「約600億円の年金支給漏れ」なんで、年金支給漏れが起きるのか・・

配信日: 2018.02.02 更新日: 2019.01.07

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「約600億円の年金支給漏れ」なんで、年金支給漏れが起きるのか・・
2017年9月に厚生労働省は約600億円という年金の支給漏れがあったと発表しました。

公表されたケースのほとんどは夫婦のどちらかが公務員で、振替加算と呼ばれているものが支給されていなかったというものです。この問題は額も大きく、ニュースなどでも大きく報じられましたが、私が相談に乗っていた10年以上の期間の間でも、明るみに出ない小さな支給漏れなどについて判明したケースはありました。

どうしてこうなってしまうのか。また、もらう側ができる対策はないかを考えます。
塚越菜々子

Text:塚越菜々子(つかごし ななこ)

CFP(R)認定者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士
お金の不安を賢く手放す!/働くママのお金の教養講座/『ママスマ・マネープログラム』主催
お金を貯める努力をするのではなく『お金が貯まる仕組み』づくりのサポート。保険や金融商品の販売を一切せず、働くママの家計に特化した相談業務を行っている。「お金だけを理由に、ママが自分の夢をあきらめることのない社会」の実現に向け、難しい知識ではなく、身近なお金のことをわかりやすく解説。税理士事務所出身の経験を活かし、ママ起業家の税務や経理についても支援している。
https://mamasuma.com

支給漏れの原因は一にも二にも制度が複雑なこと

日本の年金はよく3階建てと言われます。1階部分は日本に住む20歳以上の人は全員加入する「国民年金」2階部分は会社員や公務員が加入する「厚生年金(共済年金)」3階部分は会社で導入している「企業年金」などです。
 
一階部分の国民年金がスタートしたのは1961年。このころの平均寿命は男性で約65歳でした。
 
それから56年。平均寿命は20年近く伸び、人口構造は大きく変わりました。この制度を成り立たせるためにどんどん制度の改訂を行いましたが、抜本的に改革するというよりはツギハギで制度を調整してきたために、制度は複雑化しています。また共済年金と厚生年金は制度としては一元化されましたがそこでのデータの共有がうまくなされておらず、いまだ縦割りで処理が行われていることも支給漏れにつながっていると言えるでしょう。
 

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加入期間が長く、加入者の状況自体も変化がある

年金の加入期間は原則20歳から60歳までと40年の歳月があります。一度就職したら退職までずっと同じころで働き続けるということは少なくなっていています。40年の歳月を全く同じ状況で過ごすということはあまりなく、多くの方が結婚や転職を経て、加入者自身の状況が変わります。
 
複雑な制度の上に加入者の状況が変われば、それぞれの年金の履歴は複雑にならざるを得ません。制度自体も、その制度に使われている言葉も、我々のような一般人にはなじみがありません。言葉だけでスッと理解できる用語ではないことがほとんどです。
 

まずは当事者意識を持ち、自分の状況を確認していく

もともと年金制度は「世代間扶養」という考え方に基づいていて、「自分がもらうために払う」ものではないという側面があります。自分が積み立てていく貯金とは違うことが「当事者意識」を生み出しにくくしているのです。
 
年金の制度自体は確かに複雑だと言わざるを得ません。ですが、一般の人は制度の全容を理解するまでには至らなくていいのです。
 
まずは自分が「いつからいつ」「どんな年金制度」に加入してきたのかを確認することです。転職や自営業などの期間が混ざる場合は特に漏れがちです。女性は結婚・離婚、扶養に入るなどでさらに加入している制度が変わっている可能性もあります。
 
自分の年金の履歴は「ねんきん定期便」「ねんきんネット」または年金事務所に問い合わせて確認することができますので、まずはそちらを確認しましょう。そして自分が「何を」「いつから」もらえるのかだけは、身を守るためにも調べておくことをお勧めします。
 
Text:塚越菜々子(つかごし ななこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者

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