更新日: 2021.07.29 厚生年金

「特別支給の老齢厚生年金」とは? 65歳以降に支給されるものと何が違う?

執筆者 : 遠藤功二

「特別支給の老齢厚生年金」とは? 65歳以降に支給されるものと何が違う?
厚生年金の受給開始年齢といえば65歳という考え方が定着していますが、この年齢は法改正により徐々に引き上げられ、現在の65歳になったという経緯があります。
 
公的年金は退職後世代の重要な収入源となっているため、法改正により突然、年金の受給開始年齢が上がってしまうと国民は困惑してしまいます。そこで制度の変更をスムーズに行うために設けられたのが、「特別支給の老齢厚生年金」です。
 
特別支給の老齢厚生年金は、一定の生年月日までの方なら65歳未満でも年金を受け取ることができるという制度で、受給開始年齢を65歳に引き上げる変更が徐々に国民に浸透していくことを目的に作られました。この記事では、特別支給の老齢厚生年金が年金制度の中でどのような役割を果たしているのかを解説します。

【PR】SBIスマイルのリースバック

おすすめポイント

・自宅の売却後もそのまま住み続けられます
・売却金のお使いみちに制限がないので自由に使えます
・家の維持にかかるコスト・リスクが無くなります
・ご年齢や収入に制限がないので、どなたでもお申し込みいただけます

遠藤功二

執筆者:遠藤功二(えんどう こうじ)

1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)

三菱UFJモルガン・スタンレー証券とオーストラリア・ニュージーランド銀行の勤務経験を生かし、お金の教室「FP君」を運営。
「お金のルールは学校では学べない」ということを危惧し、家庭で学べる金融教育サービスを展開。お金が理由で不幸になる人をなくすことを目指している。

厚生年金の受給開始年齢は55歳だった

公的年金制度は国民年金と厚生年金で成り立っています。どちらの年金も原則として65歳が受給開始年齢です。
 
実は、国民年金は年金制度の発足当初から受給開始年齢が65歳でしたが、厚生年金の受給開始年齢は元々55歳だったという経緯があります。55歳だった厚生年金の受給開始年齢は、制度の変更を経て65歳へと引き上げられました。こうした変更の緩和措置として、特別支給の老齢厚生年金という制度があります。
 
厚生年金の制度の変更の歴史は下記のとおりとなっています。
 

【厚生年金制度の変更の経緯】

・昭和17年
労働者年金保険法の制定。厚生年金の対象者は男性のみで受給開始年齢は55歳。
 
・昭和19年
厚生年金保険法の制定。女性も厚生年金の対象となり、受給開始年齢は55歳。
 
・昭和29年改正
男性の受給開始年齢が60歳に引き上げられ、昭和32年度から4年に1歳ずつ、合計16年かけて変更が実行された。
 
・昭和60年改正
男性の受給開始年齢が65歳に引き上げられ、60歳~65歳までの間は「特別支給の老齢厚生年金」が支給されることになった。女性は昭和62年度から55歳の受給開始年齢が3年ごとに1歳ずつ12年かけて60歳に引き上げられた。
 
・平成6年改正
特別支給の老齢厚生年金のうち、「定額部分」が男性の場合は平成13年度から、女性は平成18年度からそれぞれ3年に1歳ずつ、合計12年かけて引き上げられ、最終的にはなくなることになった。
 
・平成12年改正
特別支給の老齢厚生年金のうち、「報酬比例部分」が男性の場合は平成25年度から、女性は平成30年度からそれぞれ3年に1歳ずつ、合計12年かけて引き上げられ、最終的にはなくなることになった。
 
なお、定額部分は老齢基礎年金の支給開始年齢である65歳まで支給されるものであり、報酬比例部分は本来の支給開始年齢が65歳である老齢厚生年金を65歳未満の年齢で時限的に支給しているものです。この定額部分と報酬比例部分を合わせて、特別支給の老齢厚生年金といいます。
 
特別支給の老齢厚生年金は上記の説明にあるとおり、まずは定額部分から廃止に向けて受給開始年齢の引き上げが進み、その後、報酬比例部分の引き上げが進められています。
 
●特別支給の老齢厚生年金

報酬比例部分(支給開始は生年月日による) 老齢厚生年金(受給年齢65歳)
定額部分(支給開始は生年月日による) 老齢基礎年金(受給年齢65歳)

※筆者作成
 

【PR】SBIスマイルのリースバック

おすすめポイント

・自宅の売却後もそのまま住み続けられます
・まとまった資金を短期間で手に入れられます
・家の維持にかかるコスト・リスクが無くなります
・借り入れせずに資金を調達できます

特別支給の老齢厚生年金を受け取れる方

特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢は、前述のとおり徐々に引き上げられています。
 
男性で昭和36年4月2日以降生まれの方、女性で昭和41年4月2日以降生まれの方は特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができませんが、それ以前に生まれた方は、該当する制度に応じた特別支給の老齢厚生年金を65歳未満の年齢で受け取ることができます。
 
【特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢と対象者】
 

●報酬比例部分を64歳から受け取れる方

男性 昭和34年4月2日~昭和36年4月1日生まれ
女性 昭和39年4月2日~昭和41年4月1日生まれ

 

●報酬比例部分を63歳から受け取れる方

男性 昭和32年4月2日~昭和34年4月1日生まれ
女性 昭和37年4月2日~昭和39年4月1日生まれ

 

●報酬比例部分を62歳から受け取れる方

男性 昭和30年4月2日~昭和32年4月1日生まれ
女性 昭和35年4月2日~昭和37年4月1日生まれ

 

●報酬比例部分を61歳から受け取れる方

男性 昭和28年4月2日~昭和30年4月1日生まれ
女性 昭和33年4月2日~昭和35年4月1日生まれ

 

●報酬比例部分を60歳から受け取れる方

男性 昭和28年4月1日以前生まれ
女性 昭和33年4月1日以前生まれ

 

今後の年金制度の変更について

少子高齢化により年金財政が圧迫され、年金の受給開始年齢が65歳超に上がってしまうのではないかと心配されている方もいると思います。もちろん将来の制度の変更について、はっきりとしたことは申し上げられませんが、前述のとおり年金制度自体は過去にたびたび変更されてきたことは事実です。
 
例えば、何年後かに年金の受給開始年齢が70歳へと引き上げられても不思議は無いということになります。もちろんそのときは、これまでと同じように段階的な受給開始年齢の引き上げになることが想像できます。
 

老後の生活は自分で守る

若い世代の方々は年金の受給開始年齢まではだいぶ期間がありますが、将来的に制度が変更される可能性があることは否定できません。少しでも老後の生活資金に不安を感じる方は、「自分の生活は自分で守る」という考え方を持つことが大切です。
 
例えば、年齢に関係なく働き続けられるようなスキルを身に付けたり、老後に取り崩すことができる資産を積み立てておくなど、「自己投資」と「資産形成」を早いうちから検討してみるとよいでしょう。
 
出典
日本年金機構 特別支給の老齢厚生年金
厚生労働省 平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~ 支給開始年齢について
 
執筆者:遠藤功二
1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)