更新日: 2021.12.22 国民年金
コロナ禍で勤務時間が激減。国民年金保険料が払えないときは「滞納」してもよいの?
そのような場合、国民年金保険料の納付が家計を圧迫してしまう状況に陥る可能性もあります。しかし納付が難しいからといって、保険料を「滞納」してもよいのでしょうか?
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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国民年金保険料を払わないとどうなる?
基本的に第1号被保険者の方は、毎月の国民年金保険料を納付期限までに支払わなければなりません。納付期限までに支払われなかったことがわかると、納付勧奨がなされます。
そして、支払い能力があるにもかかわらず勧告に従わない場合は、最終催告状を送付し、それでも支払われない場合は督促状が届きます。
■延滞金
督促状が届いた後に保険料を支払う場合は、その保険料を滞納していた期間に応じた延滞金が加算されます。延滞金の額については、保険料に一定の割合を乗じて計算されますが、その割合は納付期限の翌日から3ヶ月以内と3ヶ月以降で異なります。
ちなみに、延滞金が発生するのは、督促状の指定期限までに支払われなかった場合のみです。督促状の指定期限までに支払った場合、延滞金は発生しません。
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国民年金保険料を払えない場合
収入が下がったなどの理由で国民年金保険料の支払いが難しい場合は、納付猶予や免除制度を利用しましょう。どちらも申請して認められる必要がありますので、支払わずに延滞金を発生させてしまう前に一度相談してみましょう。
また、滞納している期間は未納期間となり、老齢基礎年金の受給資格期間にも算入されないため、老齢基礎年金ばかりでなく、障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取る事態になった際にも影響が出ることを覚えておきましょう。
■納付猶予制度
第1号被保険者の年齢が50歳未満の方で、前年の所得が一定額以下の場合に適用される制度です。納付猶予が認められると、その期間については受給資格期間に算入されます。しかし、追納を行わない限り、年金額には反映されませんので、注意が必要です。
■免除制度
失業した場合や、前年所得が一定額以下に減収した場合に適用される制度で、納付猶予のような年齢制限はありません。また、全額が免除される場合と一部免除に留まる場合があります。
免除期間については、納付猶予と同様に受給資格期間に算入されます。また将来受け取れる年金額は、免除される割合によって異なります。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で減収した場合
2020(令和2)年5月1日よりより、新型コロナウイルス感染症拡大によって減収した人のために、新たに臨時特例免除が開始されました。この制度の概要は以下のとおりです。
■対象者
以下に挙げる両方の要件を満たす方です。
1.2020年(令和2)年2月以降に新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって収入が減少した人
2.2020年(令和2)年2月以降の所得状況から、年間の所得が現行の国民年金保険料の免除等に該当する水準になることが見込まれる人
■免除対象期間
2020(令和2)年2月分以降の国民年金保険料
■特例を受けるための手続き
「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」と「所得の申立書」を、住んでいる自治体の窓口もしくは年金事務所に原則郵送で提出します。この特例を受けるためには「所得の申立書」が必要になります。
その際、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって減少した後の所得見込額を記載することを忘れないようにしてください。また、これから申請する場合、2020(令和2)年にさかのぼって書類を提出できます。その際は各年度分に分けた申請書が必要ですので注意してください。
■すでに支払った保険料の還付を受けることもできる
保険料の納付方法を口座振替もしくはクレジットカード払いにしている場合は、申請中に保険料が引き落とされる可能性があります。引き落とされた保険料については、還付を受けず、そのまま納付したことにできるほか、還付を受けることもできます。
ただし、還付を受ける際には、過去2年間に未納があった場合、その未納分の支払いに充て、残った部分が還付されることとなります。したがって、未納期間が長い場合は、還付を希望してもすべてが未納部分の返済に充てられる可能性があることも覚えておきましょう。
まとめ
度重なる緊急事態宣言や、その後の飲食店やイベント開催に対する自粛営業要請などで、収入が激減し、営業再開のめどが立たないという方もいらっしゃるでしょう。今後の政府の対応により経済活動が活発化するかもしれませんが、まだ楽観視できない状況です。
これらの影響を受け、営業時間や勤務時間が激減し、収入が下がった場合については、特例措置が設けられています。
ただ滞納するのではなく、申請してこのような特例措置を受けることで、受給資格期間に加算されることから、万が一のことがあった場合の遺族基礎年金や障害基礎年金の受給で困ることもありません。
また、この特例措置は学生納付特例にも適用されます。学生で新型コロナウイルス感染症拡大の影響で収入が下がったなどであれば、申請し、適用を受けるようにしてください。
何も手続きを踏まずにただ滞納するのではなく、適切な手続きを踏んで特例措置などを活用しながら、一時的に厳しい家計を立て直すことに専念し、再び収支が安定したところで、これまでのように本来の国民年金保険料を支払い、将来の年金に備えていきましょう。
出典
(※1)日本年金機構「国民年金保険料の延滞金」
(※2)日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
(※3)日本年金機構「新型コロナウイルス感染症の影響による減収を事由とする国民年金保険料免除について」
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員