月額から加給年金(配偶者や子どもの状況に応じて加算される年金)を除いたものです。
 

基準を超えたら年金はいくらになる?

支給停止になる基準を超えそうな場合、年金がどれくらいカットされるのか確認しておきましょう。65歳以上の場合は以下のように計算します。
 

●支給調整後の年金額=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2

 
例えば、基本金額(年金)が月10万円、総報酬月額相当額(賃金)が月40万円の場合は次のとおりです。
 

●10万円-(10万円+40万円-47万円)÷2
⇒ 年金1万5000円が支給停止、受給できるのは月8万5000円
⇒ 収入は賃金40万円+年金8万5000円=月48万5000円

 

給与だけじゃない! 雇用保険の給付にも要注意

再雇用で賃金が大きく下がった場合などは、雇用保険の「高年齢雇用継続給付」の対象になる可能性があります。60歳以上65歳未満で、60歳時点の賃金の75%未満になった方などを対象に、その低下率に応じて給付金を支給する仕組みです。
 
定年後の収入ダウンをカバーできるありがたい制度ですが、これも、年金と同時に受け取る場合は年金の一部が支給停止になります。
 
例えば、60歳時点の賃金が月40万円だった人が、その後に月15万円で働くことになった場合、高年齢雇用継続給付金は2万2500円です。年金の支給停止額は、この給付金の4割相当ですので、9000円になります。
 
つまり、手元に入ってくるお金は15万円+2万2500円-9000円=「16万3500円」です。これに加えて年金が受給できる場合もありますが、金額によってはさらに在職老齢年金での支給調整もかかります。
(参考・引用:厚生労働省「雇用保険と年金の併給調整について」(※2))
 
雇用保険についてはもう1点、「65歳未満で老齢厚生年金を受給できる方が失業給付を受ける場合、その期間中は年金が全額支給停止される」ということも知っておくとよいでしょう(※3)。
 

まとめ:老後の働き方を考えるため年金制度を理解しておこう

年金制度は複雑でわかりにくいと思うかもしれません。しかし、何も知らないままだと「思ったよりもらえる金額が少ない」という事態になって老後の生活設計に支障がでるかもしれません。
 
まずは老後の理想の働き方を考えて、その場合に賃金・年金・給付金を考慮した手取りがいくらくらいになりそうか、一度試算してみるのがおすすめです。年金事務所などに問い合わせて確認できますよ。
 
(※1)
厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました/(3)」
日本年金機構「在職中の年金(在職老齢年金制度)」
(※2)
厚生労働省「雇用保険と年金の併給調整について」
(※3)
厚生労働省「雇用保険と年金の併給調整について」P3
日本年金機構「老齢年金ガイド(令和3年度版)」P16
 
(出典)
日本年金機構「60歳台前半(60歳から65歳未満)の在職老齢年金の計算方法」
日本年金機構「65歳以後の在職老齢年金の計算方法」
 
執筆者:馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表