更新日: 2021.08.03 その他年金
会社員の年金平均受給額はいくら? 「ゆとりの老後」にはいくら足りない?
公的年金だけで足りないのは明白ですが、実際いくらくらい足りないのでしょうか。公的年金のさまざまな平均を調べてみました。
執筆者:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)
CFP(R)認定者、行政書士
宅地建物取引士試験合格者、損害保険代理店特級資格、自動車整備士3級
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公的年金
国民の暮らしを守るために「公的扶助」「社会福祉」「公衆衛生」「社会保険」という国の社会保障制度がある中で、社会保険の中心となるのが公的年金制度です。公的年金制度では、老齢、障害、遺族に対する給付がありますが、今回は公的年金の老齢年金受給について紹介します。
会社員・公務員の年金
※筆者作成
会社員の公的年金は基礎年金と厚生年金ですが、企業によっては上乗せの企業年金がありますし、個人的に確定拠出年金に加入することもできます。ゆとりのある老後のために私的年金で年金を増やすのは有効な対策になります。
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公的年金の平均受給額
「令和2年版厚生労働白書」によれば、「モデル世帯」の令和2年度の年金受取額は月22万724円でした。これは夫が賞与を含む平均標準報酬43.9万円で40年間勤めた会社員、妻は専業主婦の夫婦での金額です。妻の国民年金は満額の月6万5141円ですから、夫の厚生年金(基礎年金含む)が15万5583円ということになります。
では、実際の受取額はどうなっているのでしょうか。
以下、厚生労働省年金局「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」からデータを抜粋しました。
(1)男女別・月額階級別
厚生年金男女別年金月額階級別老齢年金受給権者数(令和元年度末)
年金月額 | 総数 | 男性 | 女性 |
---|---|---|---|
万円以上~万円未満 | 1598万6959人 | 1066万6981人 | 531万9978人 |
~5万円 | 46万6077人 | 15万977人 | 31万5100人 |
5万円~10万円 | 331万8045人 | 97万6724人 | 234万人1321人 |
10万円~15万円 | 479万6376人 | 261万3866人 | 218万2510人 |
15万円~20万円 | 478万2847人 | 436万9884人 | 41万2963人 |
20万円~25万円 | 231万2667人 | 224万9128人 | 6万3539人 |
25万円~30万円 | 29万2942人 | 28万8776人 | 4166人 |
30万円~ | 1万8005人 | 1万7626人 | 379人 |
平均年金月額 | 14万4268円 | 16万4770円 | 10万3159円 |
※厚生労働省年金局 「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より筆者作成
※受給権者数には、支給開始年齢の引き上げにより、定額部分のない報酬比例部分のみの受給権者が含まれる
国民年金は、納付月数により年金受給額が決まりますが、厚生年金は報酬月額と納付月数により受給額が決まります。男女で比較すると、男性の勤務月数が長く給与額も高いため、老齢厚生年金の金額も高くなります。平均では月額で6万円以上の差になっています。
(2)都道府県別
都道府県別老齢年金受給者数および平均年金月額の一例(令和元年度末)
厚生年金保険(第1号) | 国民年金 | |||
---|---|---|---|---|
受給者数 | 平均年金月額 | 受給者数 | 平均年金月額 | |
全国 | 1538万9876人 | 14万6162円 | 3262万3411人 | 5万6049円 |
青森県 | 14万1749人 | 12万2081円 | 38万6207人 | 5万3253円 |
東京都 | 123万9326人 | 15万9556円 | 276万209人 | 5万4966円 |
神奈川県 | 100万626人 | 16万6546円 | 209万693人 | 5万5992円 |
※厚生労働省年金局 「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より筆者作成
国民年金は納付月数によるため地域の差はあまり見られませんが、厚生年金は報酬月額に影響されますので、地域による差が大きく出ます。全国平均は14万6162円となっていますが、例えば青森県と神奈川県では月額4万4465円の差があります。
(3)年齢別
年齢別老齢年金受給権者数および平均年金月額(令和元年度末)
年齢 | 厚生年金保険(第1号) | 国民年金 | ||
---|---|---|---|---|
受給権者数 | 平均年金月額 | 受給権者数 | 平均年金月額 | |
65~69歳 | 374万98人 | 14万2972円 | 733万6368人 | 5万7108円 |
70~74歳 | 389万2271人 | 14万6421円 | 837万559人 | 5万6697円 |
75~79歳 | 303万1605人 | 15万1963円 | 676万8205人 | 5万5922円 |
80~84歳 | 207万3096人 | 16万575円 | 506万6660人 | 5万6572円 |
85~89歳 | 120万7324人 | 16万3489円 | 344万74人 | 5万5175円 |
90歳以上 | 64万2156人 | 16万1044円 | 178万32人 | 4万9232円 |
※厚生労働省年金局 「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より筆者作成
日本の年金制度は、現役世代が支払う保険料で年金を給付する世代間扶養の制度です。現役世代が減少し、受給者が増える傾向が続いていますので、年金額が減少しているのが分かります。
また、昭和16年4月1日以前生まれの男性と昭和21年4月1日以前生まれの女性は、60歳から厚生年金を満額受け取れていましたので、月額以上に年代間で大きな差になっています。保険料率をさらに上げるのは難しい状況ですから、公的年金の受給額は今後も減少していくものと考えられます。
年金2000万円問題で話題となった、金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」によれば、高齢夫婦無職世帯の実支出月額は26万3718円です。
これに対して収入が月額で約5万円不足しているので、30年で約2000万円足りないと試算されました。支出が月額35万円の場合、月額で約14万円の不足、30年では約5040万円の不足になります。ゆとりある老後を実現するには、しっかりとした対策が必要です。
出典
厚生労働省 令和2年版厚生労働白書 -令和時代の社会保障と働き方を考える-
厚生労働省年金局 令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」
執筆者:宿輪德幸
CFP(R)認定者、行政書士