更新日: 2019.08.20 国民年金

えっ!年金定期便に記載通りの金額は貰えない?その理由はこの2つ。

えっ!年金定期便に記載通りの金額は貰えない?その理由はこの2つ。
年金定期便が送られてくるようになり、将来の年金額を予測しやすくなりました。しかし、実際に老後に使える額は、年金定期便記載の年金額よりかなり少なくなることを、ご存じでしょうか。
 
その要因は2つ。一つ目は、マクロ経済スライドによる年金給付額の減額の仕組みです。そして2つ目は、年金からも税金と社会保険料が差し引かれることです。
 
川上壮太

執筆者:川上壮太(かわかみ そうた)

CFP認定者、DCプランナー

京都大学工学部修士卒。精密機械メーカー勤務の後、FP事務所サニーサイド・ファイナンシャルプラニングを開設。日本FP協会電話相談員等を経験するとともに、多数のFP相談に対応してきた。生命保険募集人・証券外務員の資格を取得し、金融関係業務の実情にも詳しい。現在は神奈川県を中心に、主に子育て世代のライフプラン作りの相談に応じている。
http://www.sunnysidefp.jp/

少子高齢化の流れの中で、年金給付額は年々減額されることが決まっています

2030年までに65歳以上人口は300万人近く増えるのに対し、悲観的な予測では、労働力人口は750万人も減る見通しです。高齢者や女性の就業率が増加することで、労働力人口の減少は抑えられそうですが、その場合でも、年金納付額の減少と給付総額の増加は止めようがない状況です。
 
そこで、平成16年には、将来の現役世代の保険料負担が重くなりすぎないように、マクロ経済スライドの導入が決まりました。
 
この仕組みでは、賃金や物価の変動に対して、スライド調整率(約1%)を差し引いて、年金額が改定されることになったのです。ごく単純に言ってしまうと、物価が仮に2%上がっても、年金は1%しか上がらないということです。
 
厚生労働省の試算では、現在の男子被保険者の平均手取り収入は418万円で、夫婦二人の平均的な世帯の年金額は、その約62%(262万円)とされています。これが、少なくとも20年以上の年月をかけて、50%程度(現在の価値で209万円程度)にまで減額される計画です。
 

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年金からも税金や社会保険料が差し引かれ、手取りは、90%~95%になります

スライド調整率分、年金の価値が減っていく流れは、徐々に進むことですが、税金と社会保険料の支払いは給与を受け取る際と同様に、年金受給時にも必要です。
 
以下で、前述の事例に合わせ、夫185万円、妻77万円、合計262万円の年金収入のある、夫婦とも65歳以上の世帯について、社会保険料と税金を計算してみましょう。
 

社会保険料の計算

老後も継続的に支払いが必要となるのは国民健康保険料です。介護分もこの中に含まれ、市町村ごとにそれぞれの保険料算定の仕組みが作られています。保険料の算定方法は会社員の場合と異なり、かなり複雑です。
 
ここでは、計算プログラムが公開されている、横浜市のホームページを利用して計算してみました。
 
<平成29年度横浜市国民健康保険料試算例>
<横浜市の平成29年度の保険料率>
 
上記の表のとおり、社会保険料は横浜市の場合、約14万円となります。なお、計算に際しては様々な減額措置等があり、必ずしも、算定対象x料率=算出額にはなっていません。
 

所得税の計算

次に、上記の計算結果も踏まえ、「夫・妻ともに65歳の夫婦2人暮らし、収入は夫の公的年金185万円と妻の公的年金77万円、納付する社会保険料は年間14万円」という世帯を例に、所得税額と住民税を計算してみましょう。妻の公的年金は公的年金控除120万円以下ですので非課税です。
 
(1)所得金額
公的年金等の収入-公的年金等所得控除=185万円-120万円=65万円
 
(2)所得控除額
社会保険料控除+配偶者控除+基礎控除=14万円+38万円+38万円=90万円
 
(3)課税される所得金額
(1)-(2)=65万円-90万円=0万円(非課税)
 

住民税の計算

住民税も同様にして、非課税です。
 
以上から、厚生労働省がモデルとして選んだ「平均的な給与」の家庭では、年金から差し引かれるのは、年金額の約5%(約14万円)の社会保険料のみであることが分かります。この結果、手取り額は約248万円となります。
 

所得税・住民税も発生する事例

税金も発生する事例としては、次のような例があげられます。夫のみが働き、妻は専業主婦で、年金額が夫婦で330万円ある夫婦の場合です。
 
この場合、65歳での社会保険料は約24万円となり、税金は約6万円となります。330万円から税・社会保険料を差し引いて、手取りは夫婦合わせて約300万円です。
 

年金定期便の年金額が330万円でも安心できない

例としてあげた、年金額が330万円のケースは、これから年金を受給する人達の間では、高い金額レベルにあるでしょう。しかし、その場合でも、前述の計算によれば、手取りは300万円程度になります。
 
さらに、国民健康保険の介護分は、今後も徐々に上がることが想定され、加えて、マクロ経済スライドにより年金支給額も年々減額されていくと考えられます。年金受給開始後、手取り額は徐々に減ることを覚悟しなければなりません。
 
対策について、次回以降のレポートで考察したいと思います。
 
Text:川上 壮太(カワカミ・ソウタ)
サニーサイド・ファイナンシャルプラニング代表・NPO法人くらしの経済サポートセンター代表理事・1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、DCプランナー
 

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