更新日: 2021.08.17 その他年金

年金の 時効が過ぎた場合、未請求の年金はどうなる?

執筆者 : 新井智美

年金の 時効が過ぎた場合、未請求の年金はどうなる?
年金を受け取るために請求できる期間には、時効が定められています。基本的には5年となっていますが、それを過ぎてしまった場合、請求をしていなかった年金の受給は諦めるしかないのでしょうか。
 
今回は年金の受給における時効について、また時効が過ぎた場合の対応について解説します。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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年金の時効とは?

年金を請求し、受給する権利を「基本権」といいます。基本権は権利が発生した後5年で消滅することになっています。しかし、やむを得ない事情によって請求ができなかった場合には、「年金裁定請求の遅延に関する申立書」を提出することで時効消滅とはなりません。
 

■年金受給における支分権

年金を受給する権利には、上で述べた基本権のほかに、支分権というものがあります。
 
平成19年(2007年)7月6日に年金の受給に関する法律が施行され、その際に基本権を持っていた人に対しては年金記録が訂正されたことにより年金が増額した者(または受給権が発生した者が、消滅時効により、直近5年分の年金に限って支給を受けた者など)については、消滅時効が完成した場合においても、記録の訂正に関わる部分の年金が時効特例給付として支払われることになりました。
 
そして、それ以降に受給する権利を得た人に対しては、5年より前の支払分の年金は自動的に時効消滅せず、国が個別に時効の援用を行った場合に限り時効となるような取り決めがなされています。
 
(出典:厚生労働省文書「厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付を受ける権利に係る消滅時効の援用の取扱いについて」(※1))
 

時効の援用

時効はその期間が過ぎれば自然に成立するものではなく、時効によって利益を受ける人(この場合は国)が、時効が成立したことを主張する必要があります。
 
ただし、平成19年(2007年)7月7日以降に年金を受給できる権利が発生した人に対しては、国がこの時効の援用を行わない限り、申立書の提出は不要となっています。
 

■国が時効の援用を行わないケースとは?

平成19年(2007年)7月7日以降の年金受給権について、国が時効の援用を行わないケースは以下のとおりです。


1.年金記録の訂正を行ったもの:厚生年金保険法第28条または国民年金法第14条の規定により記録した事項の訂正がなされた上で裁定が行われた場合
2.事務処理誤りと認定されたもの:時効援用しない事務処理誤りに関わる認定基準により時効援用しない事務処理誤りと認定された場合

 

■事務処理誤りの例

では、どのようなケースが事務処理誤りと認定されるのでしょうか。具体的には以下のケースが該当するとされています。


1.受付時の書類管理誤り
2.確認または決定誤り
3.未処理または処理の遅延
4.入力誤り
5.通知書の作成誤り
6.誤送付または誤送信
7.説明誤り
8.受理後の書類管理誤り

(出典:日本年金機構「年金の時効」(※2))
 

平成19年7月6日以前に受給権が発生した年金の取り扱い

上で述べたとおり、平成19年(2007年)7月7日以降に年金を受給できる権利が発生した人に対しては、国が個別に時効の援用を行わない限り時効が消滅することはありません。
 
しかし、平成19年(2007年)7月6日以前に年金を受給できる権利が発生した人においては、会計法によって5年を経過した時点で時効が適用されることとなっています。ただし、年金時効法の取り扱いにより、「年金記録の訂正による裁定」が行われた場合は、時効が適用されず全額が支給されます。
 
(出典:日本年金機構「年金の時効」(※2))
 

年金の種類によって時効が異なる

年金の時効は一律5年ではありません。年金の種類によって時効が異なる点にも注意が必要です。年金の種類そしてそれぞれの時効は以下のとおりです。
 


 

まとめ

年金の受給権は基本的に5年という時効があります。平成19年(2007年)7月6日以前の年金の請求については、請求できなかったやむを得ない事情があり、申立書を提出した場合に限り請求し、受給できます。
 
平成19年(2007年)7月7日以降の年金の受給権については、年金記録の訂正がなされた上で裁定が行われた場合や、国または日本年金機構の事務処理誤りと認定された場合などには、時効を援用せず年金が支給されます。
 
年金を受給するためには、請求手続きが必要です。年金を受給できる権利が発生してから5年経過していた場合で、国が時効の援用を行わない場合であっても、必ず自治体の窓口もしくは年金事務所にて請求手続きを行う必要があることを忘れないようにしてください。
 
出典
(※1)厚生労働省文書「厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付を受ける権利に係る消滅時効の援用の取扱いについて」
(※2)日本年金機構「年金の時効」
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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