更新日: 2021.08.06 国民年金

国民年金保険料を前納したけれど、その後厚生年金に加入することに!前納分はどうなるの?

執筆者 : 辻章嗣

国民年金保険料を前納したけれど、その後厚生年金に加入することに!前納分はどうなるの?
国民年金保険料を前納すると、保険料の割引を受けることができます。一方、会社などに就職して厚生年金の被保険者となると、年金保険料を直接支払う必要はなくなります。
 
今回は、厚生年金に加入したり、会社員の方の被扶養配偶者となって年金保険料を自分で支払う必要がなくなった場合、前納した国民年金保険料はどうなるのか解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

国民年金保険料を直接支払う必要がある方とは

1.国民年金保険の被保険者区分と保険料納付方法

日本国内に居住する20歳以上60歳未満の全ての方は、国民年金の被保険者となります。国民年金の被保険者は3種類に区分されており、第1号被保険者の方は自分自身で国民年金保険料を納付しなければなりません(※1)。
 

被保険者区分 対象者 国民年金保険料の納付方法
第1号被保険者 20歳以上60歳未満の農業者、自営業者、学生、無職の人など 国民年金保険料を直接納付
第2号被保険者 会社員や公務員など 加入している被用者年金制度(厚生年金保険や共済組合など)の保険者が基礎年金拠出金を負担
第3号被保険者 第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(年収130万円未満) 配偶者である第2号被保険者が加入している被用者年金制度(厚生年金保険や共済組合など)の保険者が基礎年金拠出金を負担

(※1、2、3を基に筆者作成)
 
従って、学生や自営業の方が会社に就職して厚生年金の被保険者となったり、会社員の方と結婚して被扶養配偶者となった場合は、国民年金保険料を直接納付する必要がなくなります。
 

2.年金の加入時期

年金は月単位で管理されており、20歳の誕生日の前日の属する月(誕生日が1日の場合は前月)から、60歳の誕生日の前日の属する月の前月(誕生日が1日の場合は前々月)までが国民年金の被保険者期間となります。そして会社に就職した場合は、その月から厚生年金の被保険者となります(※1)。
 

国民年金保険料の前納制度

1.国民年金保険料の納付期限と保険料額

国民年金保険料の納付期限は、「納付対象月の翌月末日」と定められています(※1)。また、2021年度の国民年金保険料は月額1万6610円で、翌月の末日までに納付する必要があります。
 

2.国民年金保険料の納付方法

国民年金保険料の納付方法には下表のとおり、3種類があります(※1)。
 

納付方法 納付要領
納付書
(現金払い)
納付書を使用し、銀行、郵便局、コンビニエンスストア、電子納付により納期限までに納付
口座振替 銀行口座から納期限日に引き落とし
クレジットカード クレジットカード会社が納期限日に立替納付

(※1)を基に筆者作成
 

3.国民年金保険料の前納制度

毎月の国民年金保険料を納期限の一定期間前に納付(前納)することにより、保険料の割引を受けることができます。前納の方法には、2年前納、1年前納、6ヶ月前納、当月末振替(早割)の4種類があり、納付方法ごとに割引額が設定されています(※4、5、6、7)。
 


 
それぞれの前納方法に応じた振替日と前納の対象となる保険料の月は、下表のとおりとなっています(※4、5、6、7)。
 

 

前納した国民年金保険料の還付を受けるためには

1.就職や結婚したときの手続き

国民年金の被保険者が就職した場合は、就職先の事業主が厚生年金の「被保険者資格取得届」を日本年金機構に提出します(※8)。また、会社員と結婚して被扶養配偶者となった場合は、会社を通じて「第3号被保険者関係届」を日本年金機構に提出します(※9)。
 

2.重複して支払った保険料の還付を受けるには

厚生年金の被保険者資格取得届や第3号被保険者関係届が提出されると、口座振替やクレジットカード決済を行っていた国民年金保険料の引き落としは停止されます(※10)。
 
しかしながら、手続きの遅れなどによって口座振替やクレジットカード決済が行われた場合や、前納により国民年金保険料が二重払いされると、重複して納付した国民年金保険料は還付されます。還付を受けるためは、日本年金機構から送付される「国民年金保険料還付請求書」に必要事項を記入して提出します(※11)。
 

まとめ

国民年金保険料を前納すると、前納期間や納付方法に応じて保険料の割引を受けることができます。
 
一方、前納した期間内に就職して第2号被保険者になった場合や会社員と結婚して第3号被保険者になると、国民保険料を直接納付する必要がなくなります。前納により重複して納付した国民年金保険料は、国民年金保険料還付請求書を提出することで還付の申請が可能です。
 
出典
(※1)日本年金機構 知っておきたい年金のはなし
(※2)日本年金機構 国民年金保険料
(※3)日本年金機構 国民年金第3号被保険者の保険料について
(※4)日本年金機構 国民年金前納割引制度(口座振替 前納)
(※5)日本年金機構 国民年金前納割引制度(現金払い 前納)
(※6)日本年金機構 国民年金前納割引制度(口座振替 早割)
(※7)日本年金機構 国民年金保険料の「2年前納」制度
(※8)日本年金機構 適用事業所と被保険者
(※9)日本年金機構 国民年金に加入していますが、サラリーマンと結婚しました。引き続き国民年金の保険料を納めるのですか。
(※10)日本年金機構 国民年金保険料を口座振替により納付していますが、新たに就職した場合に口座振替は停止されますか。
(※11)日本年金機構 重複して納めた国民年金保険料を返してもらうにはどうしたらいいですか。
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
 

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