更新日: 2021.09.29 その他年金

発達障害と診断されたら、障害年金は受け取れるの?

執筆者 : 柴沼直美

発達障害と診断されたら、障害年金は受け取れるの?
近年、「発達障害」が広く理解されるようになってきました。ひと言で「発達障害」といっても特徴はさまざまで、周りの人々の理解によって十分社会生活を送る場合と、それが難しい場合とがあります。
 
では、社会生活を送ることが難しい場合に、「障害年金」の支給を申請することができるのでしょうか。確認していきましょう。
柴沼直美

執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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「発達障害」とひとくくりにできないほど、さまざまな特徴がある

厚生労働省のホームページによると、「発達障害は、生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態です。そのため、養育者が育児の悩みを抱えたり、子どもが生きづらさを感じたりすることもあります」とされています。
 
ただ、発達障害とはいっても、一般の人々の目に映る問題行動はさまざまです。
 
比較的わかりやすいのは、落ち着きがないと映る多動症(ADHD)や、読み書きや計算などの学習の修得が難しい学習障害(LD)、思わず頻発してしまう咳(せき)払いやまばたきなどチック症といわれるものです。
 
これ以外にも、複数の症状が絡み合って出てきたり、タイヤが回る様子など特定のものの動きから目が離せなかったり、特定の音に異常な嫌悪感を示したりと、人によってさまざまです。ですから、症状ごとにまとめて対応策を立てるということは難しく、社会生活を営むことに支障がないように一人ひとりに対して折り合いをつけて慣れていけるように支援する必要があります。
 

社会生活を営むことが難しいケースもある

発達障害の人には、社会の環境に慣れてもらうことが求められます。一方周りの人は、その人がどんな症状があって、どんな場合には特別な配慮が必要かということを理解する必要があります。
 
しかし、どうしても折り合いがつかない場合があります。例えば1分でもじっとしていられない、車の音が少しでも聞こえたら大きな声を思わず出してしまうなどです。その場合には、比較的融通のきく作業所で専門の支援担当者の指導の下、中断してもあまり深刻な影響が出ないような仕事を短時間行うことになります。
 

作業では生活費を賄うことが難しい場合は障害年金を申請

特に知的障害を伴っている場合には、相談をしてみるとよいでしょう。疾病やけがで障害年金を申請する場合と基本的には同じ流れです。特に年金受給には必要な3つの要件についてまとめておきます。
 

1.初診日認定:障害の原因となった傷病について初めて医師の診療を受けた日を、精神科など、かかりつけ医に相談しましょう。初診日証明が得られない場合でも、複数の第三者によって証明できたり、初診日を合理的に推定できるような一定の書類(療育手帳など)が提出できたりした場合は認められる場合があります。
 
2.障害認定日:日本年金機構の障害認定審査医員が専門的知見に立って審査を実施し、障害の程度を決定します。この決定に基づいて障害等級、障害年金の額が決定されます。
 
3.保険料納付要件:一般的な疾病やけがの場合と違って、発達障害による障害年金申請については、20歳前傷病といって、20歳になる前の年金に加入していない期間中に、初診日があることを診断書等で証明できた障害、または生まれながらの先天性障害や知的障害であることが明らかな障害である場合は、保険料納付要件は問われません。

 

申請をしたからといって必ず支給されるわけではない

これは障害年金だけにあてはまることではありませんが、申請したから自動的に支給されるというわけではありません。まず、市区町村の社会福祉課の窓口で相談し、どのような手続きが必要か、かかりつけ医に何を依頼するのかを必ず確認し、一つずつ着実に手続きを進めましょう。
 
出典
厚生労働省「発達障害」
厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」
厚生労働省「障害基礎年金 お手続きガイド」
 
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者

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