更新日: 2021.10.10 国民年金
夫が退職。60歳以下の専業主婦が行う年金手続きとは?
今回は、夫が退職した際に、第3号被保険者であった専業主婦が行う年金の手続きについて詳しく解説します。
執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/
国民年金の被保険者区分とは
わが国の年金制度は、20歳以上60歳未満の全ての人が加入する国民年金と、会社員や公務員の人が加入する厚生年金の2階建て構造となっています(※1)。
国民年金の被保険者は自営業者や学生、無職の人などの第1号被保険者、会社員や公務員などの第2号被保険者、そして第2号被保険者に扶養される専業主婦などの第3号被保険者に区分されています。
このうち、第1号被保険者は国民年金保険料を直接納付する義務があります(※1)。
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被保険者区分の変更を市区町村役場に届け出る
60歳未満の専業主婦で第3号被保険者であった方は、夫が退職すると第3号被保険者の資格を失いますので、第1号被保険者への種別変更が必要となります(※2)。
なお、夫が会社員として働き続け、65歳になって老齢年金の受給要件を満たすと、その時点で第3号被保険者の資格を失いますので、同様に種別変更の手続きを行います(※3)。
第3号被保険者から第1号被保険者への切り替え手続きは、お住まいの市区町村役場の国民年金担当窓口で、夫の退職日の翌日から2週間以内に行ってください(※4)。
手続きを怠るとどうなる?
年金を受け取るためには、保険料を納めた期間など一定の「受給資格要件」を満たす必要がありますが、第3号被保険者であった方が第1号被保険者になるための切り替えを怠ると、その期間が保険料の未納期間となり、次のような不利益を被ることになります。
1. 老齢基礎年金が受け取れなくなったり、年金額が減ったりする
老齢基礎年金は、保険料を納めている期間などの合計が10年以上である場合に、原則65歳から受け取ることができます。また、20歳から60歳までの40年間の保険料を全て納めると満額が支給され、保険料の未納期間があると未納月数に応じて減額されます(※5)。
2. 障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取れないことも
病気やケガなど、万が一の際に支給される障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取るためには、加入期間の2/3以上の保険料を納めているなど受給要件を満たす必要がありますが、保険料の未納期間があると、これらの年金を受け取ることができない場合があります(※6、7)。
手続きが遅れた場合は
国民年金の切り替え(第3号から第1号へ)が遅れた場合でも、2年未満であればさかのぼって保険料を納付することができますが、2年以上遅れると時効により保険料未納期間として扱われ、前述したとおり、年金を受け取れない事態が生じることがあります(※8)。
このようなケースでも、最寄りの年金事務所に「時効消滅不整合期間に係る特定期間該当届」を提出することで、2年より前の保険料を納付できなかった期間を、年金を受け取るために必要な期間(受給資格期間)に算入することができるようになります。
ただし、この期間はあくまでも保険料未納期間ですので、年金額には反映されません(※9)。
まとめ
会社員の夫が退職した際には、夫に扶養されていた妻は国民年金の第3号被保険者から第1号被保険者への切り替え手続きが必要ですので、速やかにお住まいの市区町村役場に届け出ましょう。
出典
(※1)日本年金機構 公的年金の種類と加入する制度
(※3)日本年金機構 3号被保険者の「配偶者が65歳になったとき」の手続き
(※5)日本年金機構 老齢基礎年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)
(※6)日本年金機構 障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額
(※7)日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
(※9)日本年金機構 第3号被保険者(専業主婦・主夫)からの手続きが遅れた方へ
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士