更新日: 2021.10.05 その他年金

年金にまつわる年数をもう一度整理(3)「25年」に関するもの

執筆者 : 井内義典

年金にまつわる年数をもう一度整理(3)「25年」に関するもの
年金にまつわる年数、第2回(2)は「20年」に関するものを取り上げました。今回の(3)はそれよりさらに長い「25年」に関するものです。
井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。

日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。

遺族年金は25年の資格期間が必要

前回(2)で、遺族厚生年金の中高齢寡婦加算や経過的寡婦加算の加算条件について取り上げた際、老齢厚生年金の受給権者や受給資格期間を満たした人の死亡(長期要件)についても触れました。遺族年金は、定額制で支給される遺族基礎年金、報酬比例制で死亡した人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3相当が支給される遺族厚生年金があります(【図表1】)。
 

 
遺族基礎年金や遺族厚生年金が対象となる遺族に支給されるには、死亡した人が要件を満たしている必要があります。【図表2】のとおり遺族基礎年金、遺族厚生年金それぞれA、B、C、Dの要件があり、それぞれいずれかの要件を満たす必要があります。
 
遺族基礎年金も遺族厚生年金も、老齢年金の受給権者や受給資格期間を満たした人が死亡した場合にも支給されることになっています(【図表2】遺族基礎年金のC、D、遺族厚生年金のD)。この場合、第1回(1)でも触れた保険料の納付要件はありません。しかし、老齢年金の受給資格期間は2017年8月より25年から10年に短縮されましたのに対し、遺族年金の受給にあたっての当該資格期間は25年のままとなっています。
 
したがって、一部の特例に該当する場合を除き、遺族基礎年金のCとD、遺族厚生年金のDの場合において受給資格期間が25年必要で、未納期間が多くて25年に満たない場合はこれらの要件は満たせません。これら以外の要件についても、遺族基礎年金・遺族厚生年金それぞれのAとBの場合は25年の受給資格期間は必要ないですが、代わりに保険料納付要件が問われます。
 
また、遺族厚生年金のCの場合について保険料の納付要件は「なし」ですが、こちらは障害厚生年金受給の際に納付要件を満たしてその受給権者となっている人が対象です。
 
やはり、保険料の未納が多いと、遺族年金の要件が満たせなくなってしまい、たとえ対象となる遺族がいても年金が支給されないことになってしまうでしょう。
 

 

300月(25年)にみなして厚生年金が計算されることも

報酬比例制となっている老齢厚生年金(報酬比例部分)、障害厚生年金、遺族厚生年金は過去の厚生年金加入記録を元に計算されます。厚生年金被保険者期間中の報酬が高いほど、厚生年金被保険者期間が長いほど、受給額が多くなります。
 
しかし、若くして障害者になった場合や亡くなった場合、厚生年金加入月数が短いこともあるでしょう。障害厚生年金、短期要件の遺族厚生年金(【図表2】のA、B、Cの要件による遺族厚生年金)は本人または亡くなった人の厚生年金被保険者期間が300月(25年)未満と短い場合は300月(25年)にみなして年金額が計算されます。
 
したがって、実期間で計算するより多くなり、短期要件の遺族厚生年金の場合では、亡くなった人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3より多い額で支給されることもあります。
 
一方、遺族厚生年金で中高齢者の死亡を想定している長期要件(【図表2】のDの要件)については厚生年金被保険者期間は実期間で計算されることになり、300月にみなしての計算はありませんので要注意です。
 
短期要件と長期要件で金額に大きな差が出ることもありますし、前回(2)で取り上げたとおり、寡婦加算の支給要件においても両者に違いがありますので、もしもの時のことを考えて厚生年金被保険者期間がどれくらいあるか確認しておきたいところでしょう。
 
出典
国民年金法
厚生年金保険法
厚生労働省ホームページ
国民年金機構ホームページ
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

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