更新日: 2021.12.23 その他年金

年金の受給資格期間を満たしていない人が60歳になったら…。

年金の受給資格期間を満たしていない人が60歳になったら…。
わが国の公的年金は、保険料を納めた期間や加入者であった期間などの合計が受給資格期間を満たしていないと受け取ることができません。今回は、年金の受給資格期間と、60歳の時点で受給資格期間を満たしていない場合の対処方法について解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

年金の受給資格期間とは

全ての人が支給の対象となる老齢基礎年金の受給資格期間は10年ですが、国民年金のみならず厚生年金を受給するためにも、この受給資格期間を満たす必要があります(※1、2、3)。受給資格期間には保険料納付済期間、保険料免除期間、および合算対象期間が含まれます。
 
受給資格期間=保険料納付済期間+保険料免除期間+合算対象期間
 
なお、従来の老齢基礎年金の受給資格期間は25年でしたが、平成29年8月1日から10年に短縮されています。
 

保険料納付済期間とは

保険料納付済期間とは以下の期間をいいます(※4)。

(1)国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間
(2)国民年金の第2号被保険者(厚生年金の被保険者および共済組合の組合員)であった期間
(3)国民年金の第3号被保険者であった期間

 

保険料免除期間とは

保険料免除期間とは以下の期間をいいます(※4)。

(1)国民年金保険料の免除を受けた期間(一部免除の場合は減額された保険料を納めた期間)
(2)学生納付特例または保険料の納付猶予を受けた期間

 

合算対象期間とは

合算対象期間とは、国民年金に任意加入していなかった昭和61年4月1日以降の以下の期間をいいます(※5)。

(1)日本人で海外に居住していた期間のうち、国民年金に任意加入しなかった20歳以上60歳未満の期間
(2)平成3年3月までの学生(夜間・通信制を除き、年金法上に規定された各種学校を含む)で国民年金に任意加入しなかった20歳以上60歳未満の期間
(3)第2号被保険者としての被保険者期間のうち、20歳未満の期間または60歳以上の期間
(4)国民年金に任意加入したが、保険料が未納となっている20歳以上60歳未満の期間
(5)昭和36年5月1日以降に日本国籍を取得した方、または永住許可を受けた方の海外在住期間のうち、取得または許可前で20歳以上60歳未満の期間

 

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受給資格期間を確認するには

受給資格期間を満たしていないまま60歳を迎えると、65歳から老齢年金を受給できなくなるので、早めに確認しておくことが重要です。
 
受給資格期間は、毎年の誕生月に日本年金機構から送付される「ねんきん定期便」や、日本年金機構が提供しているインターネットサービス「ねんきんネット」を利用して確認できます(※6、7)。また、お近くの年金事務所や街角の年金相談センターの窓口のほか、電話(ねんきんダイヤル)で確認する方法もあります(※8)。
 

受給資格期間を満たすことができない場合には

老齢基礎年金を受給するための受給資格期間である10年を満たしていない場合は、一部免除を受けていた保険料を追納したり、国民年金や厚生年金に任意加入することで受給資格を得る方法があります。
 

保険料の追納

保険料の一部免除を受けていた期間は、減額された保険料を納めていないと受給資格期間に算入されません。そこで、過去10年以内に一部免除された保険料の未納期間がある場合は、保険料を追納することで受給資格期間に含めることができるようになります(※9)。
 

任意加入

(1)国民年金の任意加入
60歳までに老齢基礎年金の受給資格を満たしていない場合は、60歳以降も70歳になるまで国民年金に任意加入することができます(※10)。ただし、厚生年金や共済組合などに加入している方は、任意加入はできません。
 
(2)厚生年金の高齢任意加入
60歳以降も厚生年金の被保険者や共済組合の組合員として働き続ける場合は、合算対象期間として受給資格期間に算入されますが、70歳になると厚生年金に加入する資格を失います。
 
しかし、この時点で老齢年金の受給資格期間を満たしておらず、70歳を過ぎても会社に勤める場合は、受給資格期間を満たすまで厚生年金に任意加入することができます(※11)。
 

まとめ

老齢年金を受給するためには、受給資格期間が10年以上あることが必要です。もし、60歳になる時点で受給資格期間を満たすことができない場合は、保険料の追納や任意加入制度の利用を検討してください。
 
出典
(※1)日本年金機構 受給資格期間
(※2)日本年金機構 老齢基礎年金(平成16年4月2日以後に生まれた方)
(※3)日本年金機構 老齢厚生年金(平成16年4月2日以後に生まれた方)
(※4)日本年金機構 老齢年金ガイド 令和3年度版
(※5)日本年金機構 合算対象期間
(※6)日本年金機構 「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド(令和3年度送付分)
(※7)日本年金機構 ねんきんネット
(※8)日本年金機構 年金のご相談(電話・窓口)
(※9)日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
(※10)日本年金機構 任意加入制度
(※11)日本年金機構 70歳以上の方が厚生年金保険に加入するとき(高齢任意加入)の手続き
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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