更新日: 2021.08.17 iDeCo(確定拠出年金)

国民年金の未納があると、iDeCoに加入することはできないの?

執筆者 : 小山英斗

国民年金の未納があると、iDeCoに加入することはできないの?
年々その加入者が増えているiDeCo。2021年5月時点では約200万人もの加入者がいるようです。2018年3月時点の加入者が約85万人でしたから、およそ3年で約2.3倍も増えています。
 
それだけiDeCoには魅力があるといえそうですが、いざ加入しようと思っても加入できないことはないのでしょうか?
小山英斗

執筆者:小山英斗(こやま ひでと)

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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iDeCoの魅力をおさらいしましょう

加入者が増加しているiDeCo(個人型確定拠出年金)ですが、なんといってもその魅力は3つの税制上のメリットがあることです。
 

掛け金が全額所得控除

掛け金は全額所得控除の対象となります。これにより所得税、住民税の税負担が軽減されます。例えば、毎月1万円の掛け金(年間掛け金合計12万円)で、所得税と住民税の税率がそれぞれ10%の人の場合、年間で2.4万円の税金が軽減されます。
 
低金利の今、1年間で2.4万円の利息を得ようとすると、仮に金利0.1%の定期預金(税金は考慮せず)で運用する場合、2400万円ものお金を預け入れる必要があることからもこのメリットの大きさが分かるかと思います。
 
なお、課税所得がない方は、掛け金の所得控除は受けられず、こちらのメリットが享受できないことに注意が必要です。
 

運用益が非課税

通常、金融商品の運用益には源泉分離課税20.315%がかかります。仮に100万円の運用益があった場合だと約20万円も税金が発生するわけです。しかし、iDeCoで運用中に発生した運用益は非課税となります。
 
ただ、このメリットはあくまで運用益が発生した場合のメリットであり、投資には利益が発生するばかりではなく損失が発生する可能性があることにも注意が必要です。
 
同じように運用益が非課税になる仕組みにNISA(少額投資非課税制度)があります。NISAとの違いとして、iDeCoでは運営管理機関が選定する運用商品の中から、自由に組み合わせて資産運用できる点があります。
 
これにより、非課税となった運用益も含め、別の運用商品を選びなおして再投資することができます。
 

受取時にも所得控除が受けられる

iDeCoは原則60歳にならないと年金資産(拠出した掛け金とその運用益)を受け取ることができませんが、その受け取り方法には一時金もしくは年金の2つの方法があります。
 
一時金で受け取る場合は「退職所得控除」、年金の場合は「公的年金等控除」が受けられ、所得税・住民税の軽減につながります。運営管理機関によっては受け取り方法の取り扱いに違いがあったりしますので、利用開始前にその点も確認するようにしましょう。
 
また、原則60歳になるまで受給開始できないiDeCoですが、加入期間に応じて受給開始年齢も以下のように変わってくることにも注意しましょう。
 

加入期間 受給開始年齢
10年以上 60歳
8年以上10年未満 61歳
6年以上8年未満 62歳
4年以上6年未満 63歳
2年以上4年未満 64歳
1月以上2年未満 65歳

※筆者作成
 
なお、加入者等が一定以上の障害状態になった場合や死亡した場合は、60歳前でも、障害給付金や加入者の遺族が死亡一時金を受給できます。
 

みんなどれくらいの掛け金をかけているの?

税制上のメリットの大きいiDeCoですが、その目的は老後の資産形成です。では、iDeCoに加入している人はどのくらいの掛け金をその老後の資産形成のために拠出しているのでしょうか?
 
2021年5月時点の加入者(被保険者)区分別の月当たりの掛け金は以下のようになっています。
 


出典:iDeCo公式サイト iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入等の概況(2021年5月時点)
 
第1号被保険者(自営業者)は第2号被保険者(会社員・公務員など)に比べて、厚生年金などがない場合もあることから、比較的掛け金が高い傾向にあるようです。
 
なお、掛け金の上限額は自営業者が月額6.8万円(国民年金基金または国民年金付加保険料との合算枠)、企業年金の無い会社員や専業主婦(夫)などが月額2.3万円となっています。
 

iDeCoは誰でも加入できるの?

老後資産形成の手段の1つとして有効なiDeCoですが、誰でもiDeCoを始めることができるのでしょうか?加入者区分ごとにiDeCoに加入できない人は以下に該当する人です。
 

第1号被保険者
(自営業者、フリーランス、学生など)
・国民年金の保険料納付を免除(一部免除を含む)されている(ただし障害基礎年金を受給されている方等を除く)
・農業年金者の被保険者
第2号被保険者
(会社員、公務員)
・企業型確定拠出年金に加入している
(個人型同時加入が認められている場合を除く)

※筆者作成
 
iDeCoは公的年金を補完するためのもので、その利用には国民年金や厚生年金を支払っていることが前提となります。
 
そのため、自営業者などの第1号被保険者で国民年金の保険料納付を免除(一部免除を含む)されている人はiDeCoに加入することができません(ただし障害基礎年金を受給されている方などを除きます)。
 
では、過去に国民年金保険料の未納があった場合はどうなるのでしょう?
 
過去に保険料未納期間があっても、現在保険料を納めているのであれば加入できます。ただし、iDeCo加入中に国民年金保険料が未納となった月があった場合、その月の掛け金の拠出は行われません。
 
また、国民年金保険料の未納月に、第1号被保険者が納付した掛け金は還付されます。
 

まとめ

人それぞれ老後にかかる費用は違いますが、公的年金ではカバーしきれない老後費用がどのくらいになるかを試算してみることは大切です。
 
そして、iDeCoを老後のための資産形成の手段として活用するためにも、自身に加入資格があるかをまずは確認しましょう。
 
出典
iDeCo公式サイト iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入者数等について
iDeCo公式サイト iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入等の概況 (2021年5月時点)
 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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